預金獲得戦略を強化するメガバンクの看板(7日、東京都江東区で)

写真拡大

 銀行の預金獲得競争が激しくなっている。

 個人向け国債やNISA(少額投資非課税制度)などで投資する人が増える中、メガバンクだけでなく、ネット銀行や地方銀行も含めて、預金金利の優遇やポイント付与などを相次いで打ち出している。(長原和磨、岡田実優)

顧客囲い込み

 みずほ銀行は7日、東京都内で個人客向けの戦略発表会を開き、「貯蓄預金」に金利を上乗せするキャンペーンを行うと発表した。

 貯蓄預金は、給与振り込みや公共料金の支払いといった決済機能を持たない代わりに、預金額に応じて普通預金より高い金利を段階的に設定する商品だ。送金に使われないため、コストが低く、残高が比較的安定することもあって高い金利の設定が可能になる。

 低金利時代は普通預金と同等の金利水準だったが、8月までに、貯蓄預金の金利を300万円以上の場合、年0・45%にするなど普通預金の年0・4%よりも有利な設定にした。普通預金よりも高い金利にしたのは約16年半ぶりだ。

 新規で貯蓄預金の受け付けをしているのはメガバンクでみずほ銀のみ。今回の約3か月間のキャンペーンではさらに金利を2倍の年0・9%として、まとまった預金の獲得を目指す。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は個人向け総合金融サービス「エムット」の中で、資産残高が3000万円以上などの顧客を対象に会員組織を来年3月に設立するなど、一定規模の預金が見込まれる富裕層を囲い込む戦略だ。資産残高に応じてポイント還元率(最大1・6%)が上がるプラチナカードも発行する。

 三井住友FGも「Vポイント」を軸に顧客との接点を強化し、3月にはキャッシュレス決済のPayPay(ペイペイ)のポイントとの等価交換も始めるなどグループのサービスを組み合わせ、預金を含めた顧客の獲得を狙う。

個人向け国債

 背景には、環境の変化がある。銀行は顧客から集めた預金を企業などへの貸し出しに回し、預金金利と貸出金利の差である「利ざや」を収益源としている。

 日銀が2024年3月に金融緩和路線を転換して貸出金利が上昇する中、収益拡大のため、貸し出しの原資となる預金の確保が急務となった。

 一方で、個人にとっては金利の上昇もあって、高い利回りが期待できる金融商品が増え、投資も活発になっている。

 個人向け国債の26年度の発行額は9月発行分までで約5・1兆円に上り、19年ぶりの高水準だった25年度の1・8倍のペースとなっている。NISAの累計買い付け額も25年末時点で前年比36%増の71兆円、口座数は10%増の2820万口座に上り、銀行業界にとっては、その分、預金から資金が流出する恐れがある。

メガバンク以外も

 預金確保に向けた取り組みはメガバンク以外にも広がる。

 楽天銀行は8月、銀行口座とグループの証券口座を連結させるなどの条件を満たした普通預金の金利を最大0・74%まで引き上げた。地銀でも島根銀行が7月にスマホ専用銀行の普通預金金利を0・8%にしたほか、ふくおかFGは傘下のスマホ専用銀行「みんなの銀行」で7月、一部顧客向け貯蓄預金の金利を0・9%に引き上げている。

 金利上昇が続けば、家計の資金移動はさらに活発になる可能性もある。「預金の獲得と運用商品の販売を合わせ、どれだけ銀行を使ってもらえるかが重要だ」(みずほ銀の猪股尚志副頭取)としており、個人マネーを巡る争奪戦はさらに激しさを増しそうだ。