「野田政権が“抱きつき戦法”を多用し始めました。とにかく相手の得点になりそうな政策には、全力で乗っかっていく戦術です。例えば、尖閣諸島の問題では急に国有化なんて言い出した。石原都知事は中国から攻撃を受けると逆に勢いを増す人です。ならば中国からの怒りを買ってでも石原さんへの追い風を奪うほうを優先しちゃえってことです」

民主党議員であるA氏は、こう証言する。

「さらに“大阪都構想”にも抱きついた。この構想の実現には国の法律を変える必要があります。法案の名前は違いますが、3月にみんなの党、4月に自民党と公明党が“大阪都構想”を後押しする法案を出していた。これについても野田政権は、国民新党も含めた5党で共通の法案を提出することで合意した。地方分権につながる“大阪都構想”は財務省にとっても面白くない改革。でも野田さんはなりふり構わず、維新の会にも自民党にも公明党にも抱きついたのです」(A氏)

民主党が勝手に自爆して自民党にとって有利な状況だったのに、野田総理の“抱きつき戦法”で支持率の上昇に結びつけられない谷垣総裁は厳しい立場だ。

一方の橋下・維新の会はしたたかだ。自民党議員の公設秘書、S氏が証言する。

「『維新八策』の内容に対して政治家や新聞記者たちが工程表を示せとかいって批判をしています。なかには、理念だけで中身も実現性もないなんて批判する議員もいましたが、民主党議員にだけは言われたくないですよね(笑)。もし『維新八策』に具体的な工程表を書けば“自民主”が丸パクリして抱きついてくるでしょう。わざと書かないんですよ。橋下さんは非常に頭のいい戦略家です」

しかしこんなことばかりしていたら、野田政権への逆風が吹くのではないか?

「ははは。すでに地を這うような低支持率の政権にとって、逆風なんてなんの意味も持ちません。相手の勢いがなくなれば、その分、差が縮まるという考え方ですよ」(S氏)

野田総理、案外図太いのかもしれない。

(取材・文/菅沼 慶)