ケープタウンで行われたファイナルドロー<br>(Photo by DPPI/PHOTO KISHIMOTO)

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抽選結果は日本にとって厳しいものになった。

英国の大手ブックメーカー、ウイリアムヒル社の予想によれば、オランダがE組を突破する倍率は1.5倍。カメルーン3倍。デンマーク5倍。日本8倍。32チームのトータルな人気でも、日本は抽選の後、25番人気から27番人気タイへと順位を下げている。日本が厳しい組に入ったと判断したからに他ならない。

特に、3番手に位置するデンマークが、サッカーの質的に最も戦いにくい相手だということが、日本の突破の可能性をいっそう低くしている。ピッチを幅広くダイナミックかつ綺麗に使ってくるチームに、中に固まりがちな日本はめっぽう弱い。対戦する前から、ピッチに描かれるデザインが予想できてしまうのだ。

とはいえ、どの組に入っても状況は似たりよったり。「5倍」以内で済む組はない。星勘定ができそうな組は見当たらない。日本が置かれたポジションを再認識させられた恰好だ。

それでも、「アゲアゲ報道」は後を絶たないだろう。日本に都合が良さそうな材料を引っ張り出し、「行ける!」「大丈夫!」と、これでもかと可能性を煽るのが、いつものやり方。実際、今回も「オランダとは9月に一度対戦しているので、戦い方は分かっている、やりにくい相手ではない」なんて声が、早くも耳に入ってくる。

もっともらしく聞こえるが、平衡感覚に欠ける話だと言わざるを得ない。オランダも日本と同じだけ情報を得たわけだ。日本はオランダを知った分だけ、オランダにも日本のことを知られてしまった。

そうした意味では両者イーブンの関係になるが、日本が弱者でオランダが強者であることを忘れてはならない。弱者には本来、強者からマークされにくいメリットがある。それが今回の日本にはない。強者が本来、知らなくてもいい情報を、オランダはもち合わせている。オランダのファンマルヴァイク監督にも、抽選会後「日本は侮れない存在。3−0で勝っているが、スコアほどの開きはなかった」と、謙虚なコメントを吐かせてしまっている。強者にあるはずの油断が、今回のオランダにはない。

しかも、9月に対戦した時、日本がベストメンバーだったのに対し、オランダは7〜8割。オランダは日本より、確かな情報を得ているのだ。損をしたのは明らかに日本。

これに代表されるように、日本には自分中心の考え方が横行する癖がある。島国根性をむき出しに、ワールドカップという世界最大の戦いに臨もうとする。それこそが、日本サッカーが伸び悩む最大の原因だと僕は思う。ワールドワイドな視点、世界を俯瞰で眺めようとする姿勢、感性に、決定的に欠けている。

緒戦の舞台になるブルームフォンテンは、夜、異常に冷える。気温はマイナス近くになる。だからといって「カメルーンは寒さに弱いはず」と、決めてかかるのは馬鹿げている。ケニアやエチオピアのランナーが、冬のマラソンに弱いなんて話は聞いたことがない。さらに言えば、彼らの大半は普段、欧州でプレイしている。また、それを言うなら、デンマーク人は寒さに強いという話になる。第3戦が行われるラステンブルグも、ブルームフォンテン同様、寒い。デンマーク有利という話になるが、そうした話は一切、しようとしない。

特に、メディアには、自分たちに都合がいい話を作り出すなと言いたい。問われているのは平衡感覚だ。地球サイズのバランスだ。変な強がりを言わず、客観的な視点に基づき、まず謙虚になること。日本サッカーが伸び悩む原因は、その点に著しく欠けているからだと僕は思う。世間知らずでは、ワールドカップは戦えない。ベスト16の夢は遠のくばかりである。

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