大手求人サイトに「特殊詐欺の募集」が だまされた60代男性 「1日14時間電話をかけ続け、居眠りするとスタンガン」という過酷な労働環境
いくら闇バイトが“流行”しているとはいえ、さすがに人生経験豊富なシニア世代が巻き込まれることはない--。そう高みの見物を決め込んでいる人がいるとしたら、少々認識を改めてもいいかもしれない。確かに8月にも15歳の少年が逮捕されるなど、闇バイトの低年齢化は進むばかりだが、極秘捜査資料は語る。高齢者も危ない、と。
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手元にある警視庁「匿名・流動型犯罪グループ対策本部」が作成した極秘捜査資料には、〈60代男性・架け子〉の話としてこう記されている。
〈ベトナムの生産管理の仕事に応募したところマレーシアに連れて行かれる。詐欺の仕事をするよう強要されて殴られ、カンボジア(ポイペト)の拠点に閉じ込められる〉

〈令和8年5月〉の日付が入った同資料は、意図せずに海外での闇バイトに引きずり込まれた人たちの証言集で、特殊詐欺グループがいかにして一般人に犯罪の片棒を担がせようとするか、その詳細がまとめられている。つまり、還暦を超えた男性までが特殊詐欺グループに欺(あざむ)かれ、偽の電話をかけて“獲物”を狙う架電役を強要されたというわけだ。
仕事内容を見ただけで「おかしい」と気付くのは難しい
「男性は求人サイトで、ベトナムの工場で製造から梱包までの工程を管理する生産管理の仕事を見つけ、疑うことなく応募してしまいました」
と、捜査関係者は補足する。
「海外での仕事だったため、パスポート番号を教えることにも抵抗を感じなかった。送られてきた航空券はマレーシア行きのものでしたが、経由するだけだろうとその便に搭乗。しかし、現地の空港で出迎えた男に暴行を加えられるなどして、やむなくカンボジア西部の町・ポイペトに連れて行かれかけ子をさせられたのです」
まさか“いい大人”がそう簡単にだまされるとは、という気がしなくもないが、捜査関係者はこう続ける。
「その闇バイトが掲載されていた求人サイトは大手のもので“信頼度”も高く、仕事内容を見ただけでは私でも『おかしい』と気付けないと思います。とにもかくにも、求人をしている会社が本当に実在するのか念入りに確認することが重要です」
なお捜査資料によると、結局この60代の男性は、〈契約書には、毎月3000ドル(基本給)〉などと書かれていたが、報酬を〈ほとんど貰っていない〉という。
スタンガンも使われ
無論、特殊詐欺グループが“リクルート”する対象が高齢者だけでないのは言うまでもない。
〈30代男性・架け子(見習い)。SNSで知り合った男から「カンボジアでホテルのレビューを書く仕事があるからやらないか」と誘われる〉
〈40代男性・見張り。カンボジアのカジノに出入り。ボスと称する中国系の男から「簡単な仕事を紹介するので一緒に住まないか」と誘われパスポートを預けた〉
〈20代女性・架け子。X(旧Twitter)で「電話相談」「最大3ヶ月から6ヶ月」「月150万円から300万円稼げる」とのアルバイト募集を見て応募〉(いずれも捜査資料より)
そんな彼らの末路は、〈「お前達はだまされたんだよ。ここで1年間働いてもらう」と言われ〉、〈見張り役が試験官のように架け子の背後を歩いて監視しており、居眠りした場合は罰金、2度目からはスタンガンを当てられ〉、〈デスクに向かって1日約14時間電話をかけ続け〉(同)るといった悲惨なものに。とどのつまり、「老いも若きも、闇バイトのわなは近くに潜んでいる」(前出捜査関係者)のである。
特殊詐欺、巻き込まれるのは特殊でなし。
「週刊新潮」2026年9月3日号 掲載
