商品開発から市場開拓の成功プロセスを「男前アイロン」から学ぶ/荻野 永策
今回のコラムは、商品開発から市場開拓の成功プロセスを「男前アイロン」を例にご紹介したいと思います。御社の商品も、このコラムを参考に成功のプロセスを歩いてください!
この記事の内容
1.参考記事紹介「「アイロンは女性の仕事」覆す老舗の技術」
2.アイロンは9割が女性担当、そして面倒な作業第1位
3.新しい市場を作る「商品開発」
4.商品開発から市場開拓の成功プロセス
参考記事紹介「「アイロンは女性の仕事」覆す老舗の技術」
まずは下記の参考記事をご覧いただきたい。
参考記事:「アイロンは女性の仕事」覆す老舗の技術
URL:http://www.sankeibiz.jp/business/news/140421/bsl1404210500003-n1.htm
--記事から引用--
電源を入れると約90秒で高温に達して素早く使える上、衣服の狙った箇所に強力な蒸気を当てることができてシワを簡単に伸ばせる。水のタンクも大容量で大量の服でも一気に対応できる。黒色のほか金色もある外観は家電量販店でひときわ目立ち、2012年の発売から約2年で計2万5000台を販売。今も生産が追い付かない人気ぶりだ。
従業員50人の同社は、創業80年を超える業務用電熱機器メーカーの老舗。はんだごてをはじめとした職人用の工具を中心に、電熱技術を転用した電気こんろやストーブなど安価な家電製品も柱の一つに据えてきた。
だが十数年前から中国製品の台頭で価格競争力が低下。「失った立ち位置を取り戻そうともがいた結果がこのアイロンだった」(石崎博章社長)。
市場調査で男性のアイロン使用が実は多いことや、朝の短い時間に掛けている実態を把握。奇抜な商品名と個性的な外観にしたのは、女性向け中心のデザインが多い中で目立つための工夫だったが、「当初は社内の営業担当はもちろん、販売店のバイヤーからも酷評された」(石崎社長)。
それでも受け入れられたのは老舗企業として蓄積してきた技術の裏付けがあったからだ。耐久性や熱効率に優れた電熱線を使用。アルミでできた掛け面の蓄熱効率を上げることで、大手の最上位機種に劣らない機能を備えながら実勢価格は7980円と半値に近い。
石崎社長は「ノウハウが多く詰まったうちの製品は、職人も認める使い心地の良さを備えている」と自信を見せている。
--引用ここまで--
アイロンは9割が女性担当、そして面倒な作業第1位
女性が使うアイロンを男性向けに開発するという、非常に面白い事例である。実際にアイロンに関する市場調査データを調べてみると面白いことが分かった。
・主婦が嫌いな家事No1はアイロンがけ。
PRESIDENT Online:http://president.jp/articles/-/6367
・イギリスの大手家電メーカーPhillipsの調査で涙ぐましい主婦の苦労が明らかに。
主婦が生涯アイロンがけに費やす時間は4ヶ月!
http://irorio.jp/hinakomoriyama/20130206/46229/
・花王株式会社の「最近のアイロンがけの意識と実態調査」
アイロンがけは、9割が妻の担当、かけたアイテムはワイシャツがメイン。
http://www.kao.co.jp/lifei/info/130726/index.html
このような調査結果を見ても、主婦がアイロンがけを面倒だと思っていること、想像以上に大変な作業であること、男性(主人)はあんまり手伝っていないことがよくわかる。
新しい市場を作る「商品開発」
市場が上記のような状況だからこそ、新しい市場として「男性向け」アイロンを考案している。コンセプトはその名の通り「男前」。男前が使うアイロンとして商品開発を進めたようだ。
その商品開発の具体策として、男前アイロンの特設サイトを確認すると、「3つの手間なし機能」や「デザイン」にこだわって開発しているようだ。その結果、より男性的に、より男性が使いやすい、男性のためのアイロンが完成したといえる。
特設サイト
http://otokomae-iron.jp/
「3つの手間なし機能」
1:素早く立ち上がる(スチーム開始までたったの90秒。忙しい男性にピッタリ!)
2:大容量タンク(給水回数が少なくなり一度に多くの服をアイロンがけできる!)
3:先端強力ショット(ハンガーにつるしたまましわをとったりもできる!)
この結果、女性が面倒だと言っているアイロン市場に、男性のためのアイロン市場が出来上がったことになる。こんなアイロンを旦那さんが「買う」と言い出したら、「反対する女性」は上記の調査結果がある以上、少ないであろう。だから「売れる」。
商品開発から市場開拓の成功プロセス
それでは、この男前アイロンの成功を例に、商品開発から市場開拓までの成功プロセスを考えてみよう。
(1)市場調査
まずは市場調査で「課題」を明確にしなければならない。男前アイロンの場合、私が調べただけでも、「アイロン担当の主婦は9割、男性は使わない、女性がやりたくない仕事No1」という結果が出ている。これを家庭の課題として、位置づけ、その解決策として商品開発に取り組んでいる。
(2)商品開発とコンセプト作り
「1」から男性向けに作ったらどうなのか?と着目し、「男前アイロン」というコンセプトにたどり着く。その結果、主婦に対しては、「楽できる(アイロンやらなくていい)」という価値を、男性に対しては、「男前になれる」という価値を提案できるようになった。
(3)市場開拓と話題作り
そして商品開発が終わったら市場開拓であるが、今までにない市場なので、メディアをうまく使っているようだ。
http://www.sure-ishizaki.co.jp/living/otokomae-iron-article.html
雑誌・新聞やソーシャルメディアを活用して認知拡大し、市場投入。WEBを使った通販も展開。その結果、生産が追い付かないほど売れている
サイトや記事を見ただけでの判断であるが、リサーチから商品開発、そして市場投入というプロセスを経て成果を出している。最大のポイントは「男性が使うアイロン」という、新しい市場を作ったことである。そう考えると、やはり、「リサーチ」は重要であるということがよくわかる。リサーチがなければ、こういう市場があることにすら「気が付かない」からだ。
逆の発想をすれば、「男性が使うアイロン」というのは、既存の商品の「使い手」を女性から男性に変更しただけである。そう考えれば、あなたの商品も「使い手」を変えてみてはどうか?そこに新しい市場があるかもしれないし、男前アイロンのように「何かの課題を解決できる」かもしれない。性別の変更、年齢層の変更、役職の変更など、使い手を変える要素はたくさんある。成功プロセスの第一歩はここからである。ぜひ考えてみてほしい。
この記事の内容
1.参考記事紹介「「アイロンは女性の仕事」覆す老舗の技術」
2.アイロンは9割が女性担当、そして面倒な作業第1位
3.新しい市場を作る「商品開発」
4.商品開発から市場開拓の成功プロセス
参考記事紹介「「アイロンは女性の仕事」覆す老舗の技術」
参考記事:「アイロンは女性の仕事」覆す老舗の技術
URL:http://www.sankeibiz.jp/business/news/140421/bsl1404210500003-n1.htm
--記事から引用--
電源を入れると約90秒で高温に達して素早く使える上、衣服の狙った箇所に強力な蒸気を当てることができてシワを簡単に伸ばせる。水のタンクも大容量で大量の服でも一気に対応できる。黒色のほか金色もある外観は家電量販店でひときわ目立ち、2012年の発売から約2年で計2万5000台を販売。今も生産が追い付かない人気ぶりだ。
従業員50人の同社は、創業80年を超える業務用電熱機器メーカーの老舗。はんだごてをはじめとした職人用の工具を中心に、電熱技術を転用した電気こんろやストーブなど安価な家電製品も柱の一つに据えてきた。
だが十数年前から中国製品の台頭で価格競争力が低下。「失った立ち位置を取り戻そうともがいた結果がこのアイロンだった」(石崎博章社長)。
市場調査で男性のアイロン使用が実は多いことや、朝の短い時間に掛けている実態を把握。奇抜な商品名と個性的な外観にしたのは、女性向け中心のデザインが多い中で目立つための工夫だったが、「当初は社内の営業担当はもちろん、販売店のバイヤーからも酷評された」(石崎社長)。
それでも受け入れられたのは老舗企業として蓄積してきた技術の裏付けがあったからだ。耐久性や熱効率に優れた電熱線を使用。アルミでできた掛け面の蓄熱効率を上げることで、大手の最上位機種に劣らない機能を備えながら実勢価格は7980円と半値に近い。
石崎社長は「ノウハウが多く詰まったうちの製品は、職人も認める使い心地の良さを備えている」と自信を見せている。
--引用ここまで--
アイロンは9割が女性担当、そして面倒な作業第1位
女性が使うアイロンを男性向けに開発するという、非常に面白い事例である。実際にアイロンに関する市場調査データを調べてみると面白いことが分かった。
・主婦が嫌いな家事No1はアイロンがけ。
PRESIDENT Online:http://president.jp/articles/-/6367
・イギリスの大手家電メーカーPhillipsの調査で涙ぐましい主婦の苦労が明らかに。
主婦が生涯アイロンがけに費やす時間は4ヶ月!
http://irorio.jp/hinakomoriyama/20130206/46229/
・花王株式会社の「最近のアイロンがけの意識と実態調査」
アイロンがけは、9割が妻の担当、かけたアイテムはワイシャツがメイン。
http://www.kao.co.jp/lifei/info/130726/index.html
このような調査結果を見ても、主婦がアイロンがけを面倒だと思っていること、想像以上に大変な作業であること、男性(主人)はあんまり手伝っていないことがよくわかる。
新しい市場を作る「商品開発」
市場が上記のような状況だからこそ、新しい市場として「男性向け」アイロンを考案している。コンセプトはその名の通り「男前」。男前が使うアイロンとして商品開発を進めたようだ。
その商品開発の具体策として、男前アイロンの特設サイトを確認すると、「3つの手間なし機能」や「デザイン」にこだわって開発しているようだ。その結果、より男性的に、より男性が使いやすい、男性のためのアイロンが完成したといえる。
特設サイト
http://otokomae-iron.jp/
「3つの手間なし機能」
1:素早く立ち上がる(スチーム開始までたったの90秒。忙しい男性にピッタリ!)
2:大容量タンク(給水回数が少なくなり一度に多くの服をアイロンがけできる!)
3:先端強力ショット(ハンガーにつるしたまましわをとったりもできる!)
この結果、女性が面倒だと言っているアイロン市場に、男性のためのアイロン市場が出来上がったことになる。こんなアイロンを旦那さんが「買う」と言い出したら、「反対する女性」は上記の調査結果がある以上、少ないであろう。だから「売れる」。
商品開発から市場開拓の成功プロセス
それでは、この男前アイロンの成功を例に、商品開発から市場開拓までの成功プロセスを考えてみよう。
(1)市場調査
まずは市場調査で「課題」を明確にしなければならない。男前アイロンの場合、私が調べただけでも、「アイロン担当の主婦は9割、男性は使わない、女性がやりたくない仕事No1」という結果が出ている。これを家庭の課題として、位置づけ、その解決策として商品開発に取り組んでいる。
(2)商品開発とコンセプト作り
「1」から男性向けに作ったらどうなのか?と着目し、「男前アイロン」というコンセプトにたどり着く。その結果、主婦に対しては、「楽できる(アイロンやらなくていい)」という価値を、男性に対しては、「男前になれる」という価値を提案できるようになった。
(3)市場開拓と話題作り
そして商品開発が終わったら市場開拓であるが、今までにない市場なので、メディアをうまく使っているようだ。
http://www.sure-ishizaki.co.jp/living/otokomae-iron-article.html
雑誌・新聞やソーシャルメディアを活用して認知拡大し、市場投入。WEBを使った通販も展開。その結果、生産が追い付かないほど売れている
サイトや記事を見ただけでの判断であるが、リサーチから商品開発、そして市場投入というプロセスを経て成果を出している。最大のポイントは「男性が使うアイロン」という、新しい市場を作ったことである。そう考えると、やはり、「リサーチ」は重要であるということがよくわかる。リサーチがなければ、こういう市場があることにすら「気が付かない」からだ。
逆の発想をすれば、「男性が使うアイロン」というのは、既存の商品の「使い手」を女性から男性に変更しただけである。そう考えれば、あなたの商品も「使い手」を変えてみてはどうか?そこに新しい市場があるかもしれないし、男前アイロンのように「何かの課題を解決できる」かもしれない。性別の変更、年齢層の変更、役職の変更など、使い手を変える要素はたくさんある。成功プロセスの第一歩はここからである。ぜひ考えてみてほしい。