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家計相談をしていると、「特に贅沢をしていないのに、なぜかお金が貯まらない」という声を非常によく耳にする。年収1億円を超えるような人にはさすがにいないが、年収2000万円ぐらいまでの人なら、多くの人がそんな悩みを持っている。サラリーマンで普通に安定収入があるのに貯金ができないのは、いったいなぜなのか?

■「貯まらない体質」問診シート

<お金への関心と愛情>
□わが家の貯金額をすぐに答えられない
□給与明細は支払額だけチェックしたら引き出しやカバンに放り込む
□ねんきん定期便なんて見たことがない
□値段を比較せずに電気製品を買う
□節約なんてみみっちいから嫌いだ
□財布がレシートとカードでパンパンに膨らんでいる

<見栄っ張り体質>
□同僚の貯金額が気になる
□自分の生活が世間的にどんなレベルか知りたい
□子どもの教育にかけるお金は惜しまない
□回る寿司は寿司とはいえない
□子どもに「うちは貧乏」と言えない
□車は外車に乗りたい
□高いお金を払ってもいい家に住みたい

<お金の基礎知識>
□営業員に勧められるまま生命保険に加入した
□掛け捨て型の保険は保険料がもったいない
□銀行定期預金なんてどこに預けても同じ
□老後資金の準備には個人年金が最適だ
投資信託のほうが株より安全だと思う
□相場が好調になってきたので株で資金の一発倍増を狙いたい

<計画性>
□5年後、10年後の家族の姿を想像したことがない
□給料やボーナスを使ってから余ったお金を貯金している
□食品や日用品をクレジットカードで購入している
□返済終了が70歳以上になる住宅ローンを組んでいる
□老後は退職金と年金でなんとか暮らせると思う
□夫婦で将来について話したことがない

■診断結果

(※チェックのついた項目の数を1ポイントとして計算する。満点=25ポイント)

・0〜2ポイント――お金を貯められる習慣が身についている。この調子でいけば一生お金に困らない生活ができそう。
・3〜8ポイント――お金を貯められる素質はあるが、まだまだ工夫の余地あり。チェックのついた項目は改善する努力を。
・9〜14ポイント――このままではお金を貯めるのはかなり困難。家計管理の大切さを知って、お金への関心を高め、知識を身につけよう。
・15ポイント以上――このままでは貯まらないどころか家計破綻の不安も。将来への危機感を持ち、お金に対する意識を変えていこう。

■ファイナンシャル・プランナー 藤川太さんのアドバイス

実は、私にはその人の財布を見るだけで貯金できる人か否かを一目で見抜く特技がある。これは占いでも霊視パワーでもなく、ファイナンシャル・プランナーとして多くの人の家計を見てきたなかで、その人の経済事情と財布との関係がわかるようになったのだ。

お金の貯まらない人に最もよく見られるのは、レシートや小銭、カード類でパンパンに膨れあがった財布だ。お札がレシートに埋もれているため、いくらお金を持っているかもわからない。こんな財布を私は“ブタ財布”と呼んでいる。また、マネークリップを使う人や、財布を持たずにお金を直接ポケットに入れているような人にもお金は貯まらない。こうした人はたいていお金に無頓着で、お金を落としても気づきもしない。

貯まらない財布の持ち主の特徴を一言でいえば、「お金に愛情がない」ということだ。問診シートのうち「お金への関心と愛情」のグループは、そうした体質をチェックするもの。お金は大切にしてくれる人のところに集まる性質がある。「わが家の貯金額がわからない」「自分の給料や年金について知ろうとしない」というのはお金に関心のない証拠だ。また、お金に愛情があれば大事に使うのが当然で、節約をバカにしたりコストパフォーマンスを無視するような人にはお金が貯まらない。

つい見栄を張る「見栄っ張り体質」の人もお金は貯めにくい。

収入が増えるといい家に住みたい、外国車に乗りたい、ブランド品を持ちたい……と考えるようになる。それが本当に必要ならともかく、「高収入にふさわしい」という理由なら、単なる見栄でムダな消費だ。同僚の貯金額が気になったり、自分の生活レベルが気になったりするのも、周囲の目を意識している証拠といえる。また、子どもに何かねだられたとき「うちは貧乏だからダメ」と言えないのも見栄っ張り体質の表れの一つ。本当の金持ちは、いつも子どもに「うちは貧乏」と言い聞かせ、余計なものを買い与えたりしない。他人の目など気にせず、わが道を行くのがお金を貯められる人の特徴だ。

「お金の基礎知識」のグループは、「お金への関心」と近い関係にある。お金に対する関心があれば、自然にお金の知識も増えるものだ。ただし、営業員に勧められるまま生命保険投資商品を買ったりするのは、お金への関心はあっても知識を得ようとしていない証拠。それではお金を貯められないばかりか、損する可能性もある。

問診シートの項目を説明すると、掛け捨て型保険は貯蓄型保険よりはるかに安い保険料で保障が得られるので上手に利用したい。個人年金のような貯蓄型保険は現在、利率が非常に低く、この金利で加入するのはやめたほうが無難。銀行定期預金はネット銀行などを探せばメガバンクの10倍もの金利がつくところもある。また、投資信託には株式以上にハイリスクのものもある。こうした投資信託や株式に投資して短期で資金倍増を狙うのは投資というより投機に近く、倍増することがあれば半減することも当然あると認識しておきたい。

最後の「計画性」は、実はもっとも大切なグループだ。目的がないと、お金はなかなか貯まらない。「5年後に家を買う」「10年後の進学資金を貯める」といった具体的な目標があれば計画的に貯めることもできるし、節約も頑張れる。「お金が余ったら貯金しよう」と思っていては計画的な貯金は無理。また、クレジットカードを日常の買い物に使うとお金の管理は難しい。計画的に使える人でなければ安易に使うのは避けたほうがいい。

老後資金については、将来、年金が不足することはわかっているのだから甘い見方は避けるべき。こうしたお金のことを夫婦できちんと話し合う家庭なら、将来に向けて計画的にお金を貯めることができるはずだ。

(ファイナンシャル・プランナー 藤川 太 写真=PIXTA)