最近、少女の妊娠や出産を描いた作品が話題となっている。もともと、TBS系ドラマ「金八先生」など学園モノの作品ではテーマになることがあったが、「妊娠・出産」に特化して、世の中に対する問題提起を行う作品が登場するのはおととし放送されたドラマ「14才の母」、昨年公開の映画「JUNO」など最近のことだ。「生命について真剣に考える機会になった」という声がある一方、「過激な描写で注目されたいだけ」「リアリティがない」など冷ややかな声も聞かれる。
10代の妊娠・出産。特に、結婚のできない16歳未満という若さでの妊娠・出産は、果たしてどの程度リアリティのある問題なのか。議論を呼ぶきっかけとなった「14才の母」「JUNO」、そして来週末に公開される「コドモのコドモ」の3つの作品を比較しながら、考えていきたい。


まずは、2006年秋に日本テレビ系で放送された ドラマ「14才の母」。志田未来の迫真の演技が高い評価を得て、最終話は関東地区で視聴率22.4%を記録。民放ドラマで唯一の入賞となる「第44回ギャラクシー賞」を受賞した。

「14才の母」の主人公は、私立中学校2年生の一ノ瀬未希。14歳にして、1歳年上の恋人との子どもを授かった。相手の男性もまだ若過ぎ、お互い混乱し傷つくなかで、一度は中絶を決める。しかし、両親から自分が生まれたときの話を聞き、おなかの子を産む決心をする。

次に、昨年公開されたアメリカ・カナダ映画「JUNO」。公開当初は7館のみ、細々と上映していたが、口コミで評判が広まり、あっという間に2400館を越え、興行収入も1億ドルを突破した。ジェイソン・ライトマン監督と女性脚本家ディアブロ・コディのコンビが、この重たいテーマをポップで明るいタッチに仕上げている。

「JUNO」の舞台はアメリカ中西部。16歳の高校生、ジュノは恋人でもない男友達と興味本位でセックスをしたところ、予期せず妊娠をしてしまった。一度は中絶を考えるが、親友や家族、里親を希望する夫婦に支えられ、出産を決意する。

最後に、来週末公開の「コドモのコドモ」。原作は、さそうあきら作の漫画で、「漫画アクション」(双葉社)で2004年より連載されている。主人公は小学5年生の持田春菜。5年生に進級したばかりの春、幼なじみのヒロユキと公園で遊んでいるうちに、興味本位から「くっつけっこ」をする。その後性教育の授業を受けて、自分が妊娠したかもしれないと思い始める。大人たちに知られないままに、お腹はどんどん大きくなっていく…。

そもそも、若年で子どもを産むことは社会的に許されるのか。日本の刑法では、性交同意年齢が13歳となっており、まず13歳未満の男女の性行為はいかなる場合においても禁止されている。そして、18歳未満の男女についても、各都道府県の条例で性行為が制限されている。例えば東京都の場合は平成17年に「東京都青少年の健全な育成に関する条例」が制定され、「何人も青少年とみだらな性交又は性交類似行為をしてはならない」と定められた。

「みだらな性交」の解釈が難しいところだが、その条例では「青少年を誘惑したり困惑させるなど、その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交や、単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っている場合」などを「みだら」と定義している。実際に、今年5月には東京・足立区の中学教師が教え子と「卒業旅行」に行ったとして児童福祉法違反で逮捕されている。5月10日付け朝日新聞によれば女子生徒は「信頼していた先生に嫌われたくなかった(から同行した)」と話しているというが、仮に女子生徒に恋愛感情があったとしても、こうした関係は社会通念上「淫行」とみなされるのだ。

さて、3作品を比較してみると、「14才の母」では強い信念を持ち、また周囲に迷惑をかけまいと振舞う、健気な女の子が描かれていた。それに対して、「JUNO」や「コドモのコドモ」では、どこか楽観的というか、堅く考えていない主人公が登場する。「等身大の自分」を重ね合わせて考えられるという声がある一方、リアリティがないという声もある。当然だ。これらはあくまでもフィクションなのだから。

忘れてはならないのは、10代の妊娠は映画やドラマの中だけではなく、実際に起こっているということ。事実、米国などではここ15年来減少傾向にあった10代の妊娠が2005年をさかいに増加に転じている。少しさかのぼるが、日本でも2004年に社団法人全国高等学校PTA連合会と京都大学大学院が1万人の高校生を対象として行った調査では、そのうち39人が小学校時代に性交渉を体験したことがあると回答している。

我々はまず、若年での妊娠・出産が、体と心に大きな負担を強いるものであることを理解しなければならない。お互い同意の上での性交であったとしても、それが後々、心的外傷を負う結果になる可能性もある。また、ドラマでは「産む/産まない」に焦点が行ってしまい、産んだ後の人生にフォーカスされることは少ない。若くして出産、子育てをするということは、本人の心身の成長にも影響を及ぼす。学校に行けなくなれば、その分教育も遅れるし、近所付き合いや職場など、それが原因で社会的差別を受ける可能性もある。何より親になるにはあまりに若すぎる母親を持った子供にとっても、その後の成長過程において過酷な試練が待ち受けていることは想像に難くない。

10代の予期せぬ妊娠・出産により、母親・父親になる喜びを感じる前に戸惑い、混乱、そしてときには自分も生まれた子供も傷つくことがあるのは事実だ。そのような事態を招かぬよう、我々大人がするべきことはなんであろう。きっかけは映画、ドラマとはいえ、10代の少年少女の性交渉、さらには妊娠・出産という問題に、ひとりひとりがリアリティを持って向き合っていかねばならない段階に来ていることは間違いない。

(編集部 鈴木亮介)

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