地震発生のメカニズムの鍵を握るのは地殻プレートのふるまいだと言われるが、東京湾直下に複数のプレートがぶつかりせめぎ合う場所が近年になって見つかっている。そしてごくごく近い将来、そこを震源としたM7クラスの大地震が首都圏を襲うというのだ。



「東京湾にプレート境界がぶつかり合うエリアがある」─石原慎太郎都知事とのブリーフィングでそう語ったのは東大地震研究所の平田直教授。先頃、首都圏直下型大地震が4年以内に発生する確率が70%だと発表して話題になった研究者だ。

 平田教授は文科省の「首都圏直下地震防災・減災特別プロジェクト」のサブプロジェクトの研究代表者でもあり、首都直下のプレート構造について詳しい。

 首都圏直下は2つの大陸プレート(ユーラシアプレート、北米プレート)の下に、東から太平洋プレートが、南からフィリピン海プレートが沈み込んでいる。

 プロジェクトでは首都圏に400カ所の地震計を設置。プレート構造を明らかにした。その結果、東京湾直下にプレート境界がせめぎ合うエリアが見つかったのだ。

 また、平田教授の報告「首都圏を襲う地震の姿に迫る」には、歴史上に起こった東京湾直下の同様の地震についての記述がある。それによると首都圏では、200〜400年の周期を持つM8級の巨大地震の間にM7クラスの大地震が繰り返し発生している。その一つ、文化9年(1812年)に発生した大地震を記録した「関口日記」という古文書には、横浜、川崎で家屋が倒壊し、多数の死者が出た様子が描かれている。古文書の記述から震度6だったと推定される地域は横浜、川崎から品川、世田谷に広がり、震度5は北は埼玉県草加、西は神奈川県厚木、藤沢、南は横浜市金沢区にまで及んでいるのだ。

 発生が切迫しているという東京湾直下型の地震が、これと同様かどうかは不明だ。しかし地震が周期性を持って発生する傾向を考慮すると、規模や被害を予測するのに非常に参考になることは間違いあるまい。

 平田教授らは東日本大震災前半年、震災後半年のうちに首都圏で発生したM3〜6クラスの地震発生回数を調査。統計的手法を組み合わせて「余震の確率評価手法」を作った。そして、今後4年で首都圏にM7クラスの大地震が発生する確率が70%という衝撃的な数値をはじき出したのだ。

 東海大地震予知研究センターの竹内昭洋特定研究員が言う。

「関東地方で地震が多発している理由はいくつかあります。一つは東日本大震災で割れ残ったところがあること。それに大震災の衝撃があまりに大きかったため、岩盤にかかる力が変化し、不安定になっていること。今後、関東地方を襲う大地震は3つある。首都圏直下、房総沖、東海地震です。関東平野の下には未発見の活断層があるはず。そこが震源となる可能性もあり、早急に調査が必要です」

 我々は地震の巣の上に巨大なメトロポリスを建設していたのだ。