大人のような体力もないはずなのに、何時間も走り回って遊んでいる子どもの姿を見かけることがあります。オーヴェルニュ大学のセバスチャン・ラーテル准教授らの研究では、無尽蔵にも思える子どもたちのエネルギーの源は、全国大会出場レベルの成人アスリート以上である持久力によって生み出されていることが示されています。

Frontiers | Metabolic and Fatigue Profiles Are Comparable Between Prepubertal Children and Well-Trained Adult Endurance Athletes | Physiology

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2018.00387/full

Children are as fit as endurance athletes -- ScienceDaily

https://www.sciencedaily.com/releases/2018/04/180424083907.htm

子どものもつ回復力について研究チームは、「子どもは疲れにくい筋肉を持つだけでなく、高い強度の運動から迅速に回復します。その回復スピードは成人だけでなく、普段から高い強度の運動を行っている成人のアスリートをも上回っている」としています。

ラーテル准教授らは過去の研究において、「子どもたちは、普段運動をしない成人よりも疲労度が著しく低いため、持久力が必要なスポーツをしているアスリート並の能力に匹敵する可能性があること」を示唆していましたが、子どもたちの持久力が、本当に成人アスリート並かどうかを証明することはできていませんでした。



また、子どもの循環器系は大人ほど発達していないため、成人よりも早く疲れてしまう特徴があります。このため、子どもたちが長距離を自力で移動するときは、一定距離ごとの休憩が必要です。最終的には大人以上に休憩が必要となるため、決して身体能力そのものが高いわけではないことを示しています。

しかし、子どもたちは、強度の高い運動をこなしたとしても、疲れにくい筋肉と疲労から回復する能力を有しているという特徴もあります。そこで、研究チームは「この特徴が循環器系の能力の物理的制約を克服していること。そして、この能力は成人のみならず、アスリートと同等以上のはずである」と考えて、過去の研究で示すことができなかった課題を検証することにしました。

研究チームが行った実験では、「8歳〜12歳の健康的な男の子(少年グループ)」12人、「19歳〜23歳の普段運動をしない男子大学生(大学生グループ)」12人、「19歳〜27歳のアスリートの男性(アスリートグループ)」13人の被験者が集められました。なお、アスリートグループに所属する男性は、陸上の長距離ランナー、トライアスロン、サイクリストが集められ、いずれも全国大会出場レベルの選手が集められました。各グループは、エアロバイクを用いて「有酸素運動」と「無酸素運動」の試験を行い、参加者の「心拍数」「血中酸素濃度」「乳酸塩除去率」をチェックし、運動中にどの程度疲労し、運動後にどの程度迅速に回復したかを調査しています

すると、疲労度の観点では、普段から運動をしていない大学生グループが最も疲労するという結果となりました。また、少年グループはアスリートグループと同等の疲労度であることが確認されています。そして、運動後に心拍数が正常に戻り、乳酸塩が血液から取り除かれるまでの回復速度を調べると、少年グループが1位となり、アスリートグループを上回る結果となりました。



ラーテル准教授は「子どもたちは、マラソンランナーのように好気的代謝を多用していたため、強度の高い運動を行っている間の疲労が少なくなりました。また、心拍数の回復と血中の乳酸塩の除去能力も高いことが明らかとなり、アスリートよりも高い回復力を有していることが明らかになりました」と語っています。

「この高い持久力こそが、子どもたちが長時間遊び続けられる理由かもしれない」とラーテル准教授は述べています。