世間を驚かせた斎藤次郎氏の日本郵政社長就任から1ヵ月が経過した。

 亀井郵政問題担当大臣が斎藤氏を社長に指名し、これが通ったことのメッセージは強力だ。それは、民主党政権であっても、政権の権力中枢(現在は明らかに小沢一郎民主党幹事長)が良しと判断する人物であれば、官僚出身であっても、天下りが認められるというものだ。高級官僚に対して、一方で天下り禁止や事業のムダ削減といった「ムチ」を構えつつ、他方に「権力者に気に入られれば、天下りや渡りなどの第二、第三の人生が開ける」という「アメ」を用意している。明らかなマニフェスト違反だが、官僚機構を動かす権力の装置としては極めて有効だ。

 もっとも斎藤次郎氏の人事は、この権力構造を示す象徴に過ぎないし、決まってしまったものは仕方がない。御本人にとっては些か迷惑な話にちがいない。かつての官僚仲間を今後次々と日本郵政の要職に呼び寄せるような事がなければ、彼に関してこの問題を蒸し返す必要はないだろう。

 それよりも、この巨大な「会社」を彼がどう経営するかが問題だ。11月27日に行われた斎藤社長の定例記者会見の報道を見ると、かなり、苦心している様子が窺われる。

 残念ながら、当面第一の苦心の対象であるらしき日本通運との合弁会社の問題についてはいいアイデアが無いので「頑張って下さい」(でも、難しかろうと思う)と言うしかないが、二つの大きな問題について考えてみたい。一つはささやかながら、日本郵政の今後のビジネスに対する提案だ。

 注目が集まるのは、何と言ってもゆうちょ銀行が抱える195兆円に及ぶ資産の運用だろう。現在、約8割が国債で運用されているが、運用の国債依存度が高いことについて、斎藤社長は会見で「そのままでいいとは思わない」と述べている。

 しかし、仮に国債から離れるとして、資金をどこに向かわせるかの目処は立たない。

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