「これがダメなら全部ダメ?」ちいかわ自作フィギュアが物議、販売せずともSNS公開はNG?弁護士の見解
大ヒット上映中の『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』。人気すぎて、公式グッズが売り切れていることもしばしばあり、一部のファンはグッズを自作して楽しんでいる。
そんな中、SNSで議論を呼んでいるのが、映画に登場するキャラクター「セイレーン」のフィギュアを3Dプリンターで自作したファンの投稿だ。
投稿によると、3Dプリンターで出力したものをパテやヤスリで表面を整え、塗装まで施したという。「販売も配布も、もちろんしません」と説明している。
ところが、この投稿には「こういうものを作って公開すると、公式が後から商品化しづらくなるのでは」「SNSに載せた時点で著作権の問題が生じるのでは」といった批判が寄せられている。
一方で、「個人で楽しむために作っただけ」「これがダメなら、キャラクターを描いたファンアートも全部ダメになってしまう」と擁護する声も上がっている。
好きなキャラクターの絵を描いたり、フィギュアを自作したりする「二次創作」は、ファン文化として広く親しまれている。
では、販売せず、自分で楽しむために作るだけなら問題ないのか。さらに完成した作品をSNSで公開するとどうなるのか。著作権にくわしい齋藤理央弁護士に聞いた。
●自分で楽しむためのフィギュアなら「許される余地」
──既存キャラクターを再現したフィギュアを自作すること自体に、著作権上の問題はありますか。
こうした行為は、二次元の表現を三次元化する「翻案」にあたります。
特に「変形」という翻案の一形態にあたると考えられています。
ただし、自分自身や家庭内などの限られた範囲で楽しむために制作する場合には、「私的使用」として許される余地があります(著作権法30条1項、47条の6第1項1号)。
●自作フィギュアをSNSで公開すると?
──販売や配布をせず、完成したフィギュアの写真をSNSに投稿するだけならどうでしょうか。
自作したフィギュアの写真をSNSへ投稿する行為は、私的使用とは分けて考える必要があります。
私的使用を目的として作成された二次的著作物であっても、それ以外の目的で公衆に提示した場合には、著作権法49条2項1号により、原著作物について適法化されない翻案をおこなったものとみなされます。
さらに、フィギュアを撮影すること自体が、その造形を写真に複製する行為となります。そして、その写真を不特定または多数の人が閲覧できるSNSに掲載すれば、公衆送信権との関係も問題になります。
したがって、「非営利だから自由」「ファンアートとして一般におこなわれているから適法」とは限らず、権利者の許諾や二次創作ガイドラインを確認する必要があります。
●ファンが先に作ると「公式が商品化できない」は本当?
──今回の投稿には「先にファンがフィギュアを作ったら、あとから公式がグッズ化しづらくなる」という批判もありました。
ファンが先にフィギュアを制作したというだけで、公式の商品化が妨げられるわけではありません。
ファン作品に著作権が成立するとしても、保護されるのは、元のキャラクターにはない独自の造形や表現が新たに加えられた部分に限られます。
フィギュアの場合、この点は少しわかりにくいのですが、キャラクターをどのように立体化したのか、つまり2Dのキャラクターを3Dとして具体化した部分に限って、ファンの著作権が発生すると考えることになります。
つまり、公式商品との共通点が、元のキャラクターのデザインや造形に由来するものであれば、ファン作品の著作権は問題になりません。
たとえば今回のフィギュアの3Dデータを使い回したり、フィギュアそのものから3Dデータを起こして商品化したりした場合には、ファンが制作したフィギュアの著作権が問題になります。
しかし、公式商品は通常、独自に3Dデータを創作してフィギュアを制作することになります。その意味では、ファンがフィギュアを制作したことによって、公式の商品化を妨げるような著作権上の問題は生じないでしょう。
【取材協力弁護士】
齋藤 理央(さいとう・りお)弁護士
弁護士法人EIC代表。著作権などコンテンツiP(知的財産)やITトラブルなど情報法分野に重点をおいている。重点分野で最高裁判決、知財高裁判決などの担当案件の他、講演、書籍や論文執筆監修など多数。自身のウェブサイトでも活発に情報発信をしている。東京弁護士会所属。著作権法学会、日本知財学会会員、弁護士知財ネット、情報ネットワーク法学会等に所属。
事務所名:法律事務所碧
事務所URL:https://eic.law

