政権公約の中で堂々と「国防軍の創設」「憲法改正」などを盛り込んでいる安倍新政権。これに対し、さっそく中国や韓国は警戒を強めているが、果たしてこれは日本の右傾化なのだろうか。

中国出身の評論家・石平(せきへい)氏は、国防軍の創設に関して国際的には当然の流れだと言う。

「国際社会で生き延びていくためには、最低限それぐらいしないと自殺行為です。戦後からの脱出が安倍政権から始まる。中国も韓国も『日本が右傾化している』と批判しますが、中韓のほうが日本よりも右傾化しています。日本が国防軍を持つことは右傾化でもなんでもありません。普通の国、健全な国になるということです」

議席数で見れば絶対安定多数を確保した安倍政権だが、外交問題を解決していくことはできるのか。

「中国との間で尖閣諸島が問題になるのは必至です。領土問題では必ず中国は争ってきます。日本側も国有化を撤回することはあり得ません。そこで気になるのが中国側の動きです。2012年11月15日には習近平新指導部ができましたが、習近平政権はかなりのタカ派なのです」(石平氏)

その兆候は、習近平政権が頻繁に使うキーワードにも現れているという。

「習近平政権は『民族の偉大なる復興』という言葉を頻繁に使っています。習近平は12月12日に広東省にある人民解放軍の陸軍と海軍艦隊を視察しましたが、その際に『偉大なる復興とは、強国の道、強軍の道である』と自ら解説しています」(石平氏)

それだけではない。もうひとつ、日本のマスコミが報じていない重大な変化がある。石平氏が続ける。

「広東省の部隊視察の際、習近平が新しい言葉を使っていたことに私は非常に驚きました。中国全土には7つの『軍区』があるのですが、彼が視察した広州軍区の呼称が『広州戦区』に変わっていたのです。つまり戦時体制を意識しているということで、非常に大きな変化です」

そして習近平が軍を視察した翌日の12月13日には、中国の航空機が尖閣諸島上空を領空侵犯し、自衛隊機がスクランブル(緊急)発進するという事態が発生した。これは今までになかったことだ。

「一般の船舶の領海侵犯だけであれば海上保安庁が対処しますが、領空侵犯であれば自衛隊が対処することになります。つまり、中国は意図的に自衛隊を誘い出した。尖閣諸島での軍事対立の色彩が一気に濃くなったのです。また、12月14日の人民日報には、中国の楊潔篪(ようけつち)外務大臣が『尖閣問題では断固として日本と闘争する』という内容の論文を寄稿しています。一国の外務大臣が近隣国に対して闘争という言葉を使うのは、宣戦布告の一歩手前と言ってもいい。一歩間違えば、安倍政権どころか日本自体が非常に厳しい立場になるでしょう」(石平氏)

日本人が気づかないうちに、中国側はすでに臨戦態勢を取っている。ヤル気満々ということだ。

「もはや日中関係を改善するどころの問題ではありません。尖閣ではどういう事態が起きてもおかしくない。全面的な戦争になる前には踏みとどまるとしても、軍事力を背景にした力比べになることは目に見えています。つまり、尖閣問題が終わることはあり得ない。これからエスカレートしていく一方でしょう」(石平氏)

選挙という戦いに勝った後に、今度は中国とのリアルな武力衝突が待っているのか?

「安倍さんも全面的な衝突を回避しながら日本の領土を守り抜く方法を考えているはずです。まずはアメリカに行って周辺国との関係をつくり、中国を封じ込める外交環境をつくり上げてから中国と渡り合うことになるでしょう。尖閣に人員を配備するといっても、さすがになんの準備もなく駐留させたりはしません。アメリカや周辺国が日本側につくという万全の外交準備をしてからであれば中国も手を出せなくなります」(石平氏)

それまで中国が黙っていてくれればいいのだが……。

(取材・文/畠山理仁)

■週刊プレイボーイ1・2超特大合併号「一触即発の領土問題で安倍新政権崩壊の危機!」より