ついに蟇郡戦の『キルラキル』9話! まさかの技「自縄自爆」や、でかすぎる回想シーンなど、蟇郡一体何者なんだ状態ですが、その裏には皐月様の思いと、蟇郡の覚悟が隠されているようです。

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昔は、テレビが壊れた時は「叩けば直る」なんて言ったもの。でも今、叩く所無いよね。
だがそれをネタにしてしまう『キルラキル』9話。
45度で叩くといいって聞いたもんです。

今回は四天王戦の一人目、風紀委員長の蟇郡苛。
ついにバトル展開です。
ですが、実はバトルを描きながら、それを通じて「皐月様の考え」「四天王との繋がり」を見せる構造になっています。
このアニメならではの、ケレン味の強い演出からそれを覗いてみましょう。

●耐える男、蟇郡
蟇郡の「覚悟」をどう描くかに、重点が置かれていました。
とはいえ、自分で自分を鞭打つシーンとか、変態性溢れるこのアニメの中でも屈指のクレイジーさ。
「常識」という言葉が通用しないアニメだぜ……。
『パンティ&ストッキング』のガーターとコルセットで似たようなことはやっていたけれども、越えてしまった。

カギになるのはこの台詞でしょう。
「自らの意志で自らの襟を正す。本能字学園の生徒たちの自主性に規律を託す。その思いの結実が縛の装である。そしてそれでもわからぬ者には、涙を飲んで粛清のムチを振るった。これが死縛の装である。」
2つの形態が、蟇郡の覚悟そのものを表現します。

第一形態は「縛の装」。
どんな攻撃も吸収してエネルギーに変えてしまう、生命戦維は外側にないので、結局攻撃しないといけないという究極の防御。ただし、吸収以外なんもできません。勝てないけど、負けない。

ここで受けた攻撃が蓄積され、ムチを振るう「死縛(しばき)の装」という攻撃形態になります。
これを見て「サナギマン」から「イナズマン」になるのを思い出した人も多いかもしれません。

なぜ二段変形するのか?
蟇郡の「覚悟」とは、「自分で自分を律する」ことを、みんなに「考えて欲しい」ということです。
だから、まずは「オレを見習え!」という意味で、自らを縛ります。これが第一形態。

それでも規律を守らないのなら、というのが死縛の装。
「涙をのんで粛清」っていうのは嘘じゃない気がします。
例えば、死縛の装でのムチ打ち、流子のしりばっかり叩いてるんですよね、最初。
蟇郡のことですから、そこで白旗をあげたら許しちゃうんじゃないの?ってくらい。
8話でも描かれるように、基本紳士ですし。

彼が衣装の一つであるギャグボールを噛み砕いてしまうのが面白い。
衣装一つ一つへの接し方が、人間の思いを表現しているのがこのアニメです。
今回の場合は、皐月様曰く「覚悟に溺れすぎて奢りになった」。
覚悟と冷静さは別物です。

●なぜ皐月様は蟇郡を許したのか
もう一点重要なのは、皐月様にとっての蟇郡の覚悟の捉え方です。

以前猿投山が負けた時、皐月様はばっさりと切り捨てました。
しかし、蟇郡が切腹しようとした時、「まだひざまずくには早い」と言って止めます。
一般生徒に対しては負けたらどんどん切り捨てるのにね? この差はなんなのだろう?

皐月様による、5年前の蟇郡の回想がそのヒントになります。
見て全員が感じたと思います。あれ、でかすぎる。
6・7メートルはあったよ蟇郡。

「威圧感を大きさで表現する」のは第一話の最初からでした。
注目したいのは、「大きさ」のデフォルメ描写は、見る相手側の感覚だということ。
実際の蟇郡がそんなでかくないのは、通常の描写を見れば分かる通り。ちょっと大きいくらいですね。

第一話登場シーン(視点は無星生徒)や、4話でトラップ部部長を叱るシーン(視点はトラップ部)、今回の時間を守れというシーン(視点は流子)で蟇郡は大きくなります。
このアニメだと、相手にとっての「存在感が大きい」場合は、大きくデフォルメされるルールがあります。
ただし、それぞれ違います。恐怖・威圧感・迫力。8話で中1の皐月様も大きくなっていました(視点は蟇郡)。

そして、皐月様の回想シーンの中では、蟇郡は異常にでかい。
ということは、皐月様にとって、蟇郡の存在はそれだけ常に大きいということです。

皐月様が認めているのは、蟇郡の「覚悟」です。威圧感ではありません。
中3の時、すでに蟇郡には覚悟があった。今回も、蟇郡は負けてもなお、覚悟を持ち続けていた。
だから止めたんです。

猿投山は、最初負けた時は切り捨てました。覚悟なく、慢心していたからです。
しかし猿投山が目を縫い、覚悟を決めてからは、皐月様は彼をしっかり認めています。
覚悟を決めた人間は、「服を着た豚」だとは考えない。

今後、皐月様目線で色々なキャラが描かれると思いますが、それがどうデフォルメされるか楽しみです。
特に繋がりの深い蛇崩。彼女あんまり出てないですし、やけに信頼をおいています。
ちなみに皐月様から見た流子は、まだまだ小さいですね。

●流子の親友たち
今回はかなりの流子デレ回。
まずマコに対して。美木杉がマコの動きを止めた時の発言。
「こいつと話している方がよっぽど元気になるんだ」
わあ、プロポーズみたーい。
後ろ向きで怒りが強い流子が、マコの前向きな考え方に煽られて、ポジティブになってきています。
7話のマコとのバトルを越えて、本音をぶつけあえる仲になりました。

マコはいつもどおりなんですが、流子がマコに対して接する時、回を追うごとにものっすごい優しくなっています。
こういう関係はこのアニメの場合、流子とマコの間、満艦飾家の間にしかありません。
しかも気を使って、楽しい時間を持とうと自主的に考えるようになってきている。8話のバイクの時もそうです。

そしてもう一人の友達は鮮血。
「そういう前向きな考え方スキだぞ☆」
今回のクライマックスシーンでしょう。
「着る」というのが「一体になる」というのはもう何度も出てきている理念。
今回は「鮮血閃刃」という、鮮血が考えた別形態を流子が採用されました。
服の側の意見を聞き、相談し、一人と一着で最も最適な解を出している。こんなの他にない。皐月様でもしていない。服って友達になるんだなあ。

流子には皐月様や蟇郡のような「覚悟」や「理念」はありません。
しかし流子は今、マコと鮮血という、友情を手に入れました。
別の形で、強くなりはじめているのは興味深いところです。

●小さい謎の数々いろいろ
今回も細かいところで伏線をオープンにしていました。ちょっと並べてみます。

1・戦維喪失について
これ第一話ではそういうネタワードなのかと思いきや、途中から自分で叫ぶようになってびっくりしました。
そして今回、戦維喪失の仕組みが判明。
実は物理攻撃ではない。あくまでも極制服の中の生命戦維を取り除く技でした。
なるほど、片裁ちばさみでしかできないわけだ。

2・普通だったお弁当
マコのお母さんのお弁当が普通でした。なんだかわからないコロッケじゃない!
「流子ちゃんは私の作ったお弁当を食べているんだもの、負けるわけがない!」
うーん、さすがマコママ。理屈がマコに似ている。
ただ、深読みすればですが……勝ち負けは着て服の強弱ものじゃなく自分の体と人との繋がりそのものだよというメッセージのような気もします。

3・学校行事は街の一大イベント。
この世界の無星のスラムには、テレビもないんだなー。
昭和初期のように、電気屋に集まって、楕円の写りの悪い画面のテレビをみんなで見ていました。
文化水準がこの世界が低いわけではないのは、一つ星・二つ星の家を見たらわかります。
これも、やみ電気屋なんでしょう。ビクターっぽい犬の置物がプリティー。

4・明らかに強い美木杉
3話で皐月様が純潔を着てバトルしていた時、よっこらせと乗り出そうとした美木杉。
彼は「強い」のではなくて「留める」技術を持っているようです。使っているのが、ずっと「まち針」なのがポイント。
根本的には、流子の「味方」ではないのも今回わかりました。
といういうのも「鮮血と流子はヌーディストビーチの大事な武器である」という見方をしているからです。
戦闘後、第二形態になった鮮血を観て「けど、素直には喜べないな」というのも意味深。

5・犬牟田の自称
普段「ぼく」という彼。今回は「オレ」と言っていました。たまーに「オレ」っていうんですよね。
この差なんなんだろう? 詳しくは次回!
個人的にはもっと襟がパコパコしてほしいです。

『キルラキル』BD 1巻

(たまごまご)