公式動画から、大空を舞うアマゾンのドローンの勇姿。微笑みながら空を飛んでいるように見えるので、不敵な感じがします。

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アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは12月1日のTV番組「60 Minutes」で、注文から30分以内に荷物を配達する新プロジェクト「Amazon Prime Air」を発表した。

30分!  容量の大きいゲームや映画のソフトなら、ダウンロードするよりも早いかもしれない。それに配達するのは人間じゃない。8枚のプロペラで飛ぶ小型の無人機(UAVまたはドローンと呼ばれる)だ。ドローンが倉庫からブーンと家の軒先まで飛んできて、荷物を置いていく(動画)。未来だ!

とはいえ、来週からサービス開始というわけにはいかない。早くても4、5年後になる予定だ。障害は技術よりも法律にある。アメリカでは米連邦航空局により、無人飛行機の使用が認可制になっている。認可は警察や消防などの公共性や緊急性が高い業務が優先されており、一般的なビジネスで使用できるのは早くても2015年9月からになる。

アマゾン以外の企業もドローンを利用する準備を進めている。宅配ピザチェーンの「ドミノ・ピザ」がキャンペーンとして使用したことがあるし、オーストラリアの企業は教科書を配達する仕組みを、イギリスの和食チェーン「Yo! Sushi!」では寿司などの日本食をドローンで運ぶサービスを開発している(プロペラがジャマしてすごく取りにくそう)。

日本ではどうだろうか? 日本産業用無人航空機協会(JUAV)のホームページには、こう書いてある。

皆さんは、実は日本が隠れた無人航空機大国なのを御存知でしょうか。

知らなかった! JUAVによれば、既に日本では2000機近い無人航空機が飛んでいる。日本における導入は水田に農薬を散布するための無人ヘリコプターがきっかけで、この分野では世界を先行しているそうだ。農業利用のほか、地滑りや噴火などの自然災害の観測や、震災のときの調査(ただし米軍装備だった)に活用され、領土問題が起きている地域の監視に使う計画もある。

だからといって、日本ですぐにドローンでの宅配サービスが始められるかと言えば、それは難しそうだ。国土交通省が定めている航空法は、有人の航空機が前提になっている。全部で百六十二ある条文のうち、無人航空機に関する記述は第八十七条ひとつだけ。その内容も国土交通大臣の許可が必要、という程度で実質ルールは無いに等しい(現在JUAVが推進している民間活用は、経済産業省や農林水産省と協議の上で自主的に決めた安全基準を元に運用されている)。

自衛隊への無人偵察機導入計画に合わせて、無人機運用を前提とした新しい航空管制ルールを2014年度中に策定する計画もあるものの、商用利用が考慮されるかどうかは不明。いろんな省庁がからんでいるから時間がかかりそうだ。

たとえ許可が出たとしても、懸念も多い。宅配サービスとして見れば、自分以外の他人でも受け取れそうだし、誰かに打ち落とされたりしないかも心配だ。故障して落ちてきても危ないし、逆に飛び上がり過ぎて有人航空機と接触したら大事故になるかもしれない。宅配以外にも、爆弾を積めばテロ、ビデオカメラを積めば盗撮と、悪用の幅も広い。

実用段階に入れば、さらに予測不能な問題が起きるだろう。もしかすると、たまに見かける無人レジのように、近くに人間がついてなくてはいけなくて、思ったより便利じゃないかもしれない。それでも、この発表はすばらしい。

ジェフ・ベゾスCEOの発表を受けて、国際無人機協会の広報担当者ベン・ギーローは「アマゾンの発表は、テクノロジーがいかに生活を豊かにしうるか、人々が理解する助けになったと思う。今は理解できないとしても」とコメントした。なんだかよく分からないけど、すごいテクノロジーで世界が変わる。そう信じられたのは久しぶりだ。(tk_zombie)