『剣樹抄インヘルノの章』(冲方 丁) 歴史時代小説には、吉川英治『宮本武蔵』、藤沢周平『蝉しぐれ』、宮本昌孝『剣豪将軍義輝』、葉室麟『あおなり道場始末』など、剣の修行を通して成長する若者を描く青春小説の系譜がある。冲方丁〈剣樹抄〉シリーズも、この列に加わる作品である。 物語の舞台は、明暦の大火の直後、四代将軍・徳川家綱の時代で、火災に強い新たな江戸が再建されている途上である(今の東京に