何でもすぐ手に入る「オンデマンド」時代の幕開け

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2013年、モバイル端末によってあらゆるものを手軽に手に入れることが可能となった。そして2014年、オンデマンド・ビジネスはどうなるのか?

2013年にスマートフォンでタクシーを呼び寄せるというサービスで大成功したUberは、消費者や小売業者、投資家達がどんな価値ある物やサービスも、オンデマンドで利用できると考えるようになるきっかけとなった。都会ではこのオンデマンドという考え方が実現しつつある。

オンデマンドは決して新しい考え方ではない。オンラインでピザを注文することくらいなら1994年でもできたほどだ。もっとも、当時の客はオンラインで注文した後、店からの確認の電話を待つためにインターネット接続を切断しないといけないという有り様だった。電話注文が廃れなかったのも無理はない。しかし今ではアプリを使って(ちゃんとした届け先さえあれば)、どんな物でも簡単に手元に届くようになっている。

手軽に満足感を得られるのは食の分野だけではない。運転、買い物、宿泊そして出会いまでもが、クリックひとつでできるようになってきている。もはや出会いを求めてバーに行く必要もないし、ショッピングモールに足を運んであれこれ見てまわる必要もない。正月のホテルを予約し忘れたとしても、直前になって値下げされた部屋を取ればいいのだ。

2013年、この「手軽に満足感を得る」というトレンドの兆しは、消費者のオンデマンド・サービスに対する欲求に火を点けた。そして2014年、この流れが続くことは間違いなさそうだ。

いつでも好きなものが手に入る

今はどんな商品でもすぐに届く時代だ。

Postmatesはサンフランシスコ、マンハッタン、シアトル、ワシントンDCで人気の宅配サービスを展開するベンチャー企業で、欲しい物を1時間以内に届けることを保証している。サンドウィッチは?可能だ。花束は?問題ない。洋服は?もちろん届く。

当然、Postmatesのようなベンチャービジネスは、食料品から家電にいたるまでクオリティーの高い商品を提供しているeBay NowやGoogle Shopping Expressと競わないといけない。

今は何でもアプリの時代だから、全てが指先一つで簡単にできると期待してしまう。モバイル端末で直接異性と出会うことのできるアプリによって、個人の関係さえも損なわれてきた(出会う相手次第では逆に良かったこともあるだろうが)。TinderやGrindr、Downといったアプリは、利用者の位置や交友関係を基に、周囲にいる独身の男女をリアルタイムで表示し、アプリ内で直接やり取りをすることができる。アプリを使って簡単に相手が見つかるなら、初めてのデートで緊張することもなくなるだろう。

このオンデマンドのトレンドは出版業界にも及んでいる。昨年の10月、マスターカードは出版大手のコンデナストと組み、電子雑誌の広告や記事から商品を直接購入できるサービスを始めたと発表した。ShopThisと名付けられたこのサービスは、Wiredの11月号から利用可能となっている。

このような利便性の裏には危険が潜んでいる可能性もある。研究者たちは、モバイル端末で簡単に物が買える上に選択肢も豊富であることが、消費者の購買欲を刺激していると指摘している。

すべてがUber化?

2014年は、オンデマンド・ムーブメントにとって重要な年になりそうだ。

Uberは昨年、サービス拡大のため2億5800万ドルの資金を調達した。オンデマンドのクリーニングサービスを展開するHomejoyは3800万ドルを調達し、Amazon Freshもやっとサンフランシスコへの進出を成功させた。

ただ、消費者が利便性に対してどこまで対価を払うか、という疑問が残っている。

つい最近Uberは、冬の嵐で交通機関が麻痺する中、値上げによって多くの利用者に多額の運賃を払わせたとして糾弾された。UberのCEOは、需要が多い時には運賃が上昇するような価格設定となっていると主張したが、納得していない利用者もいる。

利用者は、従来のタクシーに比べて少し料金の高い黒塗りタクシーに乗ることに躊躇はしないだろうが、通常の2倍を超える運賃体系はさすがに反発を招く。Uberは、この運賃体系に納得できないならサービスを利用しなければいいと言い放った。つまり、大晦日に電話で従来のタクシーを呼ぶ羽目になるわけだ。

Uberのような価格設定が、他のオンデマンドの宅配サービスにも適用されるかどうかは不明だ。大手企業は価格設定には気を遣っているように思える。Google Shopping Expressは最初の6か月送料無料とする一方、eBayは注文毎に5ドルの配送料がかかる。Amazonは、注文額に応じて無料から9ドル99セントまでの間の配送料金を試験的に導入している。同社はまた、年会費299ドルを払うと配送料が無料になる会員サービスも提供している。過剰な需要を抑えようとするUberとは異なり、これら大手企業は効率的な配送ネットワークを築くため、さらなる需要を掘り起こして注文数を増やそうとしている。

オンデマンド・サービスが一般に普及するためには、消費者を喜ばせながら利益もしっかり出せるバランス感覚が必要だ。企業は完璧なビジネスモデルを築き上げるまで試行錯誤を続けることになる。しかし消費者の嗜好が変わりつつある今、2014年は勝負の年になりそうだ。

Selena Larson
[原文]