食事でむせやすくなった時に、簡単にできる5つの対策




「うちのおじいちゃん、最近、むせて咳(せ)き込むことが多くなったわ……。痰(たん)もからんで、いつも咳払いしているし。そういえば、最近、食べ物が飲み込みにくいとも言ってたっけ。お餅で窒息する高齢者の方が多いけど、うちのおじいちゃんもそうなったらどうしよう……」







■気道に異物が入らないようにする機能の衰え



高齢になり、いつもむせている状態になると、自分がむせて咳き込んでいるという自覚が薄くなる人もいる。だからこそ、家族が見ていて心配になるケースが多いようだ。



食べ物や水、お茶、唾液などを飲み込む時、気管に入らないように瞬時にパタっとフタをする喉頭蓋(気管と食道の分岐点に存在し、のみ込む時に気管にフタをする)がある。このフタは、脳の延髄にある嚥下(えんげ=口の中のモノを飲み下すこと)中枢が指令を出すことで閉じる。



加齢により反射神経、運動神経が低下すると、飲み込むタイミングに嚥下中枢からの指令が間に合わなくなることがある。すると、フタが閉まらないので気管に入ってしまうのだ。それを咳き込むことで出そうとし、結果むせてしまう。また、飲み込む筋肉自体の衰えも、むせる原因のひとつだ。



■放っておくと……誤嚥(ごえん)性肺炎になることも



加齢に伴って、全体的な神経支配や運動機能が低下する。すると、食べ物や飲み物、唾液が気管に入りやすくなり、痰も吐き出しにくくなる。それが原因で、異物が気管内に居座って腐敗し、口の中の雑菌も気管内で繁殖するため、肺炎を起こしやすい状態になってしまう。これが誤嚥性肺炎のメカニズムだ。



ちなみに、日本人の死亡原因の第4位は誤嚥性肺炎(1位は悪性腫瘍、2位は心疾患、3位は脳血管障害)。しかし、90歳以上だと、誤嚥性肺炎は第2位に。また、肺炎で死亡する患者の95%以上が65歳以上。むせないように気をつけることは、重要なエイジングケアにもなる。



ビタミンB群で気道のフタの反射神経を改善



飲み込む時に気道のフタが閉まりやすくなるよう、反射神経を衰えさせないことが大切。そのためにも、ビタミンB群を意識して摂るようにしよう。ビタミンB群は、身体の中の代謝における中心的な補酵素。それぞれ助け合いながら脳や神経、皮膚などを健康に保つビタミンなのだ。



B1の多い食品は、豚ヒレ肉、生ハム、大豆など。B2の多い食品は、豚レバー、牛レバー、鶏レバー、焼きのり、抹茶など。B6の多い食品は、ニンニク、カツオ、マグロ、牛レバーなど。B12の多い食品は、シジミ、赤貝、スジコなどがある。



ゴックンと飲み込む筋肉を鍛えよう!



下記のイラストのように、飲み込むための筋肉の衰えを防ぐ訓練も有効だ。唇やアゴ、舌などのエクササイズを日課にし、ゴックンと力強く飲み込めるように鍛えるようにしよう。







お酒は食事が終わってから



お酒は神経をまひさせてしまい、誤嚥が起きやすくなってしまう。飲酒は食事が終わってからにしよう。また辛いものも、気道のフタが閉める神経をまひさせてしまうので控えめに。



ひと口で食べる量を少なくして



口いっぱいに頬張りながら食べてしまうと、高齢でなくてもむせやすくなってしまう。ひと口で食べる量は少なめに。お餅も小さくカットして食べるように配慮をしよう。もし、お餅が喉に詰まってしまったら、口の中に掃除機のホースを入れて、吸い取る方法がベストだ。



慌ただしく食事をしないように心がける



むせる症状が頻発する人は、日常生活を見直してみよう。毎日、慌ただしく食事(早食い)をしていないだろうか? 常にストレスのかかった状態(息の詰まるような)で、追い込まれていないだろうか? そうであれば、せめて食事の時だけでも、ゆっくり食べるよう心がけよう。



また、テレビなどを観ながらのながら食事も、飲み込むことへの集中力がそがれてしまう。食事の時は、食べること、飲み込むことに集中しよう。ゆっくりと味わって、食べる、飲む、ということが、むせないための最良の方法だ。



(からだエイジング)