科学者たちの間で脳に移植して使う“セックスチップ”なるものが開発されているという。名前だけ聞くと、SF映画に登場するバーチャルセックスをイメージしてしまうが、どんなものなんでしょうか。


これは、脳内に埋め込んだ電子部品から食や性の快感を司る眼窩前頭皮質という部位に微弱な刺激を送るというもので、元々アメリカでパーキンソン病の患者に使われていた技術だ。オックスフォード大の精神医学部上席研究員、Morten Kringelbach氏が指揮した研究によれば、眼窩前頭皮質への刺激は無快感症(食事やセックスによる快感を感じられない病気)患者の治療に役立つ可能性があるという。彼によれば、脳のこの部位への刺激は“うまい菓子をむさぼる時のような”強烈な歓喜をもたらすことができるらしい。うまい菓子を食べる時の快感は人によると思うがこの人は超甘党なのかもしれない。
ジョン・ラドクリフ病院の神経外科教授Tipu Aziz氏は10年以内にこの分野で画期的な進展があると考えている。また、2015年までに脳内で使うマイクロコンピュータのアプリケーションが充実することによって、外部電源を必要としない、携帯用の刺激送信機が誕生すると見ている。
彼は言う。「このチップが有効だろうという根拠がある。二、三年前、ある科学者がこのチップを性衝動の稀薄な女性に移植したら、彼女は性的にとても積極的になった。もっとも彼女は突然の変化にとまどったので脳内の配線は除去されたが。」
現在の技術では、心臓ペースメーカーから配線を脳につなげる外科手術が必要な上、出血のリスクや見た目の不格好さという課題が残るが、今後の改良次第でより精密な制御が可能で、必要に応じてスイッチをオン・オフできるようなハイスペックなものが出来るとのこと。
現在の使い方は、眼窩前頭皮質がうまく機能していない患者に対してその機能を正常化させるために刺激を与えるというものだが、一方で、そうした刺激により性感を生じさせる機器も北カリフォルニアの医師Stuart Meloy氏が既に開発中だ。そう遠くない将来、映画で見られるようなバーチャルセックスが実現するかもしれない。
しかし、洗脳の技術にも似た脳への人工的刺激について警鐘を鳴らす人もいる。パーキンソン患者のための脳刺激における第一人者、Mahlon DeLong氏は言う。
「我々は科学の進歩によって大きな哲学上の問題に直面させられている。」
人間がその人の人格を一変させてしまうような手術をどこまでしていいものかという点について、倫理的な議論を棚上げしたまま技術だけが先走りすれば、ロボトミー手術の時のような手痛い失敗を繰り返すということだろう。脳神経外科技術の進歩は、「人間とは何か」という根源的な定義さえ揺さぶりかねない変化をもたらすことになるかもしれない。

※ロボトミー手術・・・1935から行われた前部前頭葉の神経繊維切断手術のことで、精神疾患に対する画期的な治療法としてもてはやされたが、後に感情鈍麻や様々な精神障害などの後遺症が多数報告され、今では患者から人間性を奪う“悪魔の手術”と呼ばれている。

(編集部 こてつ)

【関連記事】
イタリア発。絵を描く馬が個展を開く。
英国発。駐車違反の罰金をトイレットペーパーで払った男。
灼熱のドバイに世界初の冷却ビーチが誕生。
中国発。奇跡!矢が目を貫通したのに生還した少年。

【参照記事】
TIMES ONLINE

-ITからセレブ、オタク、事件・事故まで。スルーできないニュース満載-
TechinsightJapan(テックインサイトジャパン)はコチラから!