先日、終了したロンドン・オリンピック予選も兼ねたU-20南米選手権、素晴らしい将来を感じさせる十代の選手たちの出現が目立った。アルゼンチンはオリンピックへの出場権は逸したものの、今夏、コロンビアで行われるU-20 FIFAワールドカップへの出場は確定している。 そのアルゼンチンに、”第2のメッシ”と呼ばれる選手が出現した。

 フォアン・イトゥルベ(Juan Manuel Iturbe Arevalos)、1993年6月4日、ブエノスアイレス生まれの17才のフォワード、中盤どちらもこなす選手である。メッシと体格も似通っていて、プレースタイルも似ていてスピード溢れるドリブルだけではなく、1対1にも強く、常に相手選手より速くボールに触れることのできる得点能力溢れる選手である。

 パラグアイ人の両親がブエノスアイレスで生活している時に生まれているので、パラグアイとアルゼンチンの二重国籍を保持している。16才でパラグアイリーグにデビューをすると、レアル・マドリード、ローマ、マンチェスター・ユナイテッドなどなど、ヨーロッパの名門クラブからのオファーが殺到した。李忠成選手が年代別の韓国代表に召集されたことと同様、イトゥルベもパラグアイのフル代表を含めて召集されたが、昨年のワールドカップ開幕前にアルゼンチンU-20代表を選択した。そして、南アフリカには、バックアップ・メンバーとしてアルゼンチン代表の練習に参加していたのである。

 今般、U-20南米選手権はブラジルが圧倒的な強さを発揮して優勝した。得点王は、ネイマラドーナことネイマールが9得点でその地位を獲得した。ブラジルU-20代表は、優勝するまでに9試合を戦い、負けた試合はファイナル・リーグでの1試合のみであった。その負けた相手が、アルゼンチンU-20代表であった。試合は、イトゥルベがブラジルDF陣をスピードに乗ったドリブルで交しながら左足での研ぎ澄まされたゴールを挙げて、これが決勝ゴールとなった。

 イトゥルベは以前から、”el nuevo Messi”(エル・ヌエヴォ・メッシ、新しいメッシ)ないしは”Messi Guarani”(グアラニーのメッシ)のニックネームで良く知られていた。パラグアイは、先住民族のインディオとスペイン人の混血であるメスティーソが人口の9割を超える構成であるとのこと。スペイン語とグアラニー語が公用語であるが、グアラニー語を理解する人は人口の94%を超え、スペイン語の理解者の75%よりも多いという。そうした理由、背景から、実際はパラグアイ人であるイトゥルベは、”グアラニーのメッシ、即ち、パラグアイのメッシ”と呼ばれるようになった。

 イトゥルベは、先のコパ・リべルタドーレスの一次リーグでパラグアイのセロ・ポルテーニョ(Cerro Porteno)の一員としてプレー、チリのコロコロ戦で2ゴールを挙げて更に注目を浴びている。既に、今夏、ポルトガルのFCポルトへの移籍が決まっているが、先ずは、3月2日のリべルタドーレスでは、サントスFCのネイマラドーナ対エル・ヌエヴォ・メッシの2度目の対決も楽しみである。そして、コロンビアでのU-20 FIFAワールドカップ、場合によってはアルゼンチン開催のコパ・アメリカでも、そして、近い将来、ヨーロッパでのふたりの対戦も続いていくことを想像しても面白いと思う。そして、彼らの世代の日本人選手たちが、対等に戦う試合を是非とも観たいとも思ってしまう。

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