落合博満監督はナゴヤドームにどれくらいの観客を集めたのか?
はじめに
2011年のシーズンもそろそろ終わり,残すはポストシーズンの季節となってまいりました。若干の試合を残してはいますが,両リーグとも順位は確定しています。今回のテーマはセ・リーグ1位の中日ドラゴンズ(以下,中日)です。
さて,シーズン途中の順位を思えば大逆転劇といっても良いだろう結果を残したのですが,そのことよりも現在は監督の退任にまつわるあれこれが話題の中心になっています。
これについては,各方面からいろいろな話が上がっていますが,噂に対して憶測でコメントするのは避けたいと思います。率直に感想を言わせてもらえば,
「もったいないな……。」
といったところです。今,慌てて監督を変える理由はないと思えますが,いつまでも同じ監督で戦い続けることはできませんし,手遅れになってからでは遅いということもあります。中日経営陣は,相当綿密な調査をした上での決断なのかどうかはよくわかりませんが,願わくはこの人事が建設的なものであることを祈っています。
とりあえず確かなのは,高木守道新監督は,落合現監督の実績と常に比較されることになるということです。そういう意味では非常に厳しいシーズンになると思います。いったいどのような編成で来期に挑むのかはまだまだ見えてこないところがありますが,少なくとも落合監督以上の観客動員が求められることになるはずです。
いくつ勝ったか?というのは来年のシーズンが始まれば嫌というほど話題になるでしょうが,観客動員数は一応毎試合発表されはしますが,全体的な傾向というものはその日その日の発表を見るだけではわかりにくいところがあります。そこで今回は,落合監督時代の観客動員をまとめて,来期の中日の観客動員を測る目安を作ってみたいと思います。
使用データ
分析に使用したデータは2005年から2011年までのナゴヤドームでの観客動員数です。本来ならば,落合監督が就任した2004年からのデータで分析したかったのですが,残念ながら2004年のデータは手に入りませんでした。
2006年から2011年までのデータは,「プロ野球ヌルデータ置き場」様のデータを参照しています。2005年のデータは,ベースボールレコードブック2006を参照しました。
ナゴヤドームの観客動員数
まずはナゴヤドームでの年度別平均観客動員数を月別に表1に示します。
数字の羅列ではわかりにくいところもあるので,満席の38,414席のうち何%の席を占有したかというデータをグラフ化したものを図1に示します。
年度別にデータを比較すると,ある程度のばらつきはありますが,2011年の7月以降は他と比べて観客動員数が少ないことがわかります。
8年間これだけの戦績を残しておきながら,わずか4ヶ月ほどの観客の入りが伸びないくらいでも退任しなくてはならないわけですから,プロ野球とはなんとも厳しい世界であることを思い知らされます。
観客数の減少は中日ドラゴンズだけの責任か?
さて,2011年の7月以降のナゴヤドームの観客数が少なくなっていることはわかりましたが,これは全て中日ドラゴンズだけの責任といえるのでしょうか?
以前,2010年のデータだけではありますが,プロ野球の観客動員数を分析したところ,対戦相手や試合の開催日が平日か休日であるかによっても観客の入り具合が違うことがわかっています。今回のデータでも,これらの要因が観客動員数に影響するかどうかを分析してみたいと思います。
対戦相手別に見た観客動員数
まずは,対戦相手別の観客動員数を表2に示します。
年によってばらつきはありますが,巨人と阪神の平均観客動員数が多いことがわかります。このデータからは,巨人・阪神戦になるとナゴヤドームまで観戦に訪れる中日ファンが多いのか,ナゴヤドームで観戦可能な圏内に住む巨人・阪神ファンの数が多いのか,それとも名古屋まで遠征してくる巨人・阪神ファンの数が多いのかはわかりません。しかし,巨人・阪神戦は他の試合よりも中日にとって旨みのある試合であることは確かです。
平日と休日の観客動員数の違い
次に,平日と休日の観客動員数の違いを表3に示します。
当たり前ではありますが,休日の方が観客はたくさん入ります。このように,中日ドラゴンズの観客動員数は,対戦相手や日取りによっても左右されてしまうことがわかります。
対戦相手別に見た平日と休日の観客動員数の違い
では,この平日と休日の観客動員数の違いを対戦相手別に見てみたいと思います。対戦相手が6種類だと煩雑なので3種類に分類しました。
?巨人・阪神(巨人と阪神)
?その他(ヤクルト,広島と横浜)
?交流戦(交流戦のデータ)
これらの3種類の対戦相手別の平日と休日の平均観客動員数を表4-1に示します。
このデータをグラフ化したものを図2に示します。
このデータは,なかなか興味深い傾向を示していると思います。以下に特徴を箇条書きします。
・休日の巨人・阪神戦の観客動員数は一貫して高い。
・休日のその他と交流戦の観客動員数は減少傾向にある。
・平日の巨人・阪神戦は,休日のその他,交流戦と同等の集客力があったが減少傾向にある。
・平日のその他と交流戦の観客動員数は減少傾向にある。
まずは,休日の巨人・阪神戦ですが,これは安定して高い観客動員数を維持しています。いわばドル箱的な位置づけだと思います。多少数は減ってきていますが,95%以上をキープしているのでこのカードは問題ないといって良いと思います。
次に,休日のその他と交流戦ですが,2007〜2008年くらいから減少傾向にあります。この原因はいろいろ考えられますが,これらのカードに魅力がなくなってきていると考えるのが自然だと思います。
交流戦については,2005年から導入されたわけですが,徐々に新鮮味を失いつつあるのかもしれません。一方,ヤクルト・広島・横浜戦での観客動員数の減少には,セ・リーグの順位の固定化(ヤクルトは結構変動しますが)が原因である可能性も考えられます。
続けて,平日では人気カードでもある巨人・阪神戦であっても減少傾向が見られます。もともと平日は観客が少ないわけですが,それがさらに減少しつつあるということは問題です。とはいえ,こうした問題については,中日に限らずNPBの全体の問題ではないでしょうか。
対戦相手別に見た平日と休日の試合数を比較する
さて,このように対戦相手と平日と休日の試合の観客動員数を検証したところ,カードと日程によって差があることがわかりました。このような対戦相手と日程の組み合わせの試合が何試合行われたかというデータを表4-2に示します。
このデータだけでは特徴が掴み難いので,休日の試合での対戦相手の割合を図3に示します。
一番のドル箱カードである巨人・阪神戦の休日に占める割合を見ていただくとわかるかと思いますが,この割合は年度によって変動があります。これは,日程を組む上では致し方ないところではありますが,これまでのデータを見る限り,巨人・阪神戦は集客には有利なカードであることから,このカードが休日に占める割合が高いほど,平均観客動員数も多くなることが考えられます。そして,図3のデータを見るに,2011年は休日の巨人・阪神戦の割合が少ないことがわかります。
さらに,ナゴヤドームで開催された試合のうち休日の巨人・阪神戦が占める割合を月別に求めたものを表5に示します。
データを見ると,図1で指摘した平均観客動員数の少なかった2011年の7月以降での休日の巨人・阪神戦が占める割合が少ないことがわかります。ということは,2005年以降で,特に平均観客動員数の少なかった2011年の7月以降は,集客面からみると不利な日程となっていたといえます。
まとめ
以上の分析より,2005年から2011年までのナゴヤドームでの観客動員数を分析したところ,2011年の特に7月以降に観客動員数が減少していることがわかりました。
しかし,こ対戦相手や日程を細かく分析すると,どれも一様に観客動員数が減少しているわけではなく,特定のカードと日程において減少が顕著であることがわかりました。
観客動員数の減少の原因を特定することは困難ですが,いくつか可能性を考えるに,中日だけの責任というよりも,NPB全体として取り組まなければならない課題や,日程と対戦カードが影響したことも考えられます。
しかしながら,いくら不利な日程と対戦カードだったとはいえ,観客動員数の減少に中日に責任がないとはいえません。そこに空席がある限り,それを埋めようとすることが球団の仕事だと思います。
ただ,これが落合監督の責任かと言われるとそそうではないように思います。球場にお客さんを連れてくるのは,球団経営者達の仕事なのではないでしょうか?
おわりに
以上,ナゴヤドームでの観客動員数の分析でした。
条件を分けて分析したらいろいろ見えてきたので,これはこれで面白いデータかな?と思います。発表された観客動員数を見ているだけではわからないこともあるものですね。とりえあえずこのデータが来期の目安になれば幸いです。
さて,監督交代については色々と思うところがあるでしょうが,賽は既に投げられてしまいました。こうなっては,来期の中日がどのようなチームになるかを期待したいと思います。中長期的な視点から見た場合,野手の世代交代(特に捕手)と,リリーフ投手陣の整備(クローザーの後釜とここ数年登板過多な浅尾選手の処遇)辺りには特に注目しています。そして,その前には落合監督には有終の美を飾ってほしいところです。
個人的には巨人に頑張って欲しいのですが,今シーズンの主役はやはり中日とヤクルトという気がします。
データ引用&参照
・プロ野球ヌルデータ置き場
・ベースボールレコードブック2006
2011年のシーズンもそろそろ終わり,残すはポストシーズンの季節となってまいりました。若干の試合を残してはいますが,両リーグとも順位は確定しています。今回のテーマはセ・リーグ1位の中日ドラゴンズ(以下,中日)です。
さて,シーズン途中の順位を思えば大逆転劇といっても良いだろう結果を残したのですが,そのことよりも現在は監督の退任にまつわるあれこれが話題の中心になっています。
「もったいないな……。」
といったところです。今,慌てて監督を変える理由はないと思えますが,いつまでも同じ監督で戦い続けることはできませんし,手遅れになってからでは遅いということもあります。中日経営陣は,相当綿密な調査をした上での決断なのかどうかはよくわかりませんが,願わくはこの人事が建設的なものであることを祈っています。
とりあえず確かなのは,高木守道新監督は,落合現監督の実績と常に比較されることになるということです。そういう意味では非常に厳しいシーズンになると思います。いったいどのような編成で来期に挑むのかはまだまだ見えてこないところがありますが,少なくとも落合監督以上の観客動員が求められることになるはずです。
いくつ勝ったか?というのは来年のシーズンが始まれば嫌というほど話題になるでしょうが,観客動員数は一応毎試合発表されはしますが,全体的な傾向というものはその日その日の発表を見るだけではわかりにくいところがあります。そこで今回は,落合監督時代の観客動員をまとめて,来期の中日の観客動員を測る目安を作ってみたいと思います。
使用データ
分析に使用したデータは2005年から2011年までのナゴヤドームでの観客動員数です。本来ならば,落合監督が就任した2004年からのデータで分析したかったのですが,残念ながら2004年のデータは手に入りませんでした。
2006年から2011年までのデータは,「プロ野球ヌルデータ置き場」様のデータを参照しています。2005年のデータは,ベースボールレコードブック2006を参照しました。
ナゴヤドームの観客動員数
まずはナゴヤドームでの年度別平均観客動員数を月別に表1に示します。
数字の羅列ではわかりにくいところもあるので,満席の38,414席のうち何%の席を占有したかというデータをグラフ化したものを図1に示します。
年度別にデータを比較すると,ある程度のばらつきはありますが,2011年の7月以降は他と比べて観客動員数が少ないことがわかります。
8年間これだけの戦績を残しておきながら,わずか4ヶ月ほどの観客の入りが伸びないくらいでも退任しなくてはならないわけですから,プロ野球とはなんとも厳しい世界であることを思い知らされます。
観客数の減少は中日ドラゴンズだけの責任か?
さて,2011年の7月以降のナゴヤドームの観客数が少なくなっていることはわかりましたが,これは全て中日ドラゴンズだけの責任といえるのでしょうか?
以前,2010年のデータだけではありますが,プロ野球の観客動員数を分析したところ,対戦相手や試合の開催日が平日か休日であるかによっても観客の入り具合が違うことがわかっています。今回のデータでも,これらの要因が観客動員数に影響するかどうかを分析してみたいと思います。
対戦相手別に見た観客動員数
まずは,対戦相手別の観客動員数を表2に示します。
年によってばらつきはありますが,巨人と阪神の平均観客動員数が多いことがわかります。このデータからは,巨人・阪神戦になるとナゴヤドームまで観戦に訪れる中日ファンが多いのか,ナゴヤドームで観戦可能な圏内に住む巨人・阪神ファンの数が多いのか,それとも名古屋まで遠征してくる巨人・阪神ファンの数が多いのかはわかりません。しかし,巨人・阪神戦は他の試合よりも中日にとって旨みのある試合であることは確かです。
平日と休日の観客動員数の違い
次に,平日と休日の観客動員数の違いを表3に示します。
当たり前ではありますが,休日の方が観客はたくさん入ります。このように,中日ドラゴンズの観客動員数は,対戦相手や日取りによっても左右されてしまうことがわかります。
対戦相手別に見た平日と休日の観客動員数の違い
では,この平日と休日の観客動員数の違いを対戦相手別に見てみたいと思います。対戦相手が6種類だと煩雑なので3種類に分類しました。
?巨人・阪神(巨人と阪神)
?その他(ヤクルト,広島と横浜)
?交流戦(交流戦のデータ)
これらの3種類の対戦相手別の平日と休日の平均観客動員数を表4-1に示します。
このデータをグラフ化したものを図2に示します。
このデータは,なかなか興味深い傾向を示していると思います。以下に特徴を箇条書きします。
・休日の巨人・阪神戦の観客動員数は一貫して高い。
・休日のその他と交流戦の観客動員数は減少傾向にある。
・平日の巨人・阪神戦は,休日のその他,交流戦と同等の集客力があったが減少傾向にある。
・平日のその他と交流戦の観客動員数は減少傾向にある。
まずは,休日の巨人・阪神戦ですが,これは安定して高い観客動員数を維持しています。いわばドル箱的な位置づけだと思います。多少数は減ってきていますが,95%以上をキープしているのでこのカードは問題ないといって良いと思います。
次に,休日のその他と交流戦ですが,2007〜2008年くらいから減少傾向にあります。この原因はいろいろ考えられますが,これらのカードに魅力がなくなってきていると考えるのが自然だと思います。
交流戦については,2005年から導入されたわけですが,徐々に新鮮味を失いつつあるのかもしれません。一方,ヤクルト・広島・横浜戦での観客動員数の減少には,セ・リーグの順位の固定化(ヤクルトは結構変動しますが)が原因である可能性も考えられます。
続けて,平日では人気カードでもある巨人・阪神戦であっても減少傾向が見られます。もともと平日は観客が少ないわけですが,それがさらに減少しつつあるということは問題です。とはいえ,こうした問題については,中日に限らずNPBの全体の問題ではないでしょうか。
対戦相手別に見た平日と休日の試合数を比較する
さて,このように対戦相手と平日と休日の試合の観客動員数を検証したところ,カードと日程によって差があることがわかりました。このような対戦相手と日程の組み合わせの試合が何試合行われたかというデータを表4-2に示します。
このデータだけでは特徴が掴み難いので,休日の試合での対戦相手の割合を図3に示します。
一番のドル箱カードである巨人・阪神戦の休日に占める割合を見ていただくとわかるかと思いますが,この割合は年度によって変動があります。これは,日程を組む上では致し方ないところではありますが,これまでのデータを見る限り,巨人・阪神戦は集客には有利なカードであることから,このカードが休日に占める割合が高いほど,平均観客動員数も多くなることが考えられます。そして,図3のデータを見るに,2011年は休日の巨人・阪神戦の割合が少ないことがわかります。
さらに,ナゴヤドームで開催された試合のうち休日の巨人・阪神戦が占める割合を月別に求めたものを表5に示します。
データを見ると,図1で指摘した平均観客動員数の少なかった2011年の7月以降での休日の巨人・阪神戦が占める割合が少ないことがわかります。ということは,2005年以降で,特に平均観客動員数の少なかった2011年の7月以降は,集客面からみると不利な日程となっていたといえます。
まとめ
以上の分析より,2005年から2011年までのナゴヤドームでの観客動員数を分析したところ,2011年の特に7月以降に観客動員数が減少していることがわかりました。
しかし,こ対戦相手や日程を細かく分析すると,どれも一様に観客動員数が減少しているわけではなく,特定のカードと日程において減少が顕著であることがわかりました。
観客動員数の減少の原因を特定することは困難ですが,いくつか可能性を考えるに,中日だけの責任というよりも,NPB全体として取り組まなければならない課題や,日程と対戦カードが影響したことも考えられます。
しかしながら,いくら不利な日程と対戦カードだったとはいえ,観客動員数の減少に中日に責任がないとはいえません。そこに空席がある限り,それを埋めようとすることが球団の仕事だと思います。
ただ,これが落合監督の責任かと言われるとそそうではないように思います。球場にお客さんを連れてくるのは,球団経営者達の仕事なのではないでしょうか?
おわりに
以上,ナゴヤドームでの観客動員数の分析でした。
条件を分けて分析したらいろいろ見えてきたので,これはこれで面白いデータかな?と思います。発表された観客動員数を見ているだけではわからないこともあるものですね。とりえあえずこのデータが来期の目安になれば幸いです。
さて,監督交代については色々と思うところがあるでしょうが,賽は既に投げられてしまいました。こうなっては,来期の中日がどのようなチームになるかを期待したいと思います。中長期的な視点から見た場合,野手の世代交代(特に捕手)と,リリーフ投手陣の整備(クローザーの後釜とここ数年登板過多な浅尾選手の処遇)辺りには特に注目しています。そして,その前には落合監督には有終の美を飾ってほしいところです。
個人的には巨人に頑張って欲しいのですが,今シーズンの主役はやはり中日とヤクルトという気がします。
データ引用&参照
・プロ野球ヌルデータ置き場
・ベースボールレコードブック2006
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