「ウェブのビジュアル化」の思いがけない大勝利
百読は一見にしかず。ウェブもアプリもこのトレンドが止まらない
2013年の主役は画像コンテンツであった。自分撮り(selfie)、ミーム(meme)、ピンといった画像コンテンツにまつわる単語は今年一年で一気に広まり、Pinterest、Instagram、Tumblrといったテキストよりも写真を強調するソーシャルサイトが大ヒットした。こうしたビジュアル系サイトはユーザーだけではなく投資家の人気も多いに集め、巨額の企業評価を獲得することとなった。
以前はこの「ウェブのビジュアル化」を一過性のトレンドだと考える人も少なくなかった。その考えが誤りであったことをテクノロジー業界に認めさせる結果となった、今年の主要な出来事を以下に紹介したい。
数十億ドルの買収劇
2012年の初めにフェイスブックが10億ドルでInstagramを買収した際には、多くの人々がザッカーバーグは頭がおかしくなったのだと思った。収益がゼロに近い写真共有サイトにこれだけの巨額な資金をつぎ込むのはとてもじゃないが割に合わないと考えるのが道理だからだ。
しかし今思えば、フェイスブックには先見の明があったことになる。2013年の現在、10億ドルという値段はビジュアル系ウェブサイトの標準価格となっている。今年の5月にヤフーはTumblrを11億ドルで買収したし、2月から10月にかけて行われたPinterestへの投資も、25億〜38億ドルと査定された同社の企業評価を基準に行われている。
長い年月を重ねたテクノロジー企業たちは、この新しいトレンドである「ウェブのビジュアル化」への投資を、企業イメージとユーザー層の双方を若返らせる最適な方法と捉えているのだ。
手軽なモバイル・アクセスが人気
ティーンエイジャーに人気のビジュアル系ソーシャル・ネットワーク「We Heart It」はモバイルからの利用が主流で、一度もデスクトップ用のサイトを訪れたことがないユーザーが2/3を占めるという。「テキスト、画像、動画のうち、作るのも見るのも一番簡単なのは画像です」とWe Heart ItのCEOラナ・エドリンは語っている。「100件のツイートを読むよりも100枚の写真を見るほうがはるかに早いでしょう」
ビジュアル系ウェブサイトの多くは、デスクトップ用のサイトよりモバイル・サイトのほうが洗練されている。最も顕著な例はInstagramだろう。デスクトップ用のウェブサイトはモバイルアプリの基本機能だけを備えた骨組み状態で、トラフィックの大半もモバイル経由となっている。
Pinterestに至ってはデスクトップ・サイトをほったらかしてiOSアプリばかりを優先的にリニューアルしている。同社のスポークスマンによると、トラフィックの75%以上がモバイルからのアクセスであるらしい。
若くてお洒落なユーザー達
モバイルのユーザーには若い女性が多い。Pew Internet and American Life Studyの調査によると(他の似たような調査でも同じ結果だが)、モバイルのみでインターネットを利用すると答えた回答者のほとんどが若者と女性だった。
Pinterest、Instagram、Plyvore、あるいはこれらの競合コンテンツのいずれにおいても、最近のビジュアル・コンテンツが若い女性と彼女達の興味に牽引されているのは明らかだ。しかし「鶏と卵」の問題ではないが、ビジュアル系ウェブサイトは本来若い女性のために作られたものではない。
Pinterest(ちなみに創設したのは3人の男性)の内容がショッピングやデザインに特化していったのは、初期に使い始めた若い女性達が自分たちの趣味嗜好を反映させていった結果に過ぎないのだ。今日我々が「ウェブのビジュアル化」と聞くと若い女性を連想するのは、彼女達がこうしたトレンドの仕掛人になったからに他ならない。
今年、老舗のテクノロジー企業はティーンエイジャーやさらに若年のユーザー層に対するアピール力を高めるため、積極的に「ウェブのビジュアル化」への投資を行った。フェイスブックがInstagramを買収したのもヤフーがTumblrを取り込んだのも、こうした理由によるものだ。もしどこかの財力に余裕のある企業がPinterestを買収したとすれば、その目的は女性や若者のユーザーを取り込むことだと思って間違いない。
保証された収益プラン
広告主がビジュアル系ウェブに集まってくるのには理由がある。サイト全体がビジュアル化されているために、他のフォーマットで構築されているサイトよりもはるかに違和感なく広告を表示し、利益を生み出すことができるのである。フェイスブックは自動再生動画広告がユーザーからの反発を受けて苦労しているようだが、もともとビジュアル化されているウェブではもっとスマートに広告との共存が可能なのだ。
Instagramがイメージ・フィード内での広告表示を開始した当初、ユーザーは広告に対して否定的な反応を示していたが、今ではむしろ喜ばれているようだ。Curalateによれば、Instagram上の広告画像に対する「like」は、他サイトに比べて32倍も多いという。同じことがTumblrでも起こっている。広告を開始した当初はユーザが激怒し反発していたが、今ではすっかり通常の画像と同じ扱いを受けるまでに馴染んでいるのである。
Pinterestは今年、広告をより目立たせる実験を繰り返してきた。そもそも掲載された写真の大半がどこかの商品の紹介であるため、広告の商品だけを目立たせるのに苦戦しているようだ。通常のサイトでは広告が目立ちすぎるという苦情がユーザーから寄せられるものだが、Pinterestは逆にどうやって広告を目立たせるかが悩みの種なのである。
ユーザーがビジュアル系サイトをオンライン・ショッピング目的で使うケースも増えてきている。Waneloは特に広告を出していないが、ユーザーがこのサイトを経由して何かを買ったときにはその収益が分配されるアフィリエイト・リンクによって利益を生み出している。
これまでにも、大量の画像を短時間で読み込んで表示するという技術自体はすでに存在していた。2013年になって突然画像がテキストを凌駕するトレンドが巻き起こったのは、利便性、話題性、収益性の全てが完璧に組み合わさったおかげである。
「ウェブのビジュアル化」のトレンドはまだまだ終わらない。メジャーなビジュアル系サイトにとって、2014年はますます増えるであろう競合サービスのなかで、いかにしてその地位を保っていくかが焦点となるだろう。
トップ画像提供:QThomas Bower(Flickrより), CC 2.0
Lauren Orsini
[原文]