学校内では人間関係に「序列」が生まれることも(写真はイメージです)

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 学校内の人間関係に序列が生まれる「スクールカースト」。スポーツの能力や容姿、コミュニケーション能力などによって子ども同士に見えない上下関係が生まれ、ときにいじめにもつながるとされる。

【写真を見る】高校1年生の男子のスマホには、数千枚に及ぶ盗撮画像データが…歪んだ「男同士の絆」の実態

 中学時代に深刻ないじめを経験した高校1年生の男子生徒は、進学先で「1軍男子」から女子生徒の盗撮を命じられた。「断ればまた、いじめのターゲットにされるかもしれない」。はじめはそんな恐怖心から、不本意ながら盗撮に手を染めたという。

「したくなかった。でも、あの場面ではせざるをえなかった」

 そんな少年が、なぜその後、自ら盗撮を繰り返すようになったのか。学校内のスクールカーストと「男同士の絆」は、性加害にどう結びつくのか。

 西川口榎本クリニック副院長としてさまざまな依存症治療と向き合ってきた斉藤章佳氏の新書『校内盗撮』(集英社インターナショナル)より、共学の進学校に通う高校1年男子生徒による盗撮ケースを抜粋して紹介する。【全3回の第2回。第1回から読む】

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 高校1年生の男子・木村誠也さん(仮名)の事例を挙げます。

 誠也さんは中学生時代に深刻ないじめを受けていました。そんな過酷な環境から抜け出したい一心で猛勉強し、高校受験では晴れて共学の私立進学校に合格。過去の黒歴史を葬り、真新しい生活を始めようとしていました。そして高1の夏休みが明け、2学期が始まった頃には、クラス内に明確な「スクールカースト」ができ上がっていました。

 スクールカーストとは、学校内における子どもたちのヒエラルキーです。スポーツの能力や容姿などにより、まるでインドのカースト制度のように各人が序列づけられる現象です。いわゆる「イケている」生徒が1軍と認定され、ひとたび最下層カーストに格付けられてしまったら、よほどのことがない限り、そこから脱することは難しい側面があります。

 誠也さんの学校でも、スポーツができる、偏差値が高い、容姿がいい、コミュニケーション能力が高い、家庭が裕福といった特徴を持つ男子たちが1軍に君臨。誠也さんはといえば、スポーツや勉強はこの学校では平均点よりかなり下。体格も小さく、性格もおとなしいため、1軍入りは叶いませんでした。

「また、いじめのターゲットにされるかもしれない」

 そんなある日、誠也さんは1軍男子グループのひとりから、「学年で一番かわいい女子の後ろ姿を盗撮してこい」と命じられます。「断ればまた、いじめのターゲットにされるかもしれない」。誠也さんの脳裏には、防衛反応が瞬時に働きました。いじめられる恐怖心から、彼は不本意ながらも、学校の渡り廊下を歩く女子生徒を遠くから盗撮したのです。

 撮影した画像を送ると、1軍男子たちのLINEグループへの入会を許可されました。そこで誠也さんは、「おまえは勇気がある」「さすが男だな」と称賛を浴びました。

 力を持つ同性から、初めて「男」として承認された──誠也さんは、この体験が非常に大きかったと振り返りました。その後、1軍男子たちのリクエストはエスカレートし、よりきわどい画像や動画を盗撮するよう、誠也さんは要求されるようになりました。初めこそ罪悪感はありましたが、「1軍男子に認められたい」という思いから、誠也さんは学校外でも盗撮を繰り返すようになりました。

 ある日の通学中のこと。誠也さんは電車内で他校の女子生徒を盗撮していたところ、会社員に見つかり、鉄道警察隊へ連行されました。知らせを受けて駆けつけた母親に対し、警察官は「お母さん、この子はまたやりますよ」と言い放ちました。その根拠は、誠也さんのスマートフォンに保存された数千枚に及ぶ盗撮画像データでした。

盗撮画像によって深まる「男同士の絆」

 私のクリニックを訪れた誠也さんは、色白で小柄な、声の小さな少年でした。「盗撮をしたかったのですか?」という私の問いに、彼は「したくなかった。でも、あの場面ではせざるをえなかった」と声を絞り出すように答えました。しかし、盗撮を繰り返すうちに、男子グループ内で承認を得る快感や、自分が盗撮した画像によって「男同士の絆」が深まるような感覚にのめり込み、引き返せなくなってしまったのです。

 ちなみに、彼が盗撮した画像の多くには、女性の顔は映っていません。記録されているのはスカートの中、つまり記号化された身体の一部ばかり。そこには人格を持った人間が存在しないのです。女性を「モノ」として扱い、そのデータを共有することで深め合う男同士の絆──誠也さんの話からは、そんな歪んだ価値観が浮かび上がってきました。

 男同士の絆を深め合う関係性を、社会学的には「ホモソーシャル」といいます。男子生徒同士で「クラスのあの子はかわいい」「あいつはブスだ」「あいつは胸がでかい」など、女性をネタにして値踏みする。友人同士で「何人の女性と性的関係を持ったか?」と競い合う。これらは、いずれもホモソーシャルなコミュニティで消費される情報としてはおなじみです。ここでは、女性はひとりの人間ではなく、男性が「俺はこれぐらいすごいんだ」と自らの男性性を仲間に証明するための、戦利品に他なりません。

男女平等の建前と、「一人前の男として認められたい」というもがき

 この構造は、誠也さんのLINEグループ特有のものではなく、大人の社会にも厳然として残っているものです。男同士で連れ立って性風俗店を利用し、「あそこの女はどうだった?」など感想と秘密を共有するのも、その一例です。

 誠也さんのように、本来は誰かを傷つけたいわけではない少年ですら、この「男同士の絆」というプレッシャーに晒されると、目の前の女性の痛みに蓋をしてしまいます。誠也さんは小学校の頃からジェンダー平等の教育を受けてきた世代ですが、男女平等の建前と、「一人前の男として認められたい」という「有害な男らしさ」との狭間でもがいていました。

 彼自身は、こうした板挟みの状況を明確に言語化できませんでしたが、それでも「盗撮をやめたい」と切実に訴えていました。子ども同士の校内盗撮から見えてくるのは、男尊女卑がいまだ根強い、日本社会の縮図そのものでした。

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 第3回では、男性ばかりを狙って盗撮を繰り返していた会社員の事例を取り上げる。男性社員寮への侵入を皮切りに、サウナや公衆浴場でも犯行を重ねていた。男性もまた「撮られる側」になりうる──多くの男性が想像すらしていない、その現実とは。

(第3回につづく)