約11億円が“未払い”の選手も…「リブゴルフ」が連邦破産法11条申請 再建のカギを握るのは債権者となった選手たちの決断
再建を目指してチャプター11申請
サウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」からの従来の資金支援を打ち切られ、消滅の危機に瀕しているリブゴルフが、9月8日(米国時間)、米連邦破産法11条(チャプター11)の手続きを申請した。
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取引業者への未払いが山積し、訴訟も起こされている状況下で発表された破産申請だが、チャプター11とは、裁判所が債務返済・再建計画の策定を監督する一方で事業を継続できるという、清算ではなく再建を想定した手続きである。
スコット・オニールCEOもこの申請を再建のための一手と位置付け、「このプロセスによって画期的な取り引きを追求し、リブゴルフの次なる章を始めるための枠組みと時間が得られる」という声明を出した。

この期に及んで、これほど前向きであることには少々驚かされるが、再建の見込みは本当にあるのかどうか。
まずは、ここまでの経緯を振り返り、明らかになった事実を見つめてみよう。
新たな筆頭投資家が判明
リブゴルフは、PIFの支援を受けて2021年に創設され、2022年から試合開催を開始した。当初は、創設に奔走した元PGAツアー選手でゴルフ界のレジェンドでもあるオーストラリア出身のグレッグ・ノーマンが初代CEOを務め、PGAツアーと激しく敵対する形になった。
敵対関係が解消されそうで解消されないまま、5シーズン目を迎えていた今年の4月、PIFは突如、リブゴルフへの経済支援を2026年シーズンいっぱいで打ち切ることを決めた。そのため、唯一の長期的な後ろ盾を失ったリブゴルフは早くも消滅の危機に直面した。
オニールCEOは新たな出資者探しに奔走し、8月にリードインベスター(筆頭投資家)を得たことを発表。しかし、その時点では、名前や金額といった詳細が伏せられていた。
そして、9月8日、オニールCEOはチャプター11申請の開始を発表。この手続きを行ったことで、それまで伏せられていたリードインベスターが英ロンドンを拠点とする投資会社「BCパートナーズ」のクレジット投資部門であることや、同社が共同投資家とともに再建後のリブゴルフに総額3億ドルを投資する計画であることなどが明らかになった。
チャプター11脱却の目安は120日以内
再建を目指すリブゴルフがこれから辿るのは、こんなステップになると見られている。
まず、債務返済と再建計画の策定中も事業を継続するためのDIPファイナンス(事業継続資金)として、PIFがリブゴルフに4960万ドル(約77億3800万円)を融資する。
リブゴルフは作成した計画を裁判所に提出。承認が得られれば、BCパートナーズと共同投資家から総額3億ドル(約468億円)の投資を受けることができ、再建に向かって動き出すことができる。
オニールCEOは、このステップを順次踏んでいくことに自信と意欲を示している様子である。公式発表では、合意された再建手続きの日程に沿って申請から120日以内にチャプター11から脱却し、株の過半数を選手が保有するという新たな体制でスタートする意向を示した。
しかし、その行く手にはさまざまな難問が山積している。
債権者となった選手たちとの交渉
米ゴルフダイジェストによると、まずリブゴルフがBCパートナーズなどから再建資金の提供を受けるためには、いくつかの条件を期限内に満たす必要があるとのこと。
その中で最も重要かつ最も難関な条件は、チャプター11申請から35日以内、つまり10月13日までに、未払い金により債権者となった選手の少なくとも半数と再建支援契約(RSA)を締結することである。加えて、その選手たちの合計債権額が全選手の債権総額の3分の2以上でなければならない。
リブゴルフは取引業者に対してのみならず、選手に対する未払い金もかさんでいることが明らかになっている。
現在のリブゴルフの資産は1億ドルから5億ドル(約156億円から約780億円)と見られているが、負債額は5億ドルから10億ドル(約1560億円)。1000人から5000人とされる債権者のリストのトップ30には14の選手名が記されている。
米紙USA TODAYによると、筆頭はジョン・ラームで債権額は約740万ドル(約11億5000万円)、ブライソン・デシャンボーは約580万ドル(約9億500万円)、ダスティン・ジョンソンは約550万ドル(約8億5800万円)、キャメロン・スミスは約480万ドル(約7億4900万円)。すでにリブゴルフから離脱したブルックス・ケプカも約170万ドル(約2億6500万円)の未払い金があることがわかった。
新生リブゴルフ「LIV 2.0」はどうなる
莫大な未払い金を抱える選手たちに「もう一度、リブゴルフを信じて、再建支援契約にサインしてほしい」と頼み込み、頷いてもらうことは、かなりの難関である。だが、この難関を期限内にクリアしない限り、BCパートナーズなどから再建資金の提供を受けることはできない。
オニールCEOは、これまでのリブゴルフを「LIV 1.0」、これから目指す新生リブゴルフを「LIV 2.0」と呼んでいる。だが、選手たちに頷いてもらおうとしている内容は、これまで「LIV 1.0」と結んでいた既存の複数年契約を一旦解除し、「LIV 2.0」と新たな契約を結んでほしいというものである。
そして、選手たちを「LIV 2.0」の過半数株主とし、選手たちによるオーナーシップ・モデルを実現しての再出発を試みている。
これまでの「LIV 1.0」においては、リブゴルフの98.48%をPIFが所有していた。しかし、「LIV 2.0」では、選手が株の52.5%を所有し、BCパートナーズと共同投資家が45%、マネジメント(経営陣)が2.5%を所有するという。選手が所有する52.5%を個々の選手にどう配分するかは、まだ明らかにされていない。
一方、7人で構成される取締役会では、BCパートナーズが3名、選手と経営陣が2名を指名、さらにリブゴルフCEO、そして残る1人は独立取締役となる。
債権者となったPIF
気になるのは、PIFの存在と関わりである。これまでPIFはリブゴルフに総額50億ドル超(約7800億円超)を投入してきたが、前述の通り今年4月に支援打ち切りを決め、リブゴルフを見捨てたと言われていた。
それなのにPIFが、破産申請を行ったリブゴルフに対し、破産手続き中の事業継続資金として4960万ドルを提供するのは、矛盾した行動のように感じさせられる。
しかし、米ゴルフドットコムによると、裁判所に提出された資料には、こんな事実が記載されていたという。
PIFは今年4月にリブゴルフへの支援を打ち切った後、6月4日にリブゴルフと担保付融資契約を結んでいる。つまり、PIFがリブゴルフに融資をしたということ。9月8日に破産申請が行われた時点で、その残高は約4億9500万ドル(約772億2000万円)に達し、それに未払い利息が加わっている。
ここでも一見、矛盾して見えるこの動きは、PIFがリブゴルフへの資金提供の形を、「出資」から「融資」へ切り替え、株主であると同時に債権者としての立場も得たことを意味している。
カギを握るのは選手たちの決断
一般的に、会社の資産から回収を受ける際の優先順位は株主より債権者のほうが高いことを考えると、PIFはこれまでのように無制限に資金を投入することを止め、優先順位を持つ貸し手としても資金を提供する立場に切り替えたのだと考えて良いのではないだろうか。
そうだとすれば、PIFはリブゴルフを完全に見捨てたわけではないのかもしれない。
ただし、どんなことをしてもリブゴルフを助けようというほどの熱意やこだわりは、おそらく無いだろうと思われる。なぜなら、そうした意思や気持ちがあるのなら、そもそも支援を打ち切ったりはしていないはずだからである。
そう考えると、もしも選手たちが35日以内という期限内に再建支援契約にサインせず、BCパートナーズなどからの本格的な再建資金の提供が行われなれば、そのときこそPIFは、リブゴルフを完全に見捨てるのではないか。
いずれにしても、カギになるのは、リブゴルフ選手たちが10月13日までに、新たな契約にサインをするかどうか。それが最初で最大の難関である。
舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。
デイリー新潮編集部
