「牛乳アレルギー」には牛乳を出さないだけでいいの? 〜食物アレルギーに理解を深めるために知ってほしいこと〜

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子どもの小学校入学を前に悩んでいるママがいるというので、相談にのることがありました。その友だちの娘さんは重度の牛乳アレルギーがあり、近所の公立小学校では対応してもらえなくて、学校選びに悩んでいるとのこと。

彼女は何度も学校に足を運んだのですが、「給食室では扱える自信がない」と栄養士に言われたとか。結局彼女は、アレルギー対応をしてくれる隣町の小学校まで、子どもをバス通学させる道を選んだようです。


さて、ここまで読んで、読者のみなさんはどう思われますか?

「アレルギーって大変ね」と思うのと同時に、「なぜ近所の小学校は対応してあげないの?」「牛乳出さなきゃいいだけなのに何でできないの?」という学校への批判もあるでしょう。また反対に、「それだけの理由でバス通学なんてかわいそう」「親がお弁当を持たせるべきじゃない?」という親に対する非難も聞こえそうです。

実際、重度の牛乳アレルギーの子が避けるべきものは、給食の定番である牛乳のほかにも、特別に作らねばならないものがたくさんあります。

カルシウム補給のために、よく給食で使われるチーズやヨーグルト、パンにつけるバターやマーガリンも、もちろんダメです。食パンにもバターが入るのでダメ。ハムやソーセージにも、加工のために乳たんぱくが入ってるのでダメ。

メニューでいえば、グラタンもホワイトシチューはもちろん、カレーはルウに乳製品が、コロッケなどもフライにする際にパン粉を使うからダメ……と、給食の定番メニューはほとんど食べられないことになります。

アレルギーを根本から治せる薬がない今、アレルギー患児は、アレルゲンを除去して症状を抑えることが、有効な手段なのです。単純に牛乳を飲まなければ良いというわけではなく、加工品や外食の際には充分に気を配らないと重篤な症状がでてしまう可能性があります。

せめて給食くらい対応すればいいと思われそうですが、微量でもアレルゲンが混入しないよう、アレルギーごとに調理器具や皿を変える必要があったり、調理する台を離したりする必要があり、限られた時間と人員にとても大きな負担を与えてしまうことも事実です。


この問題に対しての答えは歩み寄りが必要で、答えが1つではないと私は思っています。

でもぜひ、アレルギーがないご家庭の方に考えていただきたいことがあります。アレルギーは軽視してしまうと、大きな事故につながってしまうということです。

アレルギーのお子さんが、「食べられない」と拒絶したものを「これは大丈夫」などと勝手な判断であげてしまったり、好き嫌いだと思って克服させようとしたりしないようにしてください。

また、子ども同士で給食の食べ残しを責めたり、無理やり食べさせることのないように、お子さんにもわかりやすく教えてあげてください。

普通に遊んでいるように見える子どもでも、アレルギーをはじめ、ほかの病気で食事制限を強いられているお子さんは案外多いものです。


いま、障がいや国際化など、さまざまな場面で「多様性を認める」必要が、より求められています。子どもの食についても、多様性を認めることが私たちに望まれています。

例えば友だち親子をホームパーティーに招く際など、参加するお子さんのアレルギーや何かの食事制限に対して、気を配るひとことを加えてみることからでも、意識し始めてみてはいかがでしょうか。


川口 由美子
ライター、管理栄養士。著書「アレルギーっ子の簡単毎日レシピ100(青春出版社)」の他、雑誌やWEBで離乳食や幼児食などの家庭的レシピを紹介。All About「離乳食」等ガイド。夫の転勤に伴いアジアを転々としながら現地人に根付くアーユルベーダや漢方などを学ぶ。個人事務所「Food-Medi」を運営。9歳娘と3歳息子の母。