【杉山茂樹コラム】キャップ数に制限を設けよ
代行なので遠慮したのか。波風を立てるのを嫌ったのか。
原サンは、9月4日、7日のパラグアイ戦、グァテマラ戦に、岡田ジャパンそのままのメンバーを招集した。
「新生」の匂いもしなければ、「船出」の期待感も湧いてこない。さながら「南アW杯ベスト16達成報告試合」とでも言うべき、花相撲ならぬ花試合の様相さえ呈している。
強化試合というより一種のイベント。お祭りだ。
ならば代行監督は、原サンではなくて、岡田サンにやってもらった方がよっぽど楽しめる。そのうえ相手は、あの「パラグアイ代表」。PK戦アリの設定にするのもいいだろう。素人には確実に受ける。すなわち、高視聴率も期待できる。
いったいこの試合の目的は何なのか。誰がやろうと言いだしたのか。鉄は熱いうちに叩け、ではないが、どなたかが60%の視聴率を獲得した「ドル箱」を、放置しておく手はないと踏んだのだろう。そちらサイドに急かされた感は大いにする。少なくとも協会主導、協会が望んでいた本来のペースではないと思う。
だが、協会はお金も欲しい。「ベストメンバー」を揃えたのは、代行監督を容認してもらう代わりの「バーター」のようにも見える。
というか、そうであって欲しいぐらいだ。協会が、本気でこのメンバーを選んだとすれば、どうかしているとしか言いようがない。
中でも海外組は、この時期、呼ぶべきではない。内田、香川、長友、松井、川島。今季、移籍した選手はなおさらだ。新チームでの活躍を優先することが親心というものだろう。日本と欧州を行き来し、それぞれでベストパフォーマンスを見せることは至難の業。まだ往復に慣れていない選手は特に大変だ。そのために調子を崩し、所属クラブでスタメン落ちしてしまったら、元も子もない。
ある雑誌でも述べたのだけれど、僕が協会のお偉いさんなら「選びすぎ禁止令」を出すつもりだ。キャップ数に制限を設けよ、と言いたい。
岡田ジャパンとオシムジャパンが、4年間に行った代表戦は計70。それに基づけば、その半分に値する35試合以上、ピッチに立たせることを禁止するのだ。
岡田ジャパン(ジーコジャパンも)がつまらなそうに見えた原因は、毎度、おなじみのメンバーで戦ったことにある。若手や新顔が、出場機会は限られていた。つまり話題性に欠ける試合が多かった。試合の興味は、勝つか負けるかに限られていた。視聴率が伸びない原因のひとつだったと思う。
だが、親善試合で来日する「代表チーム」の大半は2軍。それ以下の場合さえあった。
アジア予選も本大会出場枠が4.5もあるので、たいした試合は5試合程度。「選びすぎ禁止令」を出しても、大きな痛手にはならないはずだ。
むしろ、若手の伸びは期待できる。レギュラー争いも激しくなる。ベストメンバーも見えづらくなる。そこに僕は、エンタメ性を感じるのだ。
いつでもベストメンバーで戦い、ファンから飽きられるより、よほど良いと思う。代表監督の評価も、結果が少し悪くても、割り引くことにしたい。
代表強化のあり方そのものを、見つめ直す機会に来ているのだと思う。
岡田サンは今年4月、セルビアにホームで完敗すると「いつものメンバーがいれば」と語った。4年間1人の監督の下で、いつものファミリー的なメンバーで修練を重ねることが、代表チーム強化のあり方だった。いつものメンバーでなければできない、あうんの呼吸に基づく、コンビネーションを大切にしてきた。
つまり新顔にとっては、馴染みにくいサッカーだった。独特なルールが多すぎるサッカーだった。このやり方を全面的に改めたいのだ。望まれるのは、誰にも分かりやすいサッカー。分かりやすい戦術だ。だからこそ監督は優秀でなければならない。
良い監督ほど、基本線が明確だ。悪い監督ほど、細部の話が多い。セレクターとしての目にも優れている。
誰をどこに当てはめるか。誰と誰を近距離で組ませたら、息のあったプレイを見せられるか。「選びすぎ禁止令」を実行するためには、そうしたパズルの才能に長けた監督、選手の才能を見抜く力のある監督、アイディア豊富な監督が不可欠になる。
それこそが代表チームならではの面白さだと思う。誰をどこで使うか。代表メンバーの発表の際、代表監督はそこまでハッキリ口にすべきだと思う。
新監督の座に誰が就くのか、今のところ分からない状態だが、名前の挙がっている(挙がった)監督は、十分、備えているように見える。
ベストメンバーが必ずしも面白いわけではない。ファンが見たいのは楽勝ではなく接戦だ。相手が2軍で来日したら、こちらも2軍で対抗する。キャップ数の低い選手で固める。勝ち負けが、五分になるような設定をある程度、施さないとサッカーは面白く映らない。視聴率も伸びないと僕は思う。
原サンは、9月4日、7日のパラグアイ戦、グァテマラ戦に、岡田ジャパンそのままのメンバーを招集した。
「新生」の匂いもしなければ、「船出」の期待感も湧いてこない。さながら「南アW杯ベスト16達成報告試合」とでも言うべき、花相撲ならぬ花試合の様相さえ呈している。
強化試合というより一種のイベント。お祭りだ。
ならば代行監督は、原サンではなくて、岡田サンにやってもらった方がよっぽど楽しめる。そのうえ相手は、あの「パラグアイ代表」。PK戦アリの設定にするのもいいだろう。素人には確実に受ける。すなわち、高視聴率も期待できる。
だが、協会はお金も欲しい。「ベストメンバー」を揃えたのは、代行監督を容認してもらう代わりの「バーター」のようにも見える。
というか、そうであって欲しいぐらいだ。協会が、本気でこのメンバーを選んだとすれば、どうかしているとしか言いようがない。
中でも海外組は、この時期、呼ぶべきではない。内田、香川、長友、松井、川島。今季、移籍した選手はなおさらだ。新チームでの活躍を優先することが親心というものだろう。日本と欧州を行き来し、それぞれでベストパフォーマンスを見せることは至難の業。まだ往復に慣れていない選手は特に大変だ。そのために調子を崩し、所属クラブでスタメン落ちしてしまったら、元も子もない。
ある雑誌でも述べたのだけれど、僕が協会のお偉いさんなら「選びすぎ禁止令」を出すつもりだ。キャップ数に制限を設けよ、と言いたい。
岡田ジャパンとオシムジャパンが、4年間に行った代表戦は計70。それに基づけば、その半分に値する35試合以上、ピッチに立たせることを禁止するのだ。
岡田ジャパン(ジーコジャパンも)がつまらなそうに見えた原因は、毎度、おなじみのメンバーで戦ったことにある。若手や新顔が、出場機会は限られていた。つまり話題性に欠ける試合が多かった。試合の興味は、勝つか負けるかに限られていた。視聴率が伸びない原因のひとつだったと思う。
だが、親善試合で来日する「代表チーム」の大半は2軍。それ以下の場合さえあった。
アジア予選も本大会出場枠が4.5もあるので、たいした試合は5試合程度。「選びすぎ禁止令」を出しても、大きな痛手にはならないはずだ。
むしろ、若手の伸びは期待できる。レギュラー争いも激しくなる。ベストメンバーも見えづらくなる。そこに僕は、エンタメ性を感じるのだ。
いつでもベストメンバーで戦い、ファンから飽きられるより、よほど良いと思う。代表監督の評価も、結果が少し悪くても、割り引くことにしたい。
代表強化のあり方そのものを、見つめ直す機会に来ているのだと思う。
岡田サンは今年4月、セルビアにホームで完敗すると「いつものメンバーがいれば」と語った。4年間1人の監督の下で、いつものファミリー的なメンバーで修練を重ねることが、代表チーム強化のあり方だった。いつものメンバーでなければできない、あうんの呼吸に基づく、コンビネーションを大切にしてきた。
つまり新顔にとっては、馴染みにくいサッカーだった。独特なルールが多すぎるサッカーだった。このやり方を全面的に改めたいのだ。望まれるのは、誰にも分かりやすいサッカー。分かりやすい戦術だ。だからこそ監督は優秀でなければならない。
良い監督ほど、基本線が明確だ。悪い監督ほど、細部の話が多い。セレクターとしての目にも優れている。
誰をどこに当てはめるか。誰と誰を近距離で組ませたら、息のあったプレイを見せられるか。「選びすぎ禁止令」を実行するためには、そうしたパズルの才能に長けた監督、選手の才能を見抜く力のある監督、アイディア豊富な監督が不可欠になる。
それこそが代表チームならではの面白さだと思う。誰をどこで使うか。代表メンバーの発表の際、代表監督はそこまでハッキリ口にすべきだと思う。
新監督の座に誰が就くのか、今のところ分からない状態だが、名前の挙がっている(挙がった)監督は、十分、備えているように見える。
ベストメンバーが必ずしも面白いわけではない。ファンが見たいのは楽勝ではなく接戦だ。相手が2軍で来日したら、こちらも2軍で対抗する。キャップ数の低い選手で固める。勝ち負けが、五分になるような設定をある程度、施さないとサッカーは面白く映らない。視聴率も伸びないと僕は思う。
関連情報(BiZ PAGE+)
スポーツライター杉山茂樹氏の本音コラム。