日本初のLCC(格安航空会社)として「ピーチ・アビエーション」(ピーチ)がデビューしたのは3月1日のこと。

 LCCには「座席の間隔が狭い」「荷物を預けると別料金がかかる」「機内での無料飲食サービスがない」「予備機がないため、機体トラブルが生じると修理が終わるまで、その機体で運航する予定の便がすべて欠航となる」などといった不便がある。

 とはいえ、ピーチの運賃はタイミング次第で関西国際空港〜新千歳の片道チケットが4780円ほど。キャンペーン時には大阪(関空)〜福岡の片道チケットを250円で売り出したほどの激安ぶりで、乗客は不便を納得した上で利用している。福岡便を利用した20代男性客も太鼓判を押す。

「座席が狭くても、1時間ちょっとのフライト。苦痛は感じない。何よりキャビンアテンダント(客室乗務員、CA)が若くて気さくなコばかりなのでオススメ」

 こうした利用客の高評価にピーチ側もニンマリ。

「就航から1ヵ月間の平均搭乗率は83%、利用者は6万7000人にもなります。予想を上回るお客さまに搭乗していただきました」(井上慎一代表取締役CEO)

 だが、週プレはそんな順風満帆なピーチの弱みを発見した。それは最終便利用に潜む落とし穴。ピーチの機体はその日の最終便で、必ず会社が拠点を置く関空に戻ることになっている。コスト削減のため、整備場を関空1ヵ所に絞っているからだ。問題は福岡〜関空の最終便の到着時間だ。それが22時30分。

 一方、関西空港駅から大阪中心部まで行く最終電車はJRの23時32分の天王寺行きとなっている。つまり、最終便到着から最終電車の乗り継ぎまで62分間の計算だ。普通、1時間強もあれば、誰もが乗り継ぎは余裕と考える。ところが“爆弾低気圧”が吹き荒れた4月3日、多くのピーチ利用客が最終電車に乗り遅れることに。

「福岡からのピーチ最終便が関空に着いたのは23時46分。最終電車の発車後でした。ただ、この日だけじゃない。毎夜、最終電車に乗り遅れそうになり、焦りまくるピーチ利用客が少なくないんです」(空港関係者)

 どういうこと?

「ピーチの乗客は降機後、バスで空港ターミナルビル北の団体バス乗り場に運ばれます。そこで別のバスが運んできた荷物をピックアップし、さらに関西空港駅まで歩きます。その所要時間は最大で約30分。つまり、ピーチ最終便は30分遅延しただけで、最終電車を逃しかねない“ハラハラドキドキ便”なのです」(空港関係者)

 就航から1ヵ月間のピーチの定時運航率(定刻から15分以内に到着すること)は86%。この数字は決して低くないが、それでも14%の便は15分以上遅れたわけで、乗客は急ぎ足で移動しないと終電に乗り遅れかねない。そうなると、あとは空港内で始発を待つか、タクシーに乗るしかない。関空で客待ちするタクシー運転手が目を輝かす。

「ピーチ最終便の客に期待してますねん。爆弾低気圧の日の終電後にはタクシー乗り場に行列ができたし、大阪の梅田まで乗ったピーチの客が何人もいたそうや。そやから、ピーチが遅れてくれると、わしらはうれしいんやけどなあ」

 ちなみに、関空から梅田までのタクシー料金は約1万7000円。これじゃ、LCC利用によるせっかくの節約がパー。ピーチ最終便を利用するときは、重い荷物を抱えてもダッシュできるよう、事前にトレーニングを積んでおいたほうがいいかも。

(取材/ボールルーム)

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