topimg_news53_01


炭素原子が管状に連なったカーボンナノチューブは、軽量かつ強靱、高い導電性を備えているため、半導体材料や構造材料への応用が進められている。
テキサス大学のRay Baughman博士をリーダーとする国際研究チームが開発したのは、カーボンナノチューブの撚り糸でできた人工筋肉だ。これは自重の10万倍の物体を持ち上げることができ、収縮する際には天然の筋繊維の85倍もの力を出すことができるという。

研究チームは、ロウソクなどに使われているパラフィンワックスを、カーボンナノチューブの撚り糸に染みこませて、この人工筋肉を作成した。撚り糸を電気や光で熱すると、ワックスが膨張して、ねじれがほどける。つまり、温度変化によって伸縮させられる、人工筋肉ができたというわけだ。

人工筋肉の収縮は、1000分の25秒と極めて高速に行われる。また、収縮時のパワー密度は4.2kW/kgで、これは一般的な内燃機関の4倍に相当する。

撚り糸を自由に回転できるようにして、熱したり冷やしたりすると、回転の方向を制御できる。回転の向きを反転させるサイクルを200万回繰り返したところ、平均速度は毎分11500回転にもなり、発生するトルクは大型の電気モーターをわずかに上回った。

こうした特性は、ロボットや医療用カテーテル、超小型モーターなどに応用できると考えられており、温度変化に応じて開閉するブラインドやバルブなども実現できるという。
なお、Baughman博士によれば、この人工筋肉は今のところ、人間の筋肉の代わりとしては使えないそうだ。

Photo Credit: Ray Baughman,University of Texas at Dallas

(文/山路達也)

記事提供:テレスコープマガジン