丹羽大輝が本領を発揮したのは、もう試合も終わろうかとしていたところだった。

90+2分、メヒディ・タレミが吉田麻也と森重真人の間にスルーパスを通そうとする。その瞬間、丹羽は自分の右に開いたバヒド・アミリを捨てた。ためらわずに森重の裏のスペースをカバーする。走り込んできたオミド・エブラヒミはコースを消され、なすすべがない。

丹羽は飛び出してきた西川周作と接触し頭を打ったものの、終了間際の決勝点を未然に防ぐことに成功した。一瞬でもアミリを気にしていたら間に合わなかったはずだ。丹羽は決断力の高さを見せたのだ。

「シリア戦では前半と後半でまったく違う内容だったので、監督からは今回は(シリア戦の)後半のような戦いをしようと言われました。オマーンは暑かったので、そこからこちらにきたほうがやりやすかったです」

30分に交代して出場した丹羽は、そこからアディショナルタイムを含めた18分間で、10回ボールにプレーした。89分にはクロスをクリアした際にモルテザ・プーラリガンジと接触するなど体を張ったプレーも見せた。

「球際で身体を張ったり、臆せずに戦ったりすることを、日ごろから監督には口酸っぱく言われてきました。今日は短い出場時間の中でも、自分の特長は出せたと思います。自分としては、とても楽しく、いい競争ができていると感じています」

8月9日、東アジアカップの中国戦以来の出場で、まだ代表は2キャップ目。それでも丹羽はベテランらしい落ち着きを見せながらプレーし、この日は試合をしっかりと閉じた。

もっとも、中国戦もこのイラン戦でも右SBとしての適性を試されている。そして右SBには酒井高徳以外にも酒井宏樹、内田篤人、さらには遠藤航などが候補に並ぶ激戦区だ。そしてヴァイッド・ハリルホジッチ監督が常々人材を探していると明言しているポジションでもある。

SBとしての適性を高く評価され、このまま右サイドに定着するのか、あるいはCBとSBの両方ができるユーティリティとしての扱いになるのか。あまり調子が良さそうではなかった吉田に代えてCBでの出場も見たかったところでもある。この遅咲きの29歳の前にはまだまだ可能性が広がっている。

【中畑忠】