「外国人材を、安価な労働力にしてはいけない」――20年間現場を見続けてきた私たちが、いま「人を育てる仕組み」をつくる理由

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ケア・イノベーション事業協同組合

2006年、研修生制度の時代から外国人材と向き合ってきた有明事業協同組合・ケア・イノベーション事業協同組合 理事・田添史郎。制度と現場の間で感じ続けてきた課題と、2027年の育成就労制度を前に始めた新たな挑戦。

私が外国人材の受け入れに携わるようになったのは、2006年のことです。

当時は現在とは制度も大きく異なり、「研修生制度」と呼ばれる仕組みのもと、多くの外国人が日本へやってきていました。

それから20年。

制度は何度も変わり、外国人材を取り巻く環境も大きく変化しました。

しかし、長年現場に立ち続けてきたからこそ、私にはずっと感じてきたことがあります。

外国人材を、単に人手不足を補うための「安価な労働力」にしてはいけない。

一人ひとりの能力や成長を正しく見て、それに見合った評価と報酬を用意する。

当たり前に聞こえることですが、これを実現することこそが、これからの外国人材受け入れにおいて最も重要になると考えています。

2027年4月には、技能実習制度に代わる「育成就労制度」が始まります。

企業が外国人材を選ぶだけではなく、外国人材から企業が「選ばれる」時代へ。

20年間外国人材の受け入れに携わってきた私が、なぜ今、受け入れ企業とともに「人事評価の仕組み」をつくろうとしているのか。

その背景には、2006年から見続けてきた現場があります。

2006年、外国人材との関わりが始まった

私が外国人材の受け入れに携わり始めた2006年、現在の技能実習制度とは異なる「研修生制度」が運用されていました。

当時の制度では、入国後1年目は「研修」という位置づけで、現在とは労働関係法令の適用関係も大きく異なっていました。

私は仕事としてこの制度に関わりながらも、現場を見る中で、少しずつ違和感を覚えるようになりました。

日本へ来る外国人の多くには、

「日本で技術を学びたい」

という思いと同時に、

「働いて収入を得て、母国にいる家族を支えたい」

という切実な目的があります。

しかし、当時の制度と彼らが日本へ来る目的との間には、必ずしも一致しない部分がありました。

制度上は「研修」。

しかし実際の現場では、日本の企業にとって大切な働き手でもある。

私はその姿を見ながら、

「制度上の位置づけと、現場で起きていることの間に距離があるのではないか」

と感じるようになりました。

それが、私が外国人材の受け入れについて深く考えるようになった原点の一つです。

制度が変わっても、現場との「距離」は残っている

その後、制度は大きく変わりました。

研修生制度から技能実習制度へ。

そして2027年4月からは、「人材育成」と「人材確保」を目的とする育成就労制度が始まります。

約20年間、私は制度が変化していく過程を現場から見てきました。

もちろん、外国人材の権利保護や適正な受け入れを進めるために、制度を整備していくことは非常に重要です。

一方で、実際に外国人材や受け入れ企業と日々接している立場から見ると、制度上の考え方と現場の実情との間に、難しさを感じることもあります。

外国人材がなぜ日本を選ぶのか。

なぜ都市部へ移りたいと思うのか。

なぜ職場を離れるのか。

企業はなぜ外国人材を必要としているのか。

そこには、賃金だけでは説明できない事情があります。

地域による生活環境の違いもあれば、将来への不安、人間関係、キャリアに対する考え方もあります。

制度だけを見ていては分からない問題が、現場には数多く存在します。

だからこそ私は、制度を守ることを大前提としながらも、「制度に人を合わせる」のではなく、「そこで働く人を見る」ことを忘れてはいけないと考えています。

私たち監理団体にも、変わるべきところがある

そして、この問題は行政や受け入れ企業だけのものではありません。

私たち監理団体自身も、自らの役割を見直さなければならないと思っています。

外国人材の受け入れを提案する際に、

「外国人なら人件費を抑えられます」

という考え方が、業界の中にまったくなかったとは言えません。

しかし私は、その考え方では、これからの外国人材受け入れは成り立たないと思っています。

外国人だから安く働いてもらう。

人手が足りないから外国人を入れる。

それだけでは、長く続く関係をつくることはできません。

能力が高い人には、それに見合った評価をする。

技術が上がれば、処遇にも反映する。

努力すれば、自分が次のステップへ進めることが分かる。

日本人であっても外国人であっても、本来これは同じであるべきです。

だからこそ、私たち監理団体も、「何人受け入れるか」を中心に考える組織から、「受け入れた人をどう育てるか」まで企業と一緒に考える組織へ変わる必要があると考えるようになりました。

2027年、「選ぶ企業」から「選ばれる企業」へ

育成就労制度では、一定の要件のもとで外国人本人の意向による転籍が認められるようになります。

これは、外国人材と企業との関係を大きく変える可能性があります。

これまでは、

「企業が外国人材を選ぶ」

という側面が強かったかもしれません。

これからは、

「外国人材も企業を選ぶ」

ことが、より当たり前になっていくでしょう。

そのとき企業が考えなければならないのは、「どうすれば転籍されないか」だけではありません。

「なぜ、この会社で働き続けたいと思ってもらえるのか」

ということです。

もちろん、適切な賃金は重要です。

しかし、単純な賃金競争だけでは、地方の中小企業が大都市圏の企業と競争することが難しくなるケースも考えられます。

だからこそ、

「ここにいれば技術を身につけられる」

「自分の頑張りを見てもらえる」

「何ができるようになれば給料が上がるのか分かる」

「将来のキャリアを描くことができる」

という、給与以外も含めた「働き続ける理由」をつくる必要があります。

そこでたどり着いた「人事評価」という答え

長年現場を見てきた中で、私が特に重要だと感じるようになったのが「評価」です。

経営者は、

「頑張っている人には給料を上げてあげたい」

と思っています。

しかし、その「頑張っている」という判断が、経営者や上司の感覚だけになってしまうことがあります。

一方、外国人材からすると、

「なぜ自分はこの評価なのか」

「何をすれば評価が上がるのか」

「どの技術を身につければ給料が上がるのか」

が分からない。

さらに言葉や文化の違いが加わることで、双方に悪意がなくても、すれ違いが生まれてしまいます。

だったら、その基準をできる限り明確にすればいい。

それが、外国人材の育成にも活用できる「人事評価の仕組み」をつくろうと考えた理由です。

既製品ではなく、その会社の「想い」からつくる

私たちが目指しているのは、既製の評価シートを受け入れ企業へ配布することではありません。

企業には、それぞれ異なる歴史があります。

経営者の考え方があります。

仕事に対する姿勢があります。

「こんな社員になってほしい」という人物像も違います。

だから、まず経営者と話します。

「会社として一番大切にしていることは何ですか」

「どんな技術者になってほしいですか」

「どこまでできるようになったら、一人前と評価しますか」

「その次には何を目指してほしいですか」

そうしたことを一つひとつ聞きながら、会社の考え方を言葉にし、評価項目へ落とし込んでいきます。

一社一社内容が違うため、時間もかかります。

しかし、その過程こそが大切だと考えています。

目指しているのは、外国人材自身が、

「今の自分はどこにいて、次に何を頑張ればいいのか」

を理解できる仕組みです。

そして、成長や能力を適切に評価し、その結果を処遇にもつなげていく。

外国人だからではありません。

働く一人の人間として、その人の能力を正しく評価する。

それが私たちの考える人事評価です。

「転籍させない」ではなく、「ここで働きたい」をつくる

私は、人事評価制度を単なる「転籍防止策」にしたくありません。

外国人材が転籍できる時代になるから、辞められない仕組みをつくる。

それでは、発想がこれまでと変わりません。

目指したいのは、

「辞められない会社」ではなく、「ここで働き続けたいと思える会社」です。

自分の仕事を見てくれている。

技術が上がれば評価してもらえる。

頑張れば処遇も変わる。

自分の将来を考えてくれている。

そう感じてもらえる企業を増やしていくことが、結果として外国人材の定着につながるのではないかと考えています。

20年間現場を見てきて、原点へ戻る

2006年から外国人材の受け入れに携わり、2026年で20年になります。

研修生制度から技能実習制度へ。

そして、育成就労制度へ。

制度は大きく変わろうとしています。

しかし、20年間現場を見続けてきた今だからこそ、私は非常にシンプルなところへ戻ってきました。

外国人材も、一人の働く人です。

夢があります。

家族がいます。

人生があります。

能力のある人は正しく評価されるべきです。

努力して成長した人には、それに見合った報酬が支払われるべきです。

そして日本へ来た人が、

「日本へ来てよかった」

「この会社で働いてよかった」

と思える環境をつくる。

制度がどれだけ変わっても、その原点は変わらないと思っています。

有明事業協同組合、ケア・イノベーション事業協同組合も、単に外国人材を受け入れ、監理するだけの組織ではなく、企業と外国人材の双方が成長できる環境を一緒につくる組織へ変わっていきたい。

「外国人材を受け入れる」から、「外国人材と一緒に会社をつくる」へ。

それが、20年間この仕事に携わってきた私が、次の20年に向けて実現したい外国人材受け入れの姿です。


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田添史郎

有明事業協同組合・ケア・イノベーション事業協同組合 理事。

2006年から外国人材の受け入れに携わり、研修生制度、技能実習制度を通じて外国人材と受け入れ企業の支援に従事。2027年4月から始まる育成就労制度を見据え、外国人材の能力・成長・処遇を結びつける人事評価の仕組みづくりに取り組んでいる。

組織概要

ケア・イノベーション事業協同組合

福岡県大牟田市浜田町14番地1

https://www.careinnv.com/( https://www.careinnv.com/ )

本件に関するお問い合わせ

担当者:田添史郎

E-mail:tazoe@careinnv.com