【ファンキー通信】「ふつうにおいしい」ってホメ言葉??
「二十歳の娘と寿司屋に行った こづかいはたいておごったら・・・『パパ、フツーにおいしいよ』 これってホメことば? それってホメことば?」
この文は『これってホメことば?』という曲の中の一節。NHKの現役アナウンサー6人が歌っていることで話題を呼び、CD化もされている。口ずさんでいてふと思ったのだが、そういえば「ふつうにおいしい」という言葉はホメ言葉として成立するんだろうか?
さっそく書店で調べてみたところ、『かなり気がかりな日本語』という本の中に「ふつうに○○〜」についての文献を見つけた。いわく、最近の「ふつうに」は話の調子を整えるためにはさむ語、いわゆる「つなぎ言葉」として用いられる傾向にあるんだとか。ということは、「ふつうに」は「おいしい」の単なるつなぎ言葉であり、ホメ言葉として何ら変わらないってコト?? 著者である野口恵子先生に詳しいお話を伺ってみた。
「『ふつうにおいしい』という言葉は、ホメ言葉として成立すると思います。ただし、どんな言い回しでもそうですが、だれが、いつ、どのような場面で、だれに対して使うのか、を考えないと言葉に関する議論はできないので、時と場合による、としておきます」(野口恵子先生)
野口先生は数年前、まさにこの表現をめぐって大学生と話し合ったのだという。そのとき彼らが出した結論は、「賞讃の中に意外性が含まれている」というもの。例えば「あまり得意じゃないんだけど・・・」と謙遜する友人の作った料理が思いのほかおいしかったときに、「あなたが思っているよりもおいしい」という意味で「ふつうにおいしい」を用いることから、れっきとしたホメ言葉であることがわかった。
「三省堂『新明解国語辞典』によると、『普通』とは『その類のものとしてごく平均的な水準を保っていて、取り立てて問題とする点が無いこと』などとなっていますから、学生の挙げた例は辞書の定義に即したものであったことがわかります」(同)
それにしてもなぜ私たちは「ふつうに」を多用してしまうようになったのだろう?
「『ふつうに』は、場合によってはホメ言葉にもなるし、自己主張を避けて一般論を装うこともできる、便利で無難な言葉です。遠慮がちで、皆と同じだと安心するタイプの人には使い勝手のよい言葉であり、その結果、意味を吟味し場面を考慮し人間関係に配慮することなしに使ってしまったり、無意識のうちに口をついて出る言葉になってしまったり、ということなのだと思います」(同)
便利かつ無難で使い勝手のよい言葉。「ふつうに」の多用は、私たち日本人特有の集団属性と内向的な部分の表れなのかも。(安田明洋/verb)
■関連リンク
『かなり気がかりな日本語』 - livedoor ブックス - 文中で紹介した書籍
この文は『これってホメことば?』という曲の中の一節。NHKの現役アナウンサー6人が歌っていることで話題を呼び、CD化もされている。口ずさんでいてふと思ったのだが、そういえば「ふつうにおいしい」という言葉はホメ言葉として成立するんだろうか?
「『ふつうにおいしい』という言葉は、ホメ言葉として成立すると思います。ただし、どんな言い回しでもそうですが、だれが、いつ、どのような場面で、だれに対して使うのか、を考えないと言葉に関する議論はできないので、時と場合による、としておきます」(野口恵子先生)
野口先生は数年前、まさにこの表現をめぐって大学生と話し合ったのだという。そのとき彼らが出した結論は、「賞讃の中に意外性が含まれている」というもの。例えば「あまり得意じゃないんだけど・・・」と謙遜する友人の作った料理が思いのほかおいしかったときに、「あなたが思っているよりもおいしい」という意味で「ふつうにおいしい」を用いることから、れっきとしたホメ言葉であることがわかった。
「三省堂『新明解国語辞典』によると、『普通』とは『その類のものとしてごく平均的な水準を保っていて、取り立てて問題とする点が無いこと』などとなっていますから、学生の挙げた例は辞書の定義に即したものであったことがわかります」(同)
それにしてもなぜ私たちは「ふつうに」を多用してしまうようになったのだろう?
「『ふつうに』は、場合によってはホメ言葉にもなるし、自己主張を避けて一般論を装うこともできる、便利で無難な言葉です。遠慮がちで、皆と同じだと安心するタイプの人には使い勝手のよい言葉であり、その結果、意味を吟味し場面を考慮し人間関係に配慮することなしに使ってしまったり、無意識のうちに口をついて出る言葉になってしまったり、ということなのだと思います」(同)
便利かつ無難で使い勝手のよい言葉。「ふつうに」の多用は、私たち日本人特有の集団属性と内向的な部分の表れなのかも。(安田明洋/verb)
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『かなり気がかりな日本語』 - livedoor ブックス - 文中で紹介した書籍