10月20日に発売されたKakuno。ペン先がF(細字)とM(中字)の2種類。それぞれキャップが6色あります(本体は全て同じ色です)

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10月20日に発売された「Kakuno」という万年筆が文房具好きの間で話題となっています。かくいう僕もすでに2本を購入し、おそらくこの記事が掲載されている時には3本目、ひょっとしたら4本目を買っていることでしょう。

いったいどこがそんなにいいのか。レビューしていきたいと思います。

まず、Kakunoのいいところは、ずばりかわいいところ。ペン先には顔のマークがあり、かわいいのです。カラフルなキャップと合わせて、持ち歩いているだけでうきうきします。思わずキャップ違いをそろえていきたくなるのですね。

しかも、安いのです。子供向け、入門向けだけあって、1000円となっています。でも1000円と侮るなかれ。売り場にいた方いわく、同じPILOTのcocoonという3000円する万年筆と同等のペン先とのこと。これだけでもかなりお得なのがわかるでしょう。実際、書き味は申し分ありません。

そして、1000円という価格でありながら、コンバータを使ってさまざまなインクを使えるところも大きいのです。

万年筆のインクには大きくわけると、中にインクが詰まったカートリッジを装着して書くものと、インク瓶からインクを吸い上げて補充して使うコンバータ式とがあります。Kakunoでは別売りですがコンバータを装着して好きなインクを使うことができます。つまり、今までに発売されているあらゆる万年筆インクの中から、好きな色を選んで使うことができるのです。しかもこの価格で! これが何よりも大きいのですね。

この低価格で色々遊べて、書き味も心地よく、しかも(低価格なので)ある程度乱暴に扱ってもそれほど心が痛まない。何より持っていてうきうきする。まさに入門用としてはパーフェクトではないでしょうか。というわけで、色々な色のインクを詰めたKakunoを複数本持つ人が増えているのです。

■Kakunoを買う時に覚えておきたいこと

Kakunoは万年筆です。そして、万年筆はペン先(ニブと言います)の材質によって大きく異なります。具体的には金を使っているか、ステンレスを使っているかですね。ペン先がインクで腐食しないように、金などを使っているのです。

金を使っているものは、弾力があり、しなります。今年大きく話題になった万年筆の動画で使われているのは、特別に弾力に富んだものです。

一方でKakunoで使われているようなステンレスのものは、ここまでの弾力はありません。なので、この動画にあこがれてKakunoを買っても同じことはできないということに注意しましょう。

Kakunoはキャップの色が違う他に、ペン先によって二種類に分けることができます。ペン先が「M」と「F」です。これはペン先の太さを表しています。

万年筆は細い方から順番に並べるとこのようになっています。

EF(極細)<F(細字)<FM(中細)<M(中字)<B(太字)<BB(極太)

手帳などに細かく書きたい人はFを、ノートなどにすらすら書きたい人はMを選ぶといいでしょう。

ちなみにこの太さですが、国産の万年筆と海外製の万年筆とでは同じ表記でも若干異なります。日本製の万年筆では、海外のものと比べると同じ太さでも一段階以上細くなっていると考えるといいでしょう。

これはアルファベットなどを書くことが主体の海外製に対し、画数の多い漢字を書くことがメインとなっているため、細くして漢字を読みやすくするようになっています。

参考までに手持ちのドイツ製万年筆LAMY SafariのEF(極細)と、KakunoのF(細字)とM(中字)とで書いてみた写真を用意しました。使っているインクのせいでもあるのですが、KakunoのFがSafariのEFよりも細いのがよくわかっていただけるのではないかと思います。ちなみに個人的にはKakunoの場合はMの書き味がお気に入りです。FよりMの方がインクが多くでるので、よりぬらぬらと書けるのです。

インクは、CON-20とCON-50というコンバータを使うことができます。個人的にはバネ式のCON-20よりも、回転式のCON-50がオススメです。くるくると回しながらインクを吸入するのが、何となく落ち着くのです。このカートリッジと、PILOTの色彩雫シリーズの好きな色を合わせて使うのが特に人気の高い組み合わせとなっています。もちろん、PILOT以外の他社のインクもコンバータなら使うことができます。

また、カートリッジは推奨されているPILOTのカートリッジインキ4色(ブラック、ブルー、ブルーブラック、レッド)の他に、カラーインクカートリッジ(ブラック、レッド、ブルー、グリーン、バイオレット、ピンク)も使うことができます。また、まだ自分では試せていないのですが、こちらのカクノにペチットインキでカクノ。(趣味と物欲)によれば、ペチット1のインクも使うことができるそうです。

あとは、紙によってはにじんだり裏写りすることがあるということは覚えておくといいでしょう。できれば、普段書いている手帳に直接試し書きをさせてもらった方がいいです。ちなみに現在の個人的なお気に入りは、Campusノートです。これが実に書きやすいし、お値段も安いし、アイデア帳としてもりもり使っています。

■万年筆のメリットとデメリット

そもそも万年筆を使うメリットは何でしょうか。今の時代はボールペンの方が何かと便利だったりします。紙との相性もそれほど気にしなくていいし、裏写りしにくいし、インクを乾かさなくていいし、メンテナンスをしなくてもいいし、力一杯書くことができるし。油性ボールペンだと書き味が悪いという話も、JetStreamのようなボールペンの登場によって過去のものとなりつつあります。

逆に言うと、万年筆はにじまないよう裏写りしないよう紙との相性をきちんと考えなければならないし、書いた後にはインクが乾くのを待たなければならないし、メンテナンスをしなければならないし、ペン先はわずかの衝撃で調子が悪くなってしまうし。純粋な使い勝手で言えば、ボールペンの圧勝でしょう。

それでも万年筆を使うメリットがいくつかあるので、文房具好きの間では筆記具の王様のような扱いとなっているのです。

まず万年筆では、線に強弱を付けることができます。書いた線に個性が出るのですね。画一的なボールペンより、強弱がある線の方が字がうまく見えるというメリットがあります。

また、浅い角度や軽い筆圧で書けるというのもメリットでしょう。立てて書くボールペンに比べ、ペンを寝かせた状態で書いていきます。また、軽い筆圧でもすらすらと書けるので、たくさん書いても疲れにくいのです。いわゆる「書き味がいい」ということですね。

あとは使い続けるとだんだん手になじんでくるということもあります。ずっと書いているとペン先が使用者にあわせて少しずつ削れていき、快適に書けるようになるのです。この「育てる」という感覚がまた楽しく、愛着が沸く要因となっています。

手書きで何かするということが少なくなりつつありますが、何だかんだとまだまだ多いのも確かです。どうせ書くなら、心地良い方がいいでしょう。今までに使ったことがない方も、この機会に万年筆を使ってみませんか。きっと書くことが楽しくなると思います。

来年の手帳はKakunoで書く、と決めるのもいいかもしれません。一年間使うと、もう手放せなくなるぐらい愛着がわいていることでしょう。Amazonでも買えるようになりましたし、これからの季節、子供へ、もしくは自分へ向けてKakunoをプレゼントしてみるのはいかがでしょうか。
(杉村 啓)