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IDCによると、今年のスマートフォン出荷台数は全世界で10億に達する見込みだという。

ユビキタス・コンピューティングが世界に広まろうとしている。スマートフォンの普及が急激に高まりつつあるのだ。

IDCの調査「World Wide Quarterly Mobile Phone Tracker」によれば、今年はスマートフォンが10億台出荷される見込みだという。スマートフォンの出荷は2012年比で39.3%増となり、この成長傾向はしばらく続きそうだ。2017年には17億台もの出荷が予想されている。

このニュースは、先進国に住む消費者にとっては少々意外かもしれない。アメリカではすでに何年も前から誰もがスマートフォンを使っている。しかし、アメリカでは消費者に端末を買わせるために多額のマーケティング資金が使われ、新しい端末が手頃な価格で購入できるようにキャリアの補助金モデルなどが存在している。これは、世界の経済においてはかなり特殊な環境なのだ。

アメリカを除いた世界のほとんどの地域では、スマートフォンの普及率はその値段と明確に比例している。価格が安ければ安いほど、後進国の消費者がスマートフォンを購入する可能性は高まるのだ。IDCによると、2012年に387ドルであったスマートフォンの平均価格は今年になって337ドルまで下がり、2017年にはさらに265ドルになると予想されている。この価格はキャリアの補助金を含まない、本来の端末価格である。

アメリカの消費者は、端末の価格についてあまり意識することはない。AT&T、Verizon、Sprint、T-Mobileといった各キャリアと2年契約を結べば、端末の価格は大体99ドルか199ドルになるからだ。さらに端末代金を一括で払いたくない消費者のために、各キャリアは2年間の分割払いプランを用意している。

Moto Gを紹介するモトローラCEOデニス・ウッドサイド

言うまでもなく、本来の端末価格はアメリカの消費者が支払っている額よりも高い。iPhone 5Sの本当の価格は650ドルだし、iPhone 5Cでも550ドルである。しかしキャリアと契約して購入すると、この価格がそれぞれ199ドルと99ドルになるのだ。アメリカ国外でiPhoneを買おうとする人がいたらその価格の差に驚くかもしれない。

世界中でスマートフォンの平均価格が下がったことで一番恩恵を受けているのはAndroidだ。グーグルとその製造パートナーは、後進国にも受け入れられる価格帯のスマートフォンを上手く作り出している。最近の代表的な例は、LG製の新しいNexus 5(契約無しで350ドル)とモトローラによるMoto G(契約無しで179ドル)である。Nexus 5は最高スペックのスマートフォンという位置づけで最新のAndroidが搭載されている。Moto Gは安価なスマートフォンとして一部の機能を排除したAndroidが搭載されているが、全体的には非常によくできている。同等スペックの他社製品に比べれば圧倒的に低価格だ。他社もこのトレンドに乗っており(Nokiaも安価なLumia520を最近発売した)、スマートフォンの平均価格はこの先10年は下がり続けるだろう。つまり、より多くの人がスマートフォンを購入できるようになるわけだ。

スマートフォン普及率の増加はアジア太平洋、中東とアフリカのような新興市場で最も大きい。アメリカとその他の成熟したマーケットでは、出荷台数は増えでも普及率自体はそれほど大きく変わらないだろう。

2012年にスマートフォンの利用者は10億人を突破した。そのとき、我々はスマートフォンが全世界に普及し始めるのだという予感のようなものを感じていた。今、その予感が現実のものとなりつつある。スマートフォンが世界に普及するということは、世界中の何十億という人々の手元にインターネットに接続されたコンピューターが届くということだ。世界中の誰もが今まで知り得なかった情報にアクセスしたり、手軽にコミュニケーションを取り合ったり、教育の恩恵を受けたりすることができるようになるのである。しかも、全てが指先のタッチひとつで、いつでも、どこでも可能になるのだ。スマートフォンの利用はこれからますます広がっていく。世界的なユビキタス・コンピューティングの拡大はまだ始まったばかりである。

Dan Rowinski
[原文]