そしてフェニルホスホン酸は、タングステン酸ナトリウムの働きをさらに促進させるというものだ。

また、添加剤としては硫酸ナトリウムが最適であった。

この技術によって室温で速やかにエポキシ化反応が進行し、α-ピネンオキシドが収率89%、選択率100%と極めて高効率に得られたのである。

今回開発されたα-ピネンのエポキシ化法の概略を示したのが画像5だ。

新たに開発された触媒と添加剤を組み合わせた技術はα-ピネンだけではなく種々のテルペンのエポキシ化反応にも有効で、それぞれのテルペンに対応するテルペンオキシドを高効率かつ高選択的に合成することができることも特徴となっている。

しかも、生成したテルペンオキシドは加水分解せずエポキシ構造を保持したままの生成物として取り出すことが可能だ。

この技術の開発により、簡便にテルペンオキシドのラインナップを製造できるようになった。

画像6は、この技術による種々のテルペンのエポキシ化反応の結果を示したものだ。

研究グループは今後の予定として、触媒技術をさらに改良し、反応に伴う発熱や加水分解機構のさらなる検討と装置の改良を行うとする。

また荒川化学では、1品種あたり年産数トンスケールの製造工程を確立し、事業化することを検討中だ。

さらに産総研では、開発された触媒技術をベースにテルペンだけでなく加水分解を受けやすいあらゆる有機化合物に適用できるレベルの触媒開発を開始するとしている。