本部が入るイングランドのグランドロッジは1933年に建てられた

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秘密結社であるフリーメイソンは世界を裏で牛耳っている。英王室メンバーも代々会員であるし、米初代大統領ワシントンや日本への原爆投下を決めた米大統領トルーマンも会員だった。モーツァルトはフリーメイソン関連の作品を遺し、インドの初代首相ネルーも会員だ。鳩山由紀夫、鳩山邦夫兄弟の祖父であり、自由民主党の誕生と55年体制を作った鳩山一郎元首相も入っていた。つまり世界の歴史はフリーメイソンによって動かされてきたのだ! ……といううわさが日本ではまことしやかに言われている。

日本ではフリーメイソンを、海外で興った謎に包まれた秘密結社のイメージとして捉える人が多いため、何をしているか分からない恐ろしい団体のように考えてしまうが、そんな彼らの歴史や活動を、会員でなくとも垣間見られる場所がある。ロンドンとパリにあるフリーメイソン博物館である。

ロンドンの博物館はユナイテッド・グランドロッジ(United Grand Lodge of England)内に、パリはフランス大東社(Grand Orient de France)内に設けられ、会員以外の一般人も、秘密結社の建物に踏み入ることができる。イングランドのグランドロッジは、フリーメイソンの世界的な総本山であり、英国内ではイングランド、ウェールズ、チャネル諸島を統括している。フランス大東社はフランスのフリーメイソンをまとめる中心地だ。

フリーメイソンとは、元をたどれば石工の組合に端を発する。そのためかロンドン、パリともに建物は、他の建物以上に堂々たる雰囲気。周囲とも空気が違う。さぁ、入ってみよう。

内部を見学するためには徹底的な荷物検査が行われ、物々しい監視が付けられるのだろうか。そんな想像をしながらひるみつつ、「えーっと……は、博物館を見学したいんですけど」と恐る恐る受け付けの人に尋ねてみた。フリーメイソン独自のあいさつなんて知らないし、すでに試されているのでは(?)と考える暇もなく「それなら、あっちです。どうぞ」とあっさり入れてくれた。ちなみにロンドンは無料で、受付にてビジターパスを受け取り入場。パリは有料で、博物館がある部屋で入場料を支払う。

どちらの博物館も、その国のフリーメイソンの歴史を中心に、当時使われた道具などが展示されている。パリよりロンドンの方が内容は充実しており、世界中の貴重なフリーメイソングッズが所狭しに並ぶ。英仏ともに館内ガイドツアーも行われている。ひととおり巡ればフリーメイソンの活動内容は分かってきた。実際、フリーメイソンとは何なのか? 本当に恐ろしい秘密結社なのだろうか? 

イングランドのユナイテッド・グランドロッジによれば、フリーメイソンフリーメイソンは会員を指し、団体名はフリーメイソンリーという)は世界でもっとも古く大きな非宗教・友愛・慈善団体で、会員が人種や宗教、社会の経済的地位にかかわらず等しく、知り合いになることを目的としたものだそうだ。外部からの資金提供を受けず、英国および世界における全ての寄付を自助努力で行っており、スポーツ選手など才能ある人が成功するためのサポートもしている。

本部があるロンドンのユナイテッド・グランドロッジは会員数が25万人、北アイルランドとアイルランド、スコットランドをまとめるアイルランドのグランドロッジは15万人いる。フランスは4万7000人近くの会員を抱え、世界では約600万人に上る。女性のフリーメイソンもいて女性限定のグランドロッジがある。

また、フリーメイソンは閉じられた団体ではない。誰でも本部を訪れることができるし(毎年の訪問者数は10万人)、英国各地のロッジも定期的に外部へ解放している。ロンドンの本部建物は、ハリウッド映画やテレビ番組の撮影、ロンドン・ファッションウィークの会場として使われることもある。

肝心の会員になるには、どれくらいの費用がかかるのか? ユナイテッド・グランドロッジによれば、活動などは国内各地のロッジによりさまざまなので、自分の財布に見合うロッジを見つけて入ってくださいとのことだが、まず必要なものは入会金、式服の購入費用、年会費だ。チャリティも勧められるが、自らの経済力の範囲ですべきであり、額はもっぱらその人次第であるという。会合のディナー費用も会場として使う場所により変わるのでまちまちだ。ちなみに日本にもグランドロッジはあり、同サイトによれば入会金が4万5000円で年会費は8000円とのこと。慈善事業に興味がある人は、コンタクトを取ってみてはいかがだろうか。
(加藤亨延)