「にゃんぱすー」流行り過ぎだろう……『のんのんびより』は田舎の女の子たちを描いたアニメ、なのですが、この中毒性は一体なんなのだろう?

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流行語大賞にあわせて、「ネット流行語大賞」「アニメ流行語大賞」というのが裏でひっそり行われています。
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アニメ部門一位はにゃんぱすーでした。

「駆逐してやる」はまあわかるよ。
でも「にゃんぱすー」は、元ネタ知らなくても知っていても、全く意味がわからない。
正直、元になっている『のんのんびより』をマンガで最初から追い続けている熱狂的ファンの僕でも「それなの?!」と驚きました。

まず意味を説明します。
「にゃんぱすー」とは、アニメ『のんのんびより』でれんげという一年生が作った挨拶。
『アラレちゃん』の「おはこんばんちわ」みたいに、いつでもつかえる造語です。
そして…………えっと、それだけです。

コミックスでは最初に出てきた以外、ほとんど出てきません。
だから、多分この結果に一番驚いているのは作者なんじゃないかなあ。
アニメスタッフがファンの人気を汲み取ったからなのか、アニメ本編で「にゃんぱすー」の回数増えています。

『のんのんびより』とは田舎で暮らす女の子たちの日常を描いた物語。
田舎の背景描写には目を見張るものがあります。
しかし、本質は、「田舎を描くための作品」ではありません。

『ゆゆ式』や『きんいろモザイク』や『ゆるゆり』のような、女の子が狭い空間でだべって、幸せな時間を過ごしているまったり感を味わう作品に限りなく近い。
一方『銀の匙』や『南国トムソーヤ』や『ばらかもん』のように、田舎を通じて、人間の成長を表現する作品と、根本的に違う。田舎であることから歪み苦しんだ『惡の華』とは対極です。
両者の一番の違いは「成長してどうなるかという未来像・現実味があるかないか」。
『のんのんびより』は、将来とか考えている空気全くないです。田舎の本当にきつい部分はスポイルされています。
彼女たちは、瞬間を楽しんでいるだけです。

「田舎」というキーワードを「部活」に変えてみるとわかります。
大きな教室=田舎で、キャラはほぼ女の子しかいない。
女の子を描くための舞台として「田舎」がちょうどよかった。

『のんのんびより』が、具体的な地域性を排除したことからもわかります。
住んでいる地域、矛盾だらけなのです。
新幹線で6時間かかる場所となると中国地方か東北か。雪も降るし猛暑もやってくる。北か南か分からない。
雪がふるのに瓦屋根だ。柿もみかんも稲も野菜も作るし牛もいる。
どこなんだここ。
作者は一巻で明らかにしています。

「この作品、舞台が田舎ということで自然物がけっこー出てきます。どこかの町を舞台にしたというわけではなく、自分の家周辺や、ばーちゃんじーちゃんしの記憶からひっちゃかめっちゃかとりだしただけだったり」

究極の「田舎」のようななにかを作りました。
たととえば「『ゆるゆり』のごらく部って何なんだよ!」とか疑問を抱いても、「まあいいじゃん」と切り捨てる。外界から隔離して幸せ空間を保護する。これと同じです。
田舎である、というのは物理的に外界と隔離できるので、非常に便利。
玩具にあたる大自然もふんだんに有るので、いくらでも遊べます。
「田舎っていいね」作品ではない。
「『田舎』という空間で、女の子たちが楽しそうに遊んでいるのを眺められるって楽しいねいいね」作品です。

キモになるのが、唯一の男子、お兄ちゃん。
普段は4人の少女がワイワイやっている。お兄ちゃんはいるのにまったくしゃべらない、相手にされない。変な立ち位置です。
限りなく「壁」「観測者」に近い。

「女の子空間」作品は、麻薬性は高い。女の子空間は大抵「男性」お断りなことが多い。
しかしお兄ちゃんが観測者として入り込んだことで、自分たちも彼女らを見守れる、幸せの一部を享受できるような錯覚を作っています。
ぼくらでも幸せ空間を共有できるんじゃないか?

そこで「にゃんぱすー」が、幸せを共有する単語(『のんのんびより』的なものが好きな人ですよという合言葉)として定着しました。
ニコニコやTwitterを中心に、「にゃんぱすー」を探すとわんさか出てきます。検索してみると多様で面白い。
にゃんぱすーって言えば、『のんのんびより』的幸せ空間に逃避できる、魔法の言葉。
疲れた時に唱えてみよう。気恥ずかしさが気持ちいい。
今となっては本来の意味を離れて「にゃんぱすー」がひとり歩きし始めています。まあ、そういうのが「流行語」ですよね。

「にゃんぱすー」っていうだけで幸せになれる、気がするアニメ、のんのんびより。
オススメです。にゃんぱすぅ。
あ、ぼくは発育のいい小学五年生の蛍派ですので。

『のんのんびより』BD1巻

(たまごまご)