モバイル・トレンド2013 トップ11
ウェアラブル! Smart Bluetooth! 大型スマートフォンカメラ! ベータ版OS(とそれが招いた混乱)など、2013年のモバイルを振り返る
2013年のモバイル業界はここ数年に続いて大きな動きがあった。
スマートフォンは私たちの生活全体をコントロールするハブとなるための第一歩を踏み出した。企業は従業員がより効率的に働けるようにモバイル端末利用戦略を向上させた。ウェアラブル・コンピューティングは現時点では未成熟だが、2013年はコンピューターが私たちの普段着の一部となる将来を予感させる最初の年となった。一方、主要なモバイル・プラットフォームは成熟期をむかえ、他商品との特徴差を明確に出すには相応の努力が必要になってきている。ユビキタス・コンピューティングの世界は活気に溢れている。
今年のモバイル業界のトレンドを一気に振り返ってみよう。
無線通信技術の力
今年の2つの技術はスマートフォンが次の段階へ進むために必要不可欠なものになるだろう―Bluetooth Low EnergyとWi-Fiダイレクトだ。
アップル、グーグル、マイクロソフトの3社ともモバイルOSを最新型のWi-FiダイレクトとBluetoothに対応した。これにより新しいタイプのアプリケーション、機能性、周辺機器への扉が開かれた。この扉の先でスマートフォンはコンピューティング世界へのハブとしての機能を持つだろう。それもすべてスマートフォンのバッテリーを浪費せずに様々なガジェットからガジェットへ通信できるおかげだ。
例えばiOS7ではBluetooth Low Energy (通称Bluetooth Smart) により、デベロッパーとハードウェアメーカーがスマートウォッチのようなエネルギー効率の優れたアクセサリを開発可能になった。アップルもWi-FiダイレクトのP2P通信を使用し他のスマートフォンとファイルを直接シェアする機能AirDropを開発した。
Androidは7月のバージョン4.3 (Jelly Bean)でBluetooth Smartの最新機能をいくつか採用した。このような性能を活かして、Galaxy Gear、Qualcomm Toq、Google GlassヘッドセットといったAndroidアクセサリが群れをなして市場に突き進んでくるだろう。連携デバイスの次なる流行は、こういった無線通信規格によって形成されるだろう。
上昇傾向のウェアラブル端末
2013年はデバイスの新しいカテゴリが誕生し普及し始めた年でもあった。ウェアラブル端末だ。
今年、マスマーケット向けのスマートウォッチが初めて発売された。Galaxy Gear、the Pebble、Qualcomm Toqだ。Google Glass(グーグルによるインターネットに接続したゴーグル型デバイス)は、たった数千人しか実物を使用していないにも関わらず、通年人々の興味の的であり続けた。また、Nike FuelBand and FitBitのようなフィットネス・トラッカーは今年、一般消費者層で(つまり早期採用者層以外にも)ヒットした。
アップルとグーグルも独自のスマートウォッチを開発しているとの噂が絶えない。アップルもグーグルもそれぞれスマートウォッチの構想を示す特許を申請済みで、来年の今ごろまでには製品化し市場に出回るかもしれない。
2013年はスマートウォッチの年とまでは言えないものの、2014年から先に登場する多くのウェアラブル端末にとって、よきスタート地点だったと位置づけられる。
各キャリアがプランを変更
今年、T-Mobileによってアメリカの消費者がスマートフォンを買う方法が変わった。この功績は少なくとも表面上は褒賞ものだろう。
まず、2年キャリア契約が廃止された。そのおかげで消費者は年に2回のアップグレードが可能になった。つまり、T-Mobileはデバイス料金を月分割支払いにする選択肢を消費者に与えることでヨーロッパ的手法を取り入れた。2007年のiPhone発売以来スマートフォンの売り上げを支配していた一括払い2年契約モデルに対して、表面上は鋭い衝撃を与えたわけだ。
T-Mobileは自社の方式を「アンキャリア」と称した。約1週間でその言葉は事実だと証明された。Sprint、Verizon、AT&Tが即座にT-Mobileの新契約方式と月分割支払いプランを真似て採用した。だが結論から言えば、こういったプランで消費者の経済的負担はあまり軽減されておらず、顧客はいまだに2年契約に縛られている。
とは言っても、スマートフォン購入者にとってデバイス、アップグレード、今年から変わった契約方式と、選択肢が豊富になっているのは間違いない。
モバイル端末の低価格化
アップルはスマートフォン戦争の中、もはやゴールド・スタンダードだ。文字通りiPhon 5Sのゴールドバージョンも発表された。アップルはまだ例外だが、今年の原則としてモバイル端末は低価格化している。
iPhoneの基本価格は2007年の発売以来ほとんど変わっていない。新型のiPhone 5Sはあなたに(あるいはあなたのキャリアに)ベースラインとして649ドル要求する。iPhone 5Cは549ドルだ。だがアメリカの消費者はキャリアの販売助成金によって5Sを199ドル、5Cを199ドルで入手できる。しかしデバイス自体が値下がりしているわけではないのだ。入手可能な最安のiPadはまだ499ドル、iPad Miniの初期販売価格は399ドルだ。しかもストレージ(あるいはiPadのセルラー機能)を追加すれば簡単に価格がつり上がってしまう。
しかしながら、モバイル端末全体の平均価格は下落し始めている。International Data Corp (IDC) の報告では今年のスマートフォンの平均価格は337ドルで、2012年の387ドルから下がっている。2017年までに平均価格は265ドルまで下がるとIDCは予想している。
私たちは世界市場における低価格化のパワーを目にしてきた。今年スマートフォンは10億台近くの売り上げが見込まれる。グーグルとLGによる新型のハイエンドモデルNexus 5は349ドル。Motorolaの新型Moto Gは179ドル。これらは高品質スマートフォンがIDC調べの平均価格と合致、あるいはより安値で販売されていることを示す好例だ。サムスン、ZTE、Huawei、Nokiaといったメーカーは低価格スマートフォンを世界市場に意図的に送り込んでいる。グーグルはNexus 7の価格設定を229ドルで押し、アマゾンはKindle Fireを169ドルから379ドルのモデルで展開している。この先、タブレット端末の価格も低下していくだろう。
携帯電話の多様な形状、サイズ、価格
大手メーカーはより広いラインナップを用意するようになった。例えばNokiaはWindows Phone採用のLumiaを発売し、比較的小さく低価格な機種(Lumia 520 価格99ドル)と高機能で画面の大きい機種(6インチ型Lumia 1520)と超個性的機種(41メガピクセルカメラ搭載のLumia1020)を展開している。スマートフォン商戦はもはや最上位機種の争いに留まらない。多様なラインナップを展開することで、メーカーはより限定的でニッチな需要に働きかけることができる。
様々な意味で、このトレンドの中心にいるのはサムスンだ。2011年、サムスンはGalaxy AceからGalaxy Z まで21モデルのGalaxyデバイスを発売した。その後もサムスンはほとんど勢いを落としていない。2013年には23モデルのGalaxyフォンを発売、最上位機種Galaxy S4は4つの異なるバージョンを展開している。
他の企業はサムスンの手法を分析し、これに追随した。アップルもある程度はそうだ。今年のiPhoneは5Cと5Sの2モデル展開。1年に1モデルの慣例が初めて破られたわけだ。
iOS7の口コミ型流行
アップルは最新版のiOS(iPhoneとiPadを動かす基本ソフト)を6月のWorld Wide Developer Conferenceで発表するのが通例だ。iOSはまず各デベロッパーがアプリ開発する時間を設けるためベータ版が先行してリリースされ、正式版のリリースはその年の後半にアップルの新ガジェットが発売した後になる。(例えば、iOS7はiPhone 5S発売の1週間後リリースした)
これまでiOS7をダウンロードしていたのはモバイルアプリケーション開発者がほとんどだった。しかし今年はその傾向に大きな変化があった。ReadWriteの今年特に人気を集めた記事は「iOS7 Betaのダウンロード・インストール方法」で、その少し後には「iOS7 BetaをiOS6にダウングレードする簡単な方法」がトップ記事となった。
これらの記事は開発者向けのクイックガイドとして掲載したつもりだったが、iOS7を試したい一般消費者を多数惹きつける結果となった。ネット上にはベータ版へのアクセスを販売するサイトが突如氾濫し、iOS7の一般向け発売より前に何十万、あるいは何千万もの人がベータ版を使っていたと思われる。
結果、このような拡散現象はアップルとiOS Betaにとってかなりの大問題であることが明らかになった。ベータ版OSは一般大衆向けに公開しているのではない。バグがあったりクラッシュを引き起こしたり、やたらとバッテリーを消費したりで通常使用が難しくなるからだ。iOS7は新導入の「フラット」デザインと1,500の新アプリケーション・プログラミング・インターフェースにより、2007年から続くiOS史上で最大の跳躍を遂げた。
ソフトウェアテスト・サービスuTestによれば、iOS7は前のベータ版の2倍近いバグを抱えていたそうだ。一般のユーザーがベータ版に手を出したことで、デバイスのトラブルシューティング・スキルを持たないユーザーが多数バグに悩まされた。
ベータ期間終了後、一般発売時にアップル社自身もiOS7が抱えるいくつかの問題(iMessageのバグといくつかのセキュリティー問題)に直面した。その要因はまたしてもiOS7の人気、そして初日からあらゆる互換デバイスに対応させるアップルの独自戦略にあった。それはアップルにとって名誉であるが、いまや悩みの種でもある。
この出来事でiOSが人気デバイスに搭載されているだけの無個性OSではないことが明らかになった。iOSは新要素もバグもすべて含め、テクノロジー文化のメインストリームの一部だ。
成熟したAndroid
グーグルは年に数回Androidのアップデートで機能を加えバグとセキュリティーホールを修正するのが通例だったが、そのアップデート間隔が長くなった。2012年6月のJelly Bean 4.1から2013年10月のKitKat4.4までの間隔は、グーグルが新ネームのAndroidをリリースしない期間として最長となった。(その間グーグルは2回Jelly Beanのアップデート(4.2と4.3)を行った)
グーグルのAndroid開発者たちは(iOSやWindows Phoneといった)他の主要モバイルプラットフォームに並ぶレベルを達成したと自負している。Jelly Bean 4.3リリースでの変更点はいくつかのユーザー向け機能とデベロッパー向け機能の統合で、Bluetooth Smartなどが統合された。Androidのアップデート内容はより小さく、更新間隔はより長くなってきている。
グーグルはAndroidのそれ以外の側面にも注意を向けた。今年5月、グーグルが発表したのはAndroidの新型ではなく、デベロッパー向けの新ツール群だった。様々な通貨への対応と翻訳サービスなど、デベロッパーたちが開発するAndroidアプリでもっと儲けようという狙いだ。また、グーグル独自の統合開発環境Android StudioがGoogle I/Oで発表された。10月にはKitKat 4.4がリリースされ、Androidは様々なハードウェアプロファイル上でぐっとスリムに動作可能になった。
Windows Phoneが第3位を主張
2013年の始め、正式名称Research In Motionとして知られた企業がBlackBerryに改名した。同社はBlackBerry 10をリリースし、古いOSに待望のアップデートが施された。その時点では、AndroidとiOSに次ぐ第3のOSはBlackBerryとWindows Phoneのどちらか、という問いは非常に妥当なものだった。
BlackBerryを選んだ人は自己を偽っているところがあった(筆者もそうだった)。BlackBerry 10は失敗に終わり、秋には身売り先を探し始めるありさまだった。
そうこうする内にWindows Phoneは(iOSとAndroidにくらべれば微々たるものだが)着実に成長していた。より広い特許ポートフォリオを目指すNokiaの奮闘に加え、Image SDKなどの新しい開発ツールを特色とした性能もあり、Windows PhoneはFirefox OS、BlackBerry、その他新興勢力を退け、第3位を主張できる存在となった。
マイクロソフトはWindows Phoneに力を入れる方針だ。Nokiaのデバイスおよびサービス部門の買収に費やした74億ドルがその一例だ。近い将来、Windows Phoneは市場で地位を確保し、ひとつのユーザーベースを形成することができるだろう。
エンタープライズ・モバイル2.0の始まり
2007年7月(iPhoneの発売)をスマートフォン革命と位置づけるならば、私たちはモバイルによる消費行動変化の6年生ということになる。大企業にとって、モバイルがもたらす変化はまだほんの始まりとしか感じられていない。
企業にとって、モビリティといえばBlackBerryとラップトップの同義語という時期がかつてあった。当時の課題はそういったデバイスのセキュリティー向上と、従業員がどこにでも行けるようにすることだった。現在も同じようなもので、デバイスがAndroidとiPhoneとタブレットに置き換わっただけだ。エンタープライズ・モバイル1.0は本質的にそういうものだった。要はセキュリティーと個人用デバイスの携行性だ。
企業の反応は消費界全体から見て非常に遅い。決定を下し予算を組むまでの手順と方法が古いのだ。6週間、あるいはかかっても6か月というような事柄に18か月から36か月も費やしてしまう。技術採用も例に漏れず遅い。昨年、IBMのモバイル・エグゼクティブとこんな冗談を言い合った。「エンタープライズ・モバイルはバージョン1.5で、採用と最適化のどこか中間にある」
エンタープライズ・モバイル2.0の主要素は採用・効率・最適化・生産性だ。 デバイスとアプリのセキュリティー対策の次に、多くの企業は事業のニーズに合致する一側面に注目した。経理、販売、マーケティング、CRM(顧客関係管理)、コンプライアンス、従業員管理、IT、その他様々な部門のモバイル化が進んだ。2013年、私たちはモバイルの利便性を導入した事業が拡大し始めるのを目の当たりにしている。企業は現在、単一のモバイルソリューション(例えばCRMアプリ)に限定せず、多数の部門に対応するモバイル環境を整備している。
モバイル戦略を推し進めているのはテクノロジー関係の大企業だけではない。乗り遅れた企業も多少はあるが、様々な分野の大企業にモバイル導入の動きがある。ヘルスケア、銀行業務、運送、政治、自動車関係、テレコミュニケーション、保険といった分野はますますモバイル化が進んでいる。これらの分野は顧客中心のアプリ、クラウド環境の向上、この先10年のモバイル革新に順応していく開発プロセスをもって、横断的能力の向上につとめている。
ストリーミング・アプリとテレビ接続
2013年初頭、HTCとサムスンはそれぞれの最上位機種スマートフォン(HTC Oneとサムスン Galaxy S4)に赤外線機能を搭載することを発表した。赤外線を使うことでテレビリモコンとして機能し、他の古いリモコン対応機器も操作できる。これが今年の一大流行の始まりだった。
年の後半、グーグルはテレビに取り付けることでYou Tube、Netflix、グーグル Playストアの映画と音楽を再生できる小型装置Chromecastを発表した。ChromecastはAndroidやiPhoneをリモコンにして操作できる。人気ストリーミング・ボックスRokuもスマートフォンで操作するためのアプリをリリースした。
RokuもChromecastも多くの点で業界全体の流れに乗っていると言える。アップル TVもそうだが、スマートフォンやタブレットで再生しているものをテレビに映し、スマートフォンをリモコンにして操作するスタイルだ。
スマートフォンカメラの年
モバイル端末メーカーは一昨年から昨年にかけての困難な現状を正視しなければならなかった。何らかの売りになる特色やギミックがなければ、新型の上位機種スマートフォンを成功させるのは難しい。自然なモバイル・コンピューティングの拡張で目を引くギミックを作る手段が尽きつつある問題にメーカーは直面している。
スマートフォンの音声操作はアップルのSiriによって一般的になった。ジェスチャー・コンピューティング(手振りによる操作、タッチ操作とも)は興味深く、かつ発展途上だ。しかし以前のようなセールスポイントにはならない。消費者は以前ほどスピードとフィード(あるいはデバイス内部のハードウェア)を気にしていない。
離れていく消費者の関心を取り戻す手段として、各メーカーはスマートフォンの最もよく使われる機能を高め、それを売りにするようになった。カメラだ。
今年発表された主要なスマートフォンはいずれもカメラ機能を刷新しアピールしている。BlackBerry社はまずBlackBerry Z10の編集ツールに写真内の動きを取り消す機能をつけ、さらにシェア機能を新しく追加した。そしてHTC Oneは「ウルトラピクセル」を導入。サムスン Galaxy S4の13メガピクセルカメラは多数の機能とモードを備え、ReadWriteの紹介記事ではカメラの解説がほぼ半分のスペースを占めた。
Moto Xは光学性能を強化し、ジェスチャーによる「クイックオープン機能」と10メガピクセルカメラを備える。iPhoneのカメラも口径を大きくして光学性能を大幅にアップグレードした。概して、今年スマートフォンのカメラは大幅に進歩し、メーカー間の広告・マーケティング戦略における第一争点となった。
こういったスマートフォンカメラ革新の流れにあって、一歩リードしたのはNokiaだ。このフィンランドのメーカーが発売したLumia 1020は41メガピクセルカメラを搭載し、優秀な光学性能とそれを操作するソフトウェアを備える。Lumia 1020のようにカメラが上位機種スマートフォンのセールスポイントとなる例は今までなかった(もっとも、カメラ抜きで評価しても水準を満たしているが)。2013年がスマートフォンカメラの年だったとするなら、Nokiaこそベスト・モバイルカメラに相応しい。
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Google Glass画像:Google
サムスン S4発表、Nokia Lumia 1020カメラ、Lumia 1520、Galaxy Gear、AndroidとKitKatとキャンディーの画像: Dan Rowinski for ReadWrite
Dan Rowinski
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