インテルが次世代のウェアラブル・コンピューティングを担う極小マイクロ・コンピュータ「Edison」を公開

写真拡大 (全3枚)

SDカード程度のサイズにLinuxコンピュータを詰め込むことに成功したインテルの野望とは

代表的なシングルボード・コンピュータ「Raspberry Pi」は非常に小型だが、Intelの最新マイクロ・コンピュータ「Edison」はそれをさらに凌ぐ小ささだ。Edisonは、SDカード程度のサイズにLinuxコンピュータの完全な機能を搭載することに成功したのである。

EdisonにはLinux機能の他にも、x86互換のデュアルコア・プロセッサ「Quark」、Wifi、Bluetooth LE、リアルタイムデータ処理用のマイクロコントローラ等が搭載されており、専用のアプリストアまで用意されている。

Edisonは今月6日にラスベガスで開催が始まったコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)のなかで、Intel CEOのブライアン・クルザニッチによって発表された。Quarkプロセッサは同社のAtomシリーズの後継であり、Edisonはこのプロセッサが搭載された初の製品となる。Atomプロセッサはローエンドモデルのネットブックや一部のタブレット、スマートフォンに使われているが、近年では高速で省電力性に優れるARMベースのプロセッサにシェアを譲っている。ARM系プロセッサは現在大半のAndroidデバイスに搭載されており、AppleのiPhoneにも採用されている。

新しいQuarkプロセッサはAtomの約1/5程度の大きさで、消費電力は実に約1/10になるという。QuarkもAtomもいわゆる「System-on-a-chip」設計であり、シリコンの基板上に複数のコンピューター部品が統合されている。

ARMとの戦い

クルザニッチによればEdisonは「開発者向けの製品」であり、彼はこの超小型コンピューターが次世代ウェアラブル端末の核になると考えているようだ。最大のライバルであるARMのCortex Mシリーズ プロセッサも同じ戦略を持っており、Quarkプロセッサはおそらくここからヒントを得て開発されたものと思われる。

Intelにとっては厳しい戦いになりそうだ。ARMはすでにCortex Mチップセットにおいてリードを広げており、最初に発表された2004年から現在に至るまで、すでに数多くの実績をあげているからである。最新モデルのCortex Mは、次世代ウェアラブル端末として昨年話題を呼んだQualcommのToq スマートウオッチにも採用されている。おそらくEdisonの小型化と省電力性はこれに対抗するためのものだろう。

関連記事:クアルコムの「Toq」スマートウォッチが見せるディスプレイの未来

「ウェアラブル端末が普及していないのは、まだ日常生活における問題を解決するような機能がなく、我々のライフスタイルにも上手くとけ込むことができていないからです。」とクルザニッチはCESで語っていた。「我々はこの革新的な工学技術に挑戦し続けます。端末が演算を行ったりネットワークに接続したりするためにはIntelを入れるのが最善であることを目指します。」

CESのkeynoteイベントでIntelはEdisonのデモンストレーションを行い、その可能性を示した。披露されたのは「Nursery2.0」(子供部屋2.0)と名付けられたスマート育児製品シリーズだ。デモンストレーションではEdisonを搭載したおもちゃのカメが赤ちゃんのバイタルサインをモニタリングし、結果を保護者のマグカップにLEDで表示するという事例が紹介された。これ以外にもワンジー(上下一体型のベビー服)にEdisonが搭載され、赤ちゃんの泣き声を感知すると自動的にミルクが暖められるという事例も披露されている。

Edisonを開発者達に使ってもらうために、Intelは「Make It Wearable」というキャンペーンを発表した。参加者にEdisonを使ったウェアラブル製品を開発してもらうコンテストで、詳細はまだ明らかにされていないが賞金合計額は130万ドルであり、最も優秀な製品には50万ドルが与えられるという。

Edisonの具体的なリリース日は明らかにされていないが、クルザニッチは夏までに発売を開始したいと話していた。Edisonがウェアラブル端末の間でどれほど普及するかは分からないが、少なくともIntelは新しいマーケットにおいてARMに対抗する姿勢を強く示したことになる。

画像提供:Intel

Dave Smith
[原文]