他人のツイートを広告に使うのは「有り」なのか?

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CBSが映画評論家のツイートを広告に使用したことが波紋を呼んでいる

先週土曜日、ニューヨークタイムズ紙に映画「Inside Llewn Davis」の一面広告が掲載された。広告の内容は、映画評論家A.O. スコットのツイートを印刷しただけというものだ。

確かにスコットは映画のサウンドトラックを褒め称えるツイートを行っていたようだ。しかし、広告主のCBS Filmsがあたかも本物のツイート画面のように見せかけた広告画像からは、実際のツイートに含まれていた最初の一文が削られている。消されたのは競合作品である「The Wolf of Wall Street and American Hustle」という映画に言及した部分だった。

売名行為としては見事に成功したと言えるだろう。スコット自身も自分のツイートが広告に使われたという事実に驚きを隠せないようだ。驚いたのは彼だけではなさそうだが。

「ツイートが一面広告に使われるとは、マーケティングも随分と斬新な進化を遂げたものだ」

この広告を打ったCBS Filmsの広報担当者グレイ・マンフォードはReadWriteの問い合わせに対し回答を寄せていない。しかし広告が波紋を呼んでいることは認識しているらしく、ツイッターでスコットのリアクションや広告に関する論争をリツイートしたりしている。

ちなみにスコット自身は自分のツイートが広告に使われること許可したのかと聞かれ、「なんとなくした気はする」と答えている。

これは合法なのか?

大手映画会社というものは評論家の発言を拡大解釈することで有名だ。この業界では何か問題があっても秘密裏に解決されることが多い。映画を作るスタジオも映画を評価する評論家も互いを必要としているので、大きな問題に発展することはほとんどないのである。

しかし今回の件はツイッターが絡んでいるため特殊なケースとなりそうだ。ツイッターは、コンテンツの権利はユーザーに帰属すると以前から主張している。

CBS Filmsがスコットのツイート内容の一部分のみを、しかも本人の明確な承認なく利用した事は、ツイッターの広告利用に関する規約に違反していると思われる。

すべての場合においてツイッターのコンテンツは作成者の許可無く以下の用途で使用することを禁ずる

・広告宣伝
・商品やサービスの是認

ツイート内のすべての文字を使用すること。ツイートテキストの編集は技術的又は媒体上の制限による場合のみ編集できるものとする。(例:ハイパーリンクの排除等)

ちなみに問題はこれだけではない。FTC米国連邦取取引委員会もまた、今回のように編集された内容を広告に使用することを認めていないのだ。ただし今回の場合、元のツイートにあった競合作品に関する記述を消したことで、スコットが本来意図した内容を損なったかどうかについては議論の余地があるだろう。

ツイッターのスポークスマンであるジム・プロッサは、同社の規約に違反する個別案件についてのコメントは差し控えると発表した。同時に過去の事例として賃貸物件検索サプリLovelyが技術系記者のアレックス・ウィルヘルムのツイートを無許可で印刷物に使った件を挙げている。

また、広告主がツイッター・ユーザーにツイート内容を広告に使用する許可を求め、きちんと報酬を支払ったケースもある。

ポップコーンの焦げた臭いに対する不満を呟いたトム・ビーロのツイートはPop Secretの広告に使われたが、彼には広告代理店から使用料が支払われた。(ツイッターの利用規約ではツイート作成者の同意を得ることは求められているが、対価を支払うようには定められていない。しかしこのように対価を払って同意を得るというケースはよく見られるようだ)

ツイッター自身も過去に広告で問題を起こしたことがある。自社の広告ツールを宣伝したブログにおいて、実在するユーザ名を使って架空のツイートをでっちあげたのだ。この問題はすぐに発覚し、ツイッターは謝罪するはめになった。

騒動の行方

もしCBSがスコットのツイートをツイッター上の広告で使っていたら問題はなかったのだろうか?実はこれも利用規約に違反する。たとえツイッター上でも、広告主はツイート作成者の許可なしにツイートを広告に利用できないのである。

当人の許可無く他人のコンテンツをTwitter Adsに掲載することは認められていません。使用するツイートやリツイートはすべて事前に作者の許諾を得てください。

当然これは有料広告での使用に限った話だ。CBSが単にスコットのツイートをリツイートするだけなら何の問題もないし、実際にCBSは映画に関する他者のツイートをたくさんリツイートしている。

結局、今回の騒動でCBSはさほど大した反感を買うことはなさそうだ。そもそもスコットは当の映画を気に入っていたのだし、無断でツイートが使用されたことに対しても怒りを感じているというよりは困惑しているだけのように見える。それに本人はあまり明確に意識してなかったようだが、CBSに対して何らかの了解を与えていた可能性もありそうだ。そしてツイッター側には、ニューヨークタイムズに全面広告を出稿するような大企業であるCBSに対し、自社の広告機能を売り込みたいという思惑がある。

今回の件は大きな騒ぎにならないかもしれないが、これだけは覚えておく必要がある。他人のツイートを事前の許可なく広告に利用するのは絶対に「無し」だということである。

画像提供:CBS Films

Owen Thomas
[原文]