企業から出る廃材を使って、子どもたちにアートと遊びの場を提供する女性がいます。自身も大きな病を乗り越えて続ける活動には、捨てられるはずのモノと人の思いをつなぐ”優しい循環”がありました。



■想像力は無限大…廃材が子どもたちのアートに




 今年5月、名古屋・栄で開かれた「まちなかこどもアトリエ」。屋外で子供たちがスポンジやリボンなどの素材を使って、工作をするイベントです。




カプセルトイで出たお題をもとに想像力を膨らませて、作品を完成させます。

並んだ素材をよく見ると、布の端切れや、牛乳瓶のふたも。実は、企業などから出た「廃材」です。




捨てられるはずのものが、子どもたちの想像力で新たな作品へ。取り組みを始めたのは、名古屋市内に住む、伊藤菜津美さん。自身も2人の子供を育てるお母さんです。




伊藤さん:
「娘が(工作が)すごく大好きで、同じようにこういうことが好きな子が集まって一緒に遊んだらいい刺激になったり、親もその場をシェアできるっていいなと」



■わずかな傷でも廃棄…“有効活用”でコスト削減や地域貢献にも




 伊藤さんの活動を支えているのが、廃材を提供する企業です。

愛知県大治町にある創業120 年の老舗缶メーカー「側島製罐(そばじませいかん)」

文房具や、お菓子などを入れる缶を作る会社です。

缶を作る際にできた小さな傷や、印刷の不良。これらの缶はすべて捨てられてしまいます。




側島製罐・広報 中村菜摘さん:
「弊社では人の目で検品をしているんですけど、そこで出てきた細かな傷だったり、廃材とされているので、捨ててしまう」

そんな「廃材」を、子供たちの遊びにつなげたいと、伊藤さん自ら企業に声をかけてアプローチ。企業も廃棄コストの削減だけでなく、地域貢献にもつながるとして、無償で提供しています。

側島製罐・広報 中村菜摘さん:
「廃材っていわばゴミになってしまうような、回収されてしまうものなんですけど、それが子供たちの手でどのように生まれ変わるのかと、ワクワクする企画だなと」



■チアドラでも活躍…突然襲った“病魔”




 伊藤さんがこの活動に力を入れるきっかけは、2年半前。大きな病を経験したことでした。

伊藤さん:
「熱がぱっと高熱がでて、2日くらい家で様子を見てくださいっていって、本当に様子を見ていたら、だんだんこっちが動かなくなってきちゃって。心臓に菌のすみかができる、”感染症心内膜炎”っていう病気だったんですけど、血栓が脳に飛んじゃって脳出血しちゃって、それが原因で左半身マヒ」

体を動かすことが好きで、幼いころからの夢はダンサーでした。テーマパークのダンサーや、チアドラゴンズなどでも活躍していました。




結婚し、子どもが生まれ、いつか子どもたちにダンスを教えたいと思っていた矢先、左半身マヒに…。

伊藤さん:
「子供がもう少し大きくなって、夕方の時間に自分の体があくようになったら、またチアのスクールをやりたいくらいの気持ちで思っていたんですけど、実際にダンスという武器を失ったんだなと思ったときはショックでした」




そんな中、心の支えになったのが、育児中、子どもたちとしていた工作遊びでした。

伊藤さん:
「自分の視野が開けたというか、子どもの様子を見て、こんなに身近に幼児でもできるこんなものあったんだと、(ダンスが)なくなってしまって、ある意味心の支えになったというか、今まで蓄積してきたものがゼロにはならなかったんだなっていう安心の場所というか、だいぶ助けられました」




アートの活動をしていく中で、企業からたくさんの廃材が出ることを知った伊藤さん。

自ら情報を集めては営業をかけ、いまでは繊維の商社や段ボールを作る会社など11社が活動に協力するまでになりました。



■捨てられるはずのモノが…再び輝きを



 8月10日、愛知県日進市で開いたイベント

伊藤さん:
「(サンプル)作りました。なかなかどうやって使っていいか、子供に伝わっていなくて、手が止まる子もいるので、布はこうやって貼るとかわいいよとか」

夏休みとあって、スタートと同時に親子連れでいっぱいに。




側島製罐の「缶」も、子供たちの発想力で、生まれ変わりました。

女の子:
「(これは何?)お顔~、楽器!」
母親:
「使わなくなったものがこうやって、子供たちが使えるようになるのは、すごくいいなと思います。ありがたいです」

女の子:
かき氷、ブルーベリー。楽しかったです」

男の子:
「変なかき氷
父親:
「家だと整えられないものがいっぱいあるので、自由にクリエイティブに作らせてもらえるので、ありがたいなと」

廃材から生まれる無限のアイデア。捨てられるはずのモノが輝きを取り戻す、そんな優しい循環が広がっています。




伊藤さん:
「この活動が、子育て世代だけのものじゃなくて、いろんな企業にも知ってもらう。子供の遊びの大切さとかにも気づいてもらったりとか、地域を巻き込みたい気持ちがあるので、どんどんいろんな人に、“いい循環”でできたらいいなと思っています」

2026年8月20日放送