北朝鮮とのつながりはどうやってできたのか

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   東京・表参道での土地取引をめぐり、詐欺未遂などの疑いで女性フリージャーナリストが逮捕された。このジャーナリストは北朝鮮関連の記事を精力的に執筆する一方で、週刊文春には半ば「北朝鮮シンパ」呼ばわりされたほか、週刊金曜日には記事の情報源のずさんさを指摘されるなど、何かといわく付きの人物だった。

産経のオピニオン誌「正論」に北朝鮮関連の記事を執筆

   東京地検特捜部は2007年9月26日、詐欺未遂と有印私文書偽造・同行使の疑いで、コンサルタント会社「ワクマック」社長の市川和久容疑者(45)、同社取締役でフリージャーナリストの二瓶絵夢(にへい・えむ)容疑者(31)ら4人を逮捕した。4人は、東京・表参道の土地300坪の取引をめぐり、地権者の委任状を偽造、投資ファンド会社社長から内金名目で11億円をだまし取ろうとした疑いが持たれている。

   市川容疑者と二瓶容疑者には、実は「北朝鮮」という「共通項」があった。

   市川容疑者は、元衆院議員の秘書。秘書時代の03年には、月刊誌「月刊日本」には

「北朝鮮に騙されるな!」「朝鮮半島崩壊に備えよ 朝鮮半島情勢と有事情勢」
産経新聞に「対『北』外交は恫喝に屈するな」

といった勇ましいタイトルの論考をそれぞれ寄稿していた。

   その一方で二瓶容疑者は03年頃から北朝鮮関連の記事を執筆するなど、ジャーナリストとして精力的に活動していた。例えば、産経新聞社のオピニオン誌「正論」03年9月号では、当時官房副長官だった安倍晋三前首相と米田建三元内閣府副大臣の対談の司会を務めたほか、同誌03年11月号では、山崎拓自民党副総裁(当時)にインタビューをしてもいる。

   だが、同誌03年6月号に仁上妃芽(にうえ・ひめ)のペンネームで執筆した記事が、「週刊金曜日」に噛みつかれることになった。「正論」の記事は、同誌編集部に寄せられた「告発文書」をもとに、旧社会党(現・社民党)が北朝鮮による拉致に関与した疑いが濃厚だと指摘した記事なのだが、この「告発文書」は、月刊誌「」の02年5月号に掲載されたものとほぼ同一で、単なる愉快犯か怪文書マニアによるものではないか、というのだ。これを暴露した週刊金曜日03年10月3日号では、

「記事の根幹をなす文書のすべてが単なる怪文書だったことになる」

と、記事の信ぴょう性に疑問を投げかけている。週刊金曜日04年10月29号掲載の後日談によれば、「正論」編集長が「社民党に謝罪する」と主張するも、二瓶容疑者は謝罪を拒否。04年2月のインタビュー記事を最後に、二瓶容疑者はこれまで活躍の場としてきた同誌から姿を消したという。

中国・大連で行った北朝鮮高官との会談に同行

   こんな二瓶容疑者だが、04年4月に、平沢勝栄衆院議員と、当時は女性スキャンダルで落選中だった山崎拓氏が中国・大連で行った北朝鮮高官との会談に同行していたことから、世間の脚光を浴びることになった。だが、平沢・山崎両氏に取り入っているように見えながらも、実は二瓶容疑者が国益に反することをしていたのではないか、と指摘するのが、週刊文春04年10月28日号だ。同号によると、二瓶容疑者は、日本の交渉相手であるはずのソン・イルホ外務省副局長に電話をし、

「今回の内閣改造は、(北朝鮮には)いい状況、いい雰囲気になっています」

などと政治情勢を伝えたり、拉致議連や「家族会」の様子も報告しているというのだ。

   仮にこれが本当であれば、「売国奴」とのそしりも免れない。

   では、朝鮮半島情勢の目から見た二瓶容疑者の実力や知名度はどうなのか。コリア・レポートの辺真一編集長に聞いてみると、

「ここ数年をのぞくと、全く無名ですね。ここ数年で北朝鮮問題に首を突っ込んで、良い意味でも悪い意味でも脚光を浴びている、という感じです」

との答えが返ってきた。辺編集長によると、人道支援NGO「レインボーブリッヂ」事務局長の小坂浩彰氏も02年の小泉訪朝以降に突然脚光を浴びたことから、業界内では

「男の小坂、女の二瓶」

という呼び方もあったという。なお、小坂氏は厚生労働省の補助金をだまし取ったとして逮捕・起訴され、現在は公判中の身だ。

   一方の二瓶容疑者は、休刊が決まったばかりの「現代コリア」03年12月号に

「議員外交よりコワイ『NGOレインボーブリッヂ』の北朝鮮外交」

という記事を寄稿、小坂氏を非難している。それが小坂氏と同じ「逮捕という境遇」になったのは皮肉だ。