パオロ・ジョルダーノの長篇『兵士たちの肉体』(2012。日本語訳は飯田亮介訳、早川書房、2013年)は、戦争小説だ。戦争というと、あなたはどういうものを想起するだろうか?戦争というと、私はつい油断して、歴史の教科書や年表に載っている記述のように考えてしまう。たとえば「1991年、湾岸戦争勃発」とか「1945年、第2次世界大戦終結」とか。そこにある戦争像は、簡略化された、くっきりしたものしかない。「クウェートに侵攻