正統派米国MMAスタイルと違い、どちらかといえば異端のドナルド・セラーニ。だからこそ、技術的にも驚かされることが多い

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バージニア州フェアファックスのパトリオット・センターで、15日(水・現地時間)に開催されるUFC FUEL「Korean Zombie vs. Poirier」。王者ベンソン・ヘンダーソンと挑戦者フランク・エドガーの再戦=立場を変えての世界タイトル戦が決定したライト級でドナルド・セラーニとジェレミー・スティーブンスが激突する。

セラーニはWEC時代、王座獲得こそならなかったものの、トップコンテンダーとして活躍した実力者。スタンドでは相手のバランスを巧みに崩すムエタイ技術、そして左右・ローとハイを自由に蹴り分けるキックボクシング技術を軸とし、組みではテイクダウンの攻防に重きを置かない一方でガードポジションからのサブミッションで一本勝ちを生み出す――日本人好み(?)なファイトスタイルの持ち主だ。

2011年から主戦場がUFCとなってからは4連勝、同年12月30日のUFC141ではタイトル戦への試金石ともいえるネイト・ディアスとの一戦にたどり着く。この試合でセラーニはローキックでネイトの足を削り、ネイトが足を上げてローをカットしようとすると、逆足を払ってこかす、というムエタイ式の足払いを連発。MMAでも決まるムエタイ技術で見るものを驚かせた。

しかし、足払いからトップキープという選択をしなかったセラーニは、ネイトを立たせてスタンド勝負した結果、パンチを被弾して判定負けに終わる。ネイトの寝技を警戒して……の判断であったにせよ、勝利への拘りが見たかった試合内容だったことは否めなかった。

そんなセラーニの仕切り直しの相手となるスティーブンスは、2007年からUFCのレギュラーとして戦い続けるファイター。右アッパー・右ストレートの強打が持ち味で、ハファエル・ドスアンジョス戦での豪快なKO勝利を記憶している人も多いことだろう。またストライキングに比重を置きつつも、アンソニー・ペティス相手にケージレスリングの攻防で競り合うなど、テイクダウン&トップキープという堅実な試合運びも計算できる選手だ。

セラーニのムエタイ技術は、他の選手にないものではあるが、ボクシング主体で一発の印象が強いスティーブンスと相対した場合、ネイト戦のようにジャッジに評価されにくい側面がある。またセラーニの卓越したガードワークも、最低でもキャッチの状態までサブミッションの形を作らなければ、スティーブンスのテイクダウン&トップキープに上回られるリスクを伴っている。セラーニが明確な差をつけることが出来ず、競った展開になればスティーブンスがジャッジの支持を得る可能性は高い。

UFC FOX03でジム・ミラーに一本勝ちしたネイトが頭一つ抜け、「UFC FOX04」グレイ・メイナードVSクレイ・グイダが組まれているライト級戦線。セラーニはその妙技でファンを沸かせる以上に、このスティーブンス戦はタイトル戦線に再浮上のきっかけとなる勝利が求められる。
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