第49回「大分」日本一の「おんせん県」とも呼ばれるエリアだというこの地の本棚には、どんな本が並んでいるのか?【あの町の本棚】
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年9月号からの転載です。
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今回の舞台である「大分県」は日本一の「おんせん県」とも呼ばれるエリア。県内の市町村ほぼすべてで温泉が湧き、源泉数、湧出量ともに全国第1位だという。 故に観光客も多く、各所で客をもてなす取り組みがなされている。そんな大分県で生きる人々は、どういった本を愛するのか。本棚を少しだけ覗かせてもらおう。
■高崎山自然動物園の皆さん


『街から山、川、海まで 知っておきたい身近な自然の法律 いきものづきあいルールブック』
野鳥の雛は保護してもいいの? 昆虫採集はどこでもできる? 野生のいきものとの付き合い方を、法律とマナーの観点から徹底解説する。「野生動物と人との関わり方に興味があり読み始めました。イラストを交えた説明で、読みやすい一冊です」(大槻高嶺さん)

『星の王子さま』
砂漠に飛行機で不時着した“僕”が出会ったのは、小さな星の王子さまだった--。世界中で愛される、宝石のような物語。「子どもの頃には気づかなかったメッセージが、大人になると一つ一つ心に届きます。心が濁ったときにおすすめです」(菅本夕子さん)

『バカの壁』
人はなぜ対立してしまうのか。話が通じないのは、そこに“バカの壁”が立ちはだかっているから--。世界の見え方が変わる一冊。「学生時代の恩師から、社会人になる前に読んでおくべきと紹介された一冊。読むたびに新たな自分に気づかされます」(髙藤睦未さん)
[高崎山自然動物園]
〒870-0802 大分市神崎3098-1 ☎097-532-5010 HP:https://www.takasakiyama.jp
2つの群れからなる約800頭の野生のニホンザルを間近で観察できる。スタッフによるユーモアを交えた解説も好評で、高崎山の雄大な自然と野生のニホンザルの生態や習性を楽しく学ぶことができ、小さい子どもから大人まで楽しめる。
■昭和ロマン蔵の皆さん


『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
廃業した雑貨店、そこはかつて人々の悩み相談を請け負う店だった。そこに集うのは人生最大の岐路に立つ人々。時空を超えて、最後の奇蹟が起こる。「昭和の町が持つ懐かしさと温もりが重なる一冊です。手紙を通して時を超え繋がる心温まる感動ストーリー」

『夜は短し歩けよ乙女』
“黒髪の乙女”に恋心を抱く“先輩”は、京都の町並みに彼女の姿を追い求める。頻発する偶然の出会い。しかし彼女は「奇遇ですねえ!」と言うばかりで……。「昭和レトロな空気感と、ポップで奇想天外なファンタジーが融合! 読んだ後は夜の街を歩きたくなります!」

『旅猫リポート』
瀕死の自分を助けてくれた青年サトルと暮らしはじめた、野良猫のナナ。それから5年が経ち、とある秘密を抱えたサトルは、ナナを手放そうとする。その秘密とは一体--。「豊後高田市ののどかな風景を思わせる、温かくも切ない一人と一匹の絆に泣けます」
[昭和ロマン蔵]
〒879-0628 豊後高田市新町989-1 ☎ 0978-23-1860(豊後高田市観光まちづくり株式会社)
HP:https://www.city.bungotakada.oita.jp/site/showanomachi/15034.html
大分県きっての大金持ちといわれた「野村財閥」が1937年に米蔵として建てた旧高田農業倉庫を改修した施設。博物館や昭和のレトロファッションが体験できるスペースなど、昭和のお宝が詰め込まれている。
■松本記念児童図書館 おじいさんの杜の皆さん


『しろいうさぎとくろいうさぎ』
森に住む2匹のうさぎは、いつも仲良く遊んでいた。でも、くろいうさぎはたびたび悲しそうな顔をする。それはどうして? 心に光を灯す、愛情に満ちた一冊。「モノクロ調の優しく愛らしいうさぎたちの絵に心が癒やされ、大切な人を思う気持ちの尊さを教えてくれます」

『ドリトル先生航海記』
動物と話ができる博物学者・ドリトル先生。彼との出会いにより、スタビンズ少年の心躍る冒険の日々が幕を開けていく。「スタビンズ少年が先生や個性豊かな動物たちとの出会いを通して成長する姿が印象的で、井伏鱒二の名訳が物語を豊かに彩ります」

『点子ちゃんとアントン』
親に隠れて、夜遅くに街角でマッチ売りをする点子ちゃんと、貧しいアントン少年。二人はそれぞれに悩みを抱えながらも、大人たちと対峙していく。「子どもたちの無垢な友情と相手を思う誠実な心が、周囲の大人たちを変えていく、子どもの力のすごさを感じます」
[公益財団法人得愛会 松本記念児童図書館 おじいさんの杜]
〒874-0931 別府市西野口町4-1 ☎0977-21-4646 HP:https://ojiisannomori.com
1985年に開館した、大きな木に囲まれた子どものための私立の図書館。中学生以下であればだれでも利用できる。
■カモシカ書店 店主 岩尾晋作さん


『ボン書店の幻─モダニズム出版社の光と影』
1930年代に存在していた、小さな出版社・ボン書店。そこで身を削るようにして名著を送り出してきた刊行者“鳥羽茂”の正体を繙く。「一人は人生を懸けて本を作り、一人は執念でその足跡を拾い集めた。誰に頼まれたわけでもないふたりの仕事が、終点で一致する」

『人間の土地』
職業飛行家としての経験を綴った、名エッセイ集。人間が生きるとはどういうことなのか、冷静な目線から、その本質へと迫る。「サン=テグジュペリは飛行機を“世界を征服する機械”として書かない。“世界を理解する道具”として書く。僕はAIも同じだと思う」

『マルテの手記』
近代都市パリに暮らしながら、孤独に苛まれている青年作家マルテ。その心情を描き切る手記体小説。「詩人の目を通して、人や街や死や記憶を深く見つめると、なぜ今もなお、人は文章を書き続けるのかが少しわかる。読む本というより、じわじわと付き合う本だ」
[カモシカ書店]
〒870-0035 大分市中央町2-8-1-2F ☎097-574-7738 HP:https://kamoshikabooks.com
古書と新刊を取り扱う書店。読書専用カフェも併設している。「本を売ることも、買い取ることも、人から人へ受け継ぐことです。我々は、本よりも読書を信じ、その静かな循環を未来へつないでいきたい」
■あの町と本にまつわるアレコレ
2009年に連載がはじまり、2021年に物語を完結させるまで世間を熱狂させ続けた『進撃の巨人』。その作者である諫山創は大分県を代表するマンガ家のひとりだ。出身地である日田市は作品との大々的なコラボを展開しており、なかでも注目はサッポロビール九州日田工場内にあるミュージアム。作品への没入体験ができるイマーシブコミックの上映や、作者のコメント付きで印象的なシーンを紹介する展示などがあり、いまでも足を運ぶファンが後を絶たない。
他にも大分県に縁のあるマンガ家は多く、『ReLIFE』の夜宵草、『DRAGON QUEST-ダイの大冒険-』の三条陸、『デトロイト・メタル・シティ』の若杉公徳、『魔法陣グルグル』の衛藤ヒロユキ、そして特徴的な絵で世の中を風刺してきた大御所・富永一朗などが名を連ねる。
それから非常に面白いところでいうと、けらえいこによる人気長編『あたしンち』に登場するタチバナ家の母と父はともに大分県出身という設定だ。作品はけらの家族がモデルになっており、実の両親も大分出身なのだとか。作中には大分の方言を巡るユニークなエピソードもあり、地元の人たちからすれば大分愛が感じられるだろう。
意外なことに(?)数々のマンガと縁の深い大分県。他にも「これも大分です!」という作品があったら、こっそり教えてください。
構成・文:イガラシダイ イラスト:千野エー

『進撃の巨人』

『ReLIFE』

『デトロイト・メタル・シティ』

『魔法陣グルグル』

『あたしンち』
構成・文:イガラシダイ イラスト:千野エー
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今回の舞台である「大分県」は日本一の「おんせん県」とも呼ばれるエリア。県内の市町村ほぼすべてで温泉が湧き、源泉数、湧出量ともに全国第1位だという。 故に観光客も多く、各所で客をもてなす取り組みがなされている。そんな大分県で生きる人々は、どういった本を愛するのか。本棚を少しだけ覗かせてもらおう。
■高崎山自然動物園の皆さん


野鳥の雛は保護してもいいの? 昆虫採集はどこでもできる? 野生のいきものとの付き合い方を、法律とマナーの観点から徹底解説する。「野生動物と人との関わり方に興味があり読み始めました。イラストを交えた説明で、読みやすい一冊です」(大槻高嶺さん)

砂漠に飛行機で不時着した“僕”が出会ったのは、小さな星の王子さまだった--。世界中で愛される、宝石のような物語。「子どもの頃には気づかなかったメッセージが、大人になると一つ一つ心に届きます。心が濁ったときにおすすめです」(菅本夕子さん)

人はなぜ対立してしまうのか。話が通じないのは、そこに“バカの壁”が立ちはだかっているから--。世界の見え方が変わる一冊。「学生時代の恩師から、社会人になる前に読んでおくべきと紹介された一冊。読むたびに新たな自分に気づかされます」(髙藤睦未さん)
[高崎山自然動物園]
〒870-0802 大分市神崎3098-1 ☎097-532-5010 HP:https://www.takasakiyama.jp
2つの群れからなる約800頭の野生のニホンザルを間近で観察できる。スタッフによるユーモアを交えた解説も好評で、高崎山の雄大な自然と野生のニホンザルの生態や習性を楽しく学ぶことができ、小さい子どもから大人まで楽しめる。
■昭和ロマン蔵の皆さん


廃業した雑貨店、そこはかつて人々の悩み相談を請け負う店だった。そこに集うのは人生最大の岐路に立つ人々。時空を超えて、最後の奇蹟が起こる。「昭和の町が持つ懐かしさと温もりが重なる一冊です。手紙を通して時を超え繋がる心温まる感動ストーリー」

“黒髪の乙女”に恋心を抱く“先輩”は、京都の町並みに彼女の姿を追い求める。頻発する偶然の出会い。しかし彼女は「奇遇ですねえ!」と言うばかりで……。「昭和レトロな空気感と、ポップで奇想天外なファンタジーが融合! 読んだ後は夜の街を歩きたくなります!」

瀕死の自分を助けてくれた青年サトルと暮らしはじめた、野良猫のナナ。それから5年が経ち、とある秘密を抱えたサトルは、ナナを手放そうとする。その秘密とは一体--。「豊後高田市ののどかな風景を思わせる、温かくも切ない一人と一匹の絆に泣けます」
[昭和ロマン蔵]
〒879-0628 豊後高田市新町989-1 ☎ 0978-23-1860(豊後高田市観光まちづくり株式会社)
HP:https://www.city.bungotakada.oita.jp/site/showanomachi/15034.html
大分県きっての大金持ちといわれた「野村財閥」が1937年に米蔵として建てた旧高田農業倉庫を改修した施設。博物館や昭和のレトロファッションが体験できるスペースなど、昭和のお宝が詰め込まれている。
■松本記念児童図書館 おじいさんの杜の皆さん


森に住む2匹のうさぎは、いつも仲良く遊んでいた。でも、くろいうさぎはたびたび悲しそうな顔をする。それはどうして? 心に光を灯す、愛情に満ちた一冊。「モノクロ調の優しく愛らしいうさぎたちの絵に心が癒やされ、大切な人を思う気持ちの尊さを教えてくれます」

動物と話ができる博物学者・ドリトル先生。彼との出会いにより、スタビンズ少年の心躍る冒険の日々が幕を開けていく。「スタビンズ少年が先生や個性豊かな動物たちとの出会いを通して成長する姿が印象的で、井伏鱒二の名訳が物語を豊かに彩ります」

親に隠れて、夜遅くに街角でマッチ売りをする点子ちゃんと、貧しいアントン少年。二人はそれぞれに悩みを抱えながらも、大人たちと対峙していく。「子どもたちの無垢な友情と相手を思う誠実な心が、周囲の大人たちを変えていく、子どもの力のすごさを感じます」
[公益財団法人得愛会 松本記念児童図書館 おじいさんの杜]
〒874-0931 別府市西野口町4-1 ☎0977-21-4646 HP:https://ojiisannomori.com
1985年に開館した、大きな木に囲まれた子どものための私立の図書館。中学生以下であればだれでも利用できる。
■カモシカ書店 店主 岩尾晋作さん


1930年代に存在していた、小さな出版社・ボン書店。そこで身を削るようにして名著を送り出してきた刊行者“鳥羽茂”の正体を繙く。「一人は人生を懸けて本を作り、一人は執念でその足跡を拾い集めた。誰に頼まれたわけでもないふたりの仕事が、終点で一致する」

職業飛行家としての経験を綴った、名エッセイ集。人間が生きるとはどういうことなのか、冷静な目線から、その本質へと迫る。「サン=テグジュペリは飛行機を“世界を征服する機械”として書かない。“世界を理解する道具”として書く。僕はAIも同じだと思う」

近代都市パリに暮らしながら、孤独に苛まれている青年作家マルテ。その心情を描き切る手記体小説。「詩人の目を通して、人や街や死や記憶を深く見つめると、なぜ今もなお、人は文章を書き続けるのかが少しわかる。読む本というより、じわじわと付き合う本だ」
[カモシカ書店]
〒870-0035 大分市中央町2-8-1-2F ☎097-574-7738 HP:https://kamoshikabooks.com
古書と新刊を取り扱う書店。読書専用カフェも併設している。「本を売ることも、買い取ることも、人から人へ受け継ぐことです。我々は、本よりも読書を信じ、その静かな循環を未来へつないでいきたい」
■あの町と本にまつわるアレコレ
2009年に連載がはじまり、2021年に物語を完結させるまで世間を熱狂させ続けた『進撃の巨人』。その作者である諫山創は大分県を代表するマンガ家のひとりだ。出身地である日田市は作品との大々的なコラボを展開しており、なかでも注目はサッポロビール九州日田工場内にあるミュージアム。作品への没入体験ができるイマーシブコミックの上映や、作者のコメント付きで印象的なシーンを紹介する展示などがあり、いまでも足を運ぶファンが後を絶たない。
他にも大分県に縁のあるマンガ家は多く、『ReLIFE』の夜宵草、『DRAGON QUEST-ダイの大冒険-』の三条陸、『デトロイト・メタル・シティ』の若杉公徳、『魔法陣グルグル』の衛藤ヒロユキ、そして特徴的な絵で世の中を風刺してきた大御所・富永一朗などが名を連ねる。
それから非常に面白いところでいうと、けらえいこによる人気長編『あたしンち』に登場するタチバナ家の母と父はともに大分県出身という設定だ。作品はけらの家族がモデルになっており、実の両親も大分出身なのだとか。作中には大分の方言を巡るユニークなエピソードもあり、地元の人たちからすれば大分愛が感じられるだろう。
意外なことに(?)数々のマンガと縁の深い大分県。他にも「これも大分です!」という作品があったら、こっそり教えてください。
構成・文:イガラシダイ イラスト:千野エー





構成・文:イガラシダイ イラスト:千野エー
