来週2010年7月30日に臨時国会が召集される。会期は8月5日前後までの7日間程度となる模様だ。そこで、渡辺喜美みんなの党代表がさっそく行動している。国会議員の報酬について、歳費を3割、ボーナス(期末手当)を5割削減し、日割りで支給する法案をやろうと各党に呼びかけているのだ。

   普通であれば、こんな動きは出ない。というのは、夏は夏休みやお祭りがあったりして人出が多く、国会議員にとって地元に顔を出さなければいけない機会がふえるので、国会をやりたくない。

新参院議員も7月分丸々支給の不思議

   しかし、みんなの党のいっている話は、表立っておそらく誰も反対できないだろう。というのは、現行制度(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律)では、歳費(月129万7000円)と文書通信交通滞在費(月100万円)は、在職日数にかかわらず、1か月分支給される。すると、この7月に参議院議員になったばかりの者でも7月分丸々歳費等を受けられるのだ。本来であれば、こんな不条理は昨09年にも法改正しておくべきことだ。

   今までなら、真剣に議論されないで、見過ごされていたにちがいない。そこに、みんなの党が一石投じたわけだ。ところが、仙谷由人官房長官は7月21日の記者会見で、みんなの党が打ち出した議員歳費の大幅なカット案に否定的な見解を示した。仙谷氏は、「『引き下げデモクラシー』みたいなことが(歳費削減の)論争の中にあるとすれば、気をつけて議論をお願いしたい。みんなが低い方に合わせるように足を引っ張り合うことがいいのかどうか」と述べた。

   ただし、これはちょっと不味い。実は、今回の参院選用のマニフェストで民主党は、「国会議員の歳費を日割りにするとともに、国会の委員長手当などを見直すことで、国会議員の経費を2割削減します。」と明記している。菅直人首相も選挙戦で「議員自らが血を流す姿勢をきちんと示す」といっている。どうも民主党は口ばっかりで、実行しないということになってしまう。国会議員の報酬については、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律で決められているが、国会議員は law maker であるので、自らがどこまで律しきれるかがいつも問われている。

「仕事している」国会議員少ない

   今回のみんなの党の動きをスタンドプレーと揶揄する向きもあるが、国民のためなら大いにスタンドプレーでもやったらいい。さらに、こうした議論は、国会議員の役割を再認識させるためにも、望ましい。

   国会が立法機関であるので、当然ながら国会議員の仕事は立法作業になる。そのために、国会でいろいろな活動をしているわけだ。国会議員の仕事ぶりについて、私は、何本の法律を立案したか、何回・何時間国会で口頭質問したか、何本の文書による質問主意書を提出したか、という3つの単純な基準でみている。こうした基準でみると、仕事をしている国会議員は少ない。与党で大臣などとして政府に入っている国会議員は、仮に政府提出法案に関係しているとみればかろうじて仕事をしている。野党議員では、議員立法が少なく、国会質問で時間制約があるのでよほど質問主意書を出していないと仕事をしたことにならない。

   しばしば政治主導が必要といわれるが、これら3基準をクリアすれば、自ずと政治主導になる。問題は、日本の国会では、大別すれば議員立法と政府提出法案があるが、後者の政府提出法案が9割方を占めていることだ。つまり、政府提出法案では、官僚がドラフトを作り、それで大臣を折伏し、国会は数だけあれば議論が少なく単なる通過儀式になっている。ここに政治主導でなく官僚主導だという批判の根源がある。この観点から見れば、幸いなことに、衆参のねじれが生じ、みんなの党などからでも議員立法で法案を提出すれば、成立する可能性が高まった。国会で与野党ともに法律を出し合い、議論すれば、立派な政治主導にできるのだ。国会で国会議員が法律を競い合い議論するのが、本当の国会のありかた、政治主導だろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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