【サムライ通信】緊張感に欠けた「親善」試合
「欧州リーグでもチャンスの数だけゴールが決まるわけではない。だからチャンスが作れたことが大きい」と長谷部誠は話し、多くの選手も「あとは最後のところだけ」と繰り返した。
しかし、わずか一度のチャンス、しかもロングシュートを決めてしまうＩ・アルハマディ。もちろん高木和道に当たりコースが変わったことも事実だが、決定力の差が如実に表れたゲームだった。ただ、それをいまさら声高に言ってもしょうがない。
「得点どうこうよりも、チャンスが何回もあったし、ビルドアップで何回かみんなの意識が統一されたパス回しができたので、そこは良かったが、課題もある」と試合後、中村俊輔は語った。
「相手が疲れてきた後半に出た若い選手たちは、自分たちの持ち味を発揮していたし良かった。でも前半はそういうわけにはいかない。チームとしてどう戦うかということを理解する必要がある。そういう中で岡崎君は、とても良くやっていた。多分スタンドから見ている人は気がつかないかもしれないくらいの小さなことで、ピッチにいる選手が助かるプレーをやってくれた」と中村俊はその動き出しを評価した。
ただ試合全体を通して考えてみると、パスミスも多く、緊張感が感じられない場面も多々あった。試合開始早々からハイプレッシャーで相手を追い込むんだことで、前半終了前から疲労が溜まっていたのかもしれない。自陣を守り固める相手に攻めあぐねた場面もあった。
「余裕がありすぎて、いろいろと考えてしまって、ヘナチョコなクロスボールになってしまった」と内田篤人が振り返る。そしてそのボールを相手に奪われ、カウンター攻撃にさらされる。チェックに行った長谷部が相手に交わされてしまい、失点してしまう。
「あれは僕のせい。あそこで簡単なプレーを選択すべきだった」と長谷部は反省していた。また長谷部と内田は同様に「これが本番でなくてよかった」と口をそろえた。
Ｊリーグも晩夏の残暑の中、連戦が続いている。コンディションの問題は欧州組だけの問題ではなかったのかもしれない。誰もいないところへパスを出しても、それを叱責する者はいない。わずかにずれたパスに対して、出し手と受け手が要求しあう場面の少なかった。
試合後、いくつかの取材者たちは「こんな内容で、大勝されても困るよね」と話していたが、それを一番感じているのは選手自身だろう。引き分けるべくして引き分けた試合。文字通りのテストマッチだった。
確かにいいところもあった。岡崎をはじめ興梠、ゴールを決めたと若い選手がらしさを見せた。「監督から『自分らしいプレーをしろ』と言って、ピッチに送り出された。最初のワンプレーは緊張したけれど、それ以降は自分のプレーをできたところもある。でも・・・（ゴールを）決めなくちゃね。周りが見えていない部分もあった。（内田からの）クロスを真ん中ではたいて、（香川の）ゴールが決まったけれど、俺が触らないほうがよかったのかもしれない。本当にたくさん課題を見つかった」
代表初出場となった興梠は「やれることはやれた」と言いながらも、試合後は元気がなかった。それでも「前線であれだけキープしてくれると後ろの選手は助かる」と中村俊は岡崎同様に一定の評価を下している。
