柴咲コウ
 2003年に出演した映画『黄泉がえり』で、登場人物のRUI名義でリリースしたセカンドシングル「月のしずく」が売上枚数100万枚を突破した、柴咲コウ。2002年の歌手デビューから10年目に突入し、9月よりスタートした全国17ヵ所18公演で約5万人を動員するツア―「Kou Shibasaki Live Tour 2011 “CIRCLE & CYCLE”」のファイナルを11月28日、自身初となる日本武道館にて迎えた。

 セットリストは、今年5月に発売し、オリコンランキング初登場3位を記録したニューアルバム『CIRCLE CYCLE』収録曲を中心に構成。オープニングから「愛の輪」では頭上に大きな輪を掲げ、続く「Graspin' all of it」ではギターをかき鳴らしながら歌い上げるロックミュージシャン然とした姿も披露。最初のMCでは「武道館には魔物が棲んでるって聞いてたけど、魔物の正体はみんなの愛だってことに気付きました。スゲー!初っ端から感動。」と挨拶を述べた。

 「となり」「影」と、切なくも哀しげな感情で楽曲の世界観を表現。「EUPHORIA」で静から動へと一気に感情を爆発させると、「ゲノミクロニクル」ではステージ上のヴィジョンに角を尖らせ瞳を赤く光らせた悪魔が映し出され、映像が実体化したかのように、動画共有サイト発の話題の次世代クリエイターDECO*27がギターを弾きながら登場。ドラムのひぐちしょうこが独創的なリズムを刻む「無形スピリット」へと、オーディエンスの熱量を一気に上昇させた。

 ヴィジョンには、ボーカロイドの歌姫・初音ミクが進化を遂げたかのようなgalaxias!のキャラクター“ギャラ子”が映し出され、11月23日にリリースされたばかりのデビューアルバムよりタイトルナンバーをパフォーマンス。武道館は宇宙船となって浮遊していき、“ギャラ子”が実体化した柴咲コウ、DECO*27、TeddyLoidの3人からなるgalaxias!の出現によって、フロアは巨大なクラブと化した。

 TeddyLoidによる無形スピリットリミックスから、栗原 暁によるDJへと繋ぎ、アンプラグドコーナーへと転換。タンバリンを手にした柴咲と、強い絆で結ばれた5人のバンドメンバーによるアコースティック編成で、映画『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の挿入歌に起用された「ルージュの伝言」のカバーのほか、ドラマ「ガリレオ」の劇場版『容疑者Xの献身』の主題歌であるKOH+の「最愛」、映画『黄泉がえり』の主題歌「月のしずく」など、女優としての顔を併せもつ柴咲ならではの大ヒット曲をアレンジした。

 「あなたが今ここにいること、私達が今ここにいること、それが今の全て。」と語ると、「wish」「invitation」などを再びバンドセットで披露。「もっと踊って武道館を揺らしましょー!」と観客を盛り上げると、「よくある話〜喪服の女編〜」ではフロアが陽気なスカのリズムに包まれる。「武道館だぜ、もっと行けるよなー?」と更に煽り、自身初のロックナンバーであり、アーティストとしての魅力を存分に開花させた「ラバソー 〜lover soul〜」で、会場のヴォルテージは最高潮に達した。

 柴咲はMCで「アルバム『CIRCLE CYCLE』は全曲を通してループして、循環していくように作ったんです。そのツア―で各地を回って、一つとして同じライブは無いけれど、1公演目から今日18公演目までが一つの循環。私の心の中の循環にもなってるし、ツア―に来てくれた人達とか、バンドメンバーとかスタッフ、全員の人生の一つのサイクルになればいいなという願いを込めてタイトルを付けた次第です。そのツア―が今日をもって終わります。もう二度と同じライブは行いません。それはすごく感慨深いもので今、感動しています!このライブを通じて、心がほっこりして、生きるのがちょっと楽になったり、元気になるといいなぁ〜なんて思いながら、歌を歌ったり、詞を書いています。」と想いを明かした。

 そして「こちら側に立つ者としては、あまりお客さんに何かを要求しない方がいいと思うんですけど、今日は一つだけ私のわがままを聞いて欲しいんです。いいですか?」と尋ねると、客席中から「いいよー!」との歓声が続々と上がる。その後、本編ラストの曲「フィロソフィア」では、「今日ここに来た人達、家族と、恋人と、友達と、一人で来た人、色んな立場の人がここにいると思うの。だけど、そんな殻を全部取っ払って、隣の人と手を取り合って、この会場を一つの“CIRCLE”にしたいの。お願い、みんな協力して!」と呼び掛けると、観客たちが皆、次々に手を取り合い、会場中が温かい空気と大きな感動に包まれた。