「日本から300人? クレイジー!」モルック世界大会で日本勢が1、2位独占…発祥国フィンランドを驚かせた“異常な人気”のワケ

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フィンランド発祥の遊び「モルック」の第21回世界大会が8月14~16日、ヘルシンキで開かれた。日本からは開催国フィンランドの次に多い63チーム、約300人が参加し、決勝に勝ち進んだ2チームはいずれも日本勢。優勝、準優勝を独占し、現地でも大きな存在感を放った。なぜ、モルックは発祥国から遠く離れた日本で、ここまで熱狂的に支持されるようになったのか。世界大会の会場から、その人気の理由に迫った。

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開催国に次ぐ日本勢63チーム…会場で際立った“本気のモルック”

モルックはフィンランド発祥の遊びだ。3.5メートル先に並べた12本のピンに木の棒を投げ、倒れた本数や書かれた数字で得点を競う。フィンランド人ならだいたい知っている遊びでもある。

今大会には512チームがエントリー。直前のキャンセルを経て、実際に本戦を戦ったのは479チームで、世界選手権と国別対抗戦を合わせ24か国から選手が集まった。

そんな世界大会で、開催国フィンランドに次いで多かったのが日本だ。

モルック世界大会は、1チーム4~6人で編成され、1チームあたり120ユーロ(約2万2200円)の参加料を払えば誰でも自由にエントリーできる。世界大会は毎年開催されており、3年に1度、発祥地であるフィンランドで開催された。2年前には初めて日本・函館で開かれた。

今年はモルック発祥の地での開催に加え、会場が日本からの直行便のあるヘルシンキで、大会日程がお盆休みとも重なったことから、日本人の参加者が増えたという。

会場は、ヘルシンキ市内のカピュラ運動公園。大会期間中の気温は20度前後で、会場内にはビールやソーセージなどの屋台も並び、モルックだけでなく、青空の下のテーブルでビールを飲みながら、長い夏の日を楽しむ参加者もいた。

さらに特徴的なのは年齢層が幅広く、子どもや大学生など若者参加者からシニア世代までいることだ。各々、モルックやチーム名、お国名物などをあしらった個性豊かなユニフォームを着て、あちこちから歓声が聞こえた。その中で目についたのは黒い髪と、サングラスで紫外線対策もばっちりの日本の参加者たちだった。

兵庫県から来たという参加者は、練習をしようと初日の開会式の2時間前(午前8時半)に会場に着いて驚いたという。

「もう、日本の人たちが来て練習してました」

日本チームの試合には、どこか緊張感が漂う。3.5メートル先のピンを狙って、投げる前にタンチョウのような独特のポーズを取る人もいる。モルック棒を投げるたびに「よしっ」と周囲から声が飛び、なかには試合の様子をライブ配信する人もいた。

「日本から300人? クレイジー!」

会場に隣接するグラウンドで行われていた子どものサッカーの試合を見た帰り、偶然通りかかったフィンランド人のピーアさんは、テレビで世界大会のニュースを見たという。

日本から300人の参加者が来ていることを伝えると「えっ、日本からモルックに300人も? クレイジー!」と叫んだ。「でもまあ、分かる気がする。モルックって一投で勝敗が変わるし、誰でも勝つチャンスがある。簡単なのにハマるんだよね」と納得した様子。

勝敗だけでなく、モルック仲間との交流を楽しみにしている人たちもいる。試合が終わると、お互いの健闘を称え、ユニフォームや手作りのバッジを交換したりする。

兵庫県から来た「武庫川モルックマメシーバ」代表の内藤平さんは、大会で出会った人たちに配るポロシャツをたくさん作って、持ってきていた。

「今はモルックで飯を食ってます」

内藤さんはコロナ禍でモルックと出会って、すぐに虜になった。昨年ポーランドで開かれた世界大会ではチームが3位に。自治体から町おこしや地域活性化を目的とした体験会を依頼されたり、学校や高齢者施設で講習会を開いたりするほか、大会の主催もしているという。

「モルックは運もあるけど戦略も必要で、簡単なように見えて奥が深い」「今から始めても、世界大会に出られる(2022年までは、日本モルック協会を通じて世界大会に出場した時点で「モルック日本代表」と名乗ることができた)」「試合をしたら、同じチームとも相手チームの人とも仲良くなれる」──。モルックの良さを聞くと、参加者からは次々と答えが返ってくる。真剣勝負を楽しむ人もいれば、和気あいあいと交流を楽しむ人もいる。それぞれが思い思いにモルックを楽しんでいるようだ。

参加者に話を聞いていると、「モルックでパートナーと知り合った」という人にも出会った。京都から来たRYOさんだ。6年前に始めたモルックを通じて彼女と出会い、今大会には同じチームで参加。帰国後に結婚するそうだ。

「特に記念品を買うつもりはないですが、一緒にフィンランドに来られたことがプレゼントかな」

「老後の楽しみにと思っていたのにうれしい誤算」

日本にモルックを広めた小児科医の八ツ賀秀一さんも、参加者の1人として会場にいた。18年前、フィンランド留学中にモルックと出会った。帰国後には、日本モルック協会を立ち上げ、モルック体験会や大会を開いて少しずつ広めてきた。八ツ賀さんは「最初は、老後の楽しみに、モルックで遊べる仲間が増えたらいいな、という思いでした」と話す。

八ツ賀さんによると、日本でモルックの人気が爆発したのは2019年ごろ。お笑いコンビ「サンドウィッチマン」の富澤たけしさんがテレビのロケでモルックを体験し、その面白さを「さらば青春の光」の森田哲矢さんに勧めたことがきっかけだった。森田さんはその後、体験会に参加し、2019年には世界大会にも出場。自身でも積極的に発信し、モルックがテレビなどで取り上げられるようになっていった。

これに対し、八ツ賀さんは「こんなに急に広まるとは思っていなくて……正直手がまわっていません」と笑う。近年のモルック人気を感じるのは、体験会が満員になったり、公式大会の申し込みが数分で埋まるときだという。

今では、自治体の地域おこしや学校、介護施設などでのレクリエーションでもモルックは大人気だ。2025年に行なった協会の調査によれば、国内で過去に一度でもモルックをしたことがある人は約362万人。毎週末のように、日本のどこかでモルックの大会が開かれているそうだ。

「ガチ勢」も「エンジョイ勢」も、どちらも必要だと八ツ賀さんは考えている。好きなように、自由に楽しめることこそが、モルックらしさなのかもしれない。

「自分が好きになったモルックを、みんなが楽しんでくれているのがうれしいです」

なぜ日本でモルックは広がった? 海外参加者も驚くその熱気

取材を総合すると、日本でモルックが広がった背景には、いくつもの要因が重なっていたということだ。「性別や年齢、運動経験など関係なく勝負できる」「広いコートや特別な競技場が必要ない」「遊びとしても、ニュースポーツとしても楽しめる」というモルックそのものの魅力に加え、テレビ番組で繰り返し取り上げられ、SNSや動画配信を見て興味を持つ人が増えた。

さらに、日本モルック協会や各地の愛好家による体験会や大会などが各地で開かれ、自治体の地域おこしや高齢者施設などでも積極的に取り上げられるようになった。エントリーすれば、自由に「世界大会」にも出られる間口の広さも、日本で人気に火がついた理由の一つだろう。

日本でのモルックの盛り上がりは、フィンランドはもちろん、他の国からも注目されている。オーストラリアから参加したショーンさんは、映像制作の仕事をしていて、オーストラリアでモルック人気が高まり始めた6年ほど前から競技を追い、ドキュメンタリー作品も制作した。「日本では、モルックの動画やライブ配信がよく見られているでしょう。オーストラリアでも日本みたいにバズってほしいな」と話す。

さらに大会会場を散策してみると、すれ違う参加者たちから次々に握手を求められている年配の選手がいたので話を聞いてみた。昨年のポーランド大会などで2度優勝、数々の入賞経験を持つフィンランドのヤコさんだった。

筆者が日本人と分かると、「日本の人たちから、たくさんお土産をもらいましたよ」と、ポーチに入ったクッピーラムネやボーロの小袋を見せてくれた。

ヤコさんはかつては毎日50投ほど、今も10投はモルック棒を投げているという。世界王者ともなれば、やはり日々モルック棒を投げ込んでいるようだ。「今度、私の68歳の誕生会でもモルックやるんだよ」という。

「今年も優勝を目指していますか?」と聞くと、笑いながら「一番大事なのは、次の試合。そしてもっと大事なのは、次に投げる一投です」と言った。そして最後に、日本の“モルッカー”たちへエールを送った。

「こんにちは、日本のみなさん! 次の試合で会えるのを楽しみにしていますね!」

取材・文・写真/堀内京子