いつの間にか、こんな弧を描き始める。

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日本人なんだから、お箸の持ち方は綺麗でありたい。誰かが、日本のことを“お箸の国”なんて表現していたが、うまいことを言う。お米だって、野菜だって、お魚だって、お味噌汁だって、お箸で美味しくいただく。素晴らしい文化だ。

そんな我々への挑戦だろうか? 食事の際に使っていると、ひとりでにグニャグニャ曲がっていく箸が開発されたそうだ。ウェブサービスや英会話教材『エブリデイイングリッシュ』などを取り扱う「エス株式会社」から8月5日より発売されている、その名も『曲がりなりにも箸』のことである。

これは、世界初の“錫を100%使用したお箸”。抗菌作用や酸化しにくいという特徴があるが、「やわらかい金属なために変形しやすい」という困った特徴の方まで兼ね備えてしまった。まさに、“お箸の存在理由に挑戦し続ける”商品。

っていうか、なんでそんな挑戦してんだ? このお箸の開発のきっかけについてを、同社に伺ってみた。
「会議中の『曲がったら困るものってなんだろう?』という会話の中から立ち上がった企画です。当社の制度『5%の可能性』を利用して商品化しました」(同社・担当者)

なに、その「5%の可能性」って? ……と、半笑いしそうになったが、これがナカナカに素晴らしい。クリエイティブ心をくすぐる、画期的な制度なのである。
「当社代表の児玉昇司が発案いたしました。全社員に平均勤務時間の5%の時間を、メイン事業であるウェブサービスとエブリデイイングリッシュ以外で自分の好きな分野の企画立案に使うことを推奨しており、部署の枠を超えそれぞれの想いを込めて独創的なプロダクトを創出しています」(担当者)
そうして同社では、水に濡れても破れない紙でできた本『海底2万マイル海底版』やアクセサリー・オブジェとして利用できる『折れない心』(錫)を生み出している。

……と感銘を受けそうになったが、アブない危ない。普通にくだらな過ぎるだろう。というわけで、実際に取り寄せて『曲がりなりにも箸』を使ってみました。
まず、持ってみての第一印象は「重い」。錫100%だから致し方ないが、この時点で“使いやすさ”を完全に放棄していると確信した。

そして、ファーストチャレンジの食材は「ひじき豆」です。これを掴もうとすると……、普通に掴めちゃった。同じように「お豆腐」、「うどん」とチャレンジしてみるも、問題無し。よっしゃ、もう普段通りにバクバク食べます!
……と開き直って1分後には、もうお箸の様子がおかしい。箸先が、“内股のオカマ”みたいな角度になっているのだ。構わずに食べ続けていると、絵に描いたように食べづらくて。うどんは掴めないわ、豆を摘まもうとするも箸が勝手に変な方向に動き出すわ。そして何度も言うが、重い。
最終的には、2本の箸の先端が接触せずに、「スカッ、スカッ」の連続という始末でした。とんでもねえお箸だな……。

また、悲しみのステージは続く。この後も厄介なのだ。使用後のグニャッとなったお箸は手でも簡単に戻すことができるが、完全に元通りの形に戻すためにはゴムハンマーなどで叩いて整形する必要がある。じゃないと、曲がったままだから。
また、火のそばに置いたり熱い物を食べたりすると、熱伝導が良いために自分の手が暑くなってしまう。イチイチ、やけどに気を付けなければならない。本当に、存在理由が問われるお箸だ。

そんな『曲がりなりにも箸』には、以下のような反響が届いているそうだ。
「ご利用者の中から『飛行機に搭乗する際、空港の手荷物検査で止められてしまった』というご報告をいただきました。手荷物検査の際に『箸なのに曲がるのはおかしいじゃないか』と怪しまれ、本当の利用目的を聞かれるなど、ナカナカ理解してもらえなかったそうです」(担当者)

同社ホームページでは、「ダイエットに。食べづらいため、自然とお食事の量が減ります」、「精神力の鍛錬に。食べづらいため、我慢強さなどが養われます」、「ダウジングに。地下の水脈、鉱脈等の発見の保証はいたしかねます」といった使用法も推奨されているのだが、物は言い様だな……。

モノ好きな方は、同社サイトで販売されているからいってみたらいいと思う。価格は、白が3,980円(税込み)。黒が3,980円(税込み)。白黒セットで6,980円(税込み)だ。

「広島名物として、広島のPRにもつながればと思っております」(担当者)
いいのか、本当に? 気になる方は、このお箸でお弁当とか食べてみてください。
(寺西ジャジューカ)