完敗で終わった快進撃…日本が露呈した限界と可能性/韓国戦

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 自分たちのサッカーで、勝ちに行こうとしたか。ただ、勝利をもぎ取ろうとしたか。完敗とも言える内容で敗れた日本と、初の銅メダルを手にした韓国との差は、結局はそこに行き着くのではないか。

 ボール支配率とシュート数で上回り、CKの数では7対0で圧倒していたことは、日本が攻め込む時間が多かったことを表すデータと言える。しかし、数字通りに優勢だったかと言えば、そうではない。デコボコのピッチコンディションにも関わらず、律儀にパスを回そうとしてミスを重ねたのが日本だとしたら、荒れたピッチの影響を受けないロングボールで効率良く2点を奪ったのが韓国だった。

 例えるならば、日本は大会初戦の相手だったスペインの立場に陥ったとも言える。ボールを支配しながらも、相手の守備陣の前に決定機をほとんど作れないままに失点。ビハインドを負いながらも、パスを回しに固執したことでカウンターの餌食になった。初戦で思惑通りに試合を進め、スペインを敗北に追いやったのは他でもなく日本だった。ところが、今回同じように相手をゲームプランにはめこみ、白星をつかんだのは韓国の方だった。

 日本が、敢えてピッチコンディションを考慮せずに蹴り合いを選ばなかった理由には、パスサッカーへの矜持があったのかもしれない。ただ、仮に自らの支えとなるサッカーを放棄しても、結果は変わらなかった可能性は高い。韓国はパク・チュヨンとク・ジャチョルが独力で2点を奪った。一方、清武弘嗣や扇原貴宏らをはじめとした正確な技術を持つ選手が韓国にいないように、日本の前線にも一人でゴールをもぎ取るほど圧倒的な個人技を持った選手は不在というのが現状だろう。脅威のスピードを持った永井謙佑も、チームのカウンター戦術の中で活きる選手だということを考えれば、闇雲にロングボールを蹴るだけで得点に繋がるかといえば疑問符がついてしまう。

 今大会の日本が見せてきた脅威的なハイプレスと確かなパス技術を基にしたカウンターは高く評価されるべきもので、世界のどんな強豪国でも確かな勝算を見いだせるものだった。しかし、同時にハイプレスが選手のコンディションに左右されるように、パスサッカーもピッチコンディション次第という現時点での限界も露呈することになった。言い訳がましくなるが、今回の荒れたピッチは技術で上回る日本ではなく、馬力で上回る韓国に有利に働いたといえる。そして、韓国がしっかりとアドバンテージを活かして勝利をもぎ取ったことも忘れてはならない。

 初戦から快進撃を見せた日本のサッカーは決してフロックではなく、実力に基づいた結果である。44年ぶりとなるベスト4進出は胸を張れる実績ということに間違いない。そして同時に、最後の2連敗によって選手たちも自身の世界での立ち位置を痛感したことだろう。

 オーバーエイジとしてチームをけん引した主将の吉田麻也をはじめ、現在のA代表の根幹をなす選手の多くは、4年前の北京オリンピックで一敗地に塗れている。今大会では、自信を膨らませる勝利とともに、課題を突き付けられる連敗も喫した。良薬は口に苦しというが、メダルを持ち帰れなかった悔しさは将来に向けた大きな原動力となる可能性はある。そして、今回の敗戦が意味のある苦い敗北にできるかどうかは、課題と悔しさを胸に刻んだ選手たちにかかっていることは言うまでもない。

文=小谷絋友(サッカーキング編集部)


[写真]=Getty Images




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