スズキの新軽BEV「e SKY」

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違和感なくガソリン車から乗り換えられるように

 2026年8月24日、スズキはいよいよ軽BEVを投入することを明らかにしました。

 今秋正式発表となる「e SKY」の情報を先行公開。このクルマをどのように販売していくのか、その課題は何かについて開発者に話を聞きました。

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 今回話を聞いた、スズキ 商品企画本部 四輪軽自動車商品統括部 アシスタントCE主任の杉山達樹さんは、これまで先行開発部門で、将来のクルマについての仕事に従事。

 量産の機種開発は「e SKY」が初めてだったそうです。その時の意気込みは、「スズキの軽乗用BEV一発目ということで、会社的にも大きな期待のかかっているクルマだと感じていましたし、かなり責任の重いものを任されたと感じました」といいます。

 前述の通り杉山さんは先行開発の部門にいたことから将来を見据えた仕事をしていました。そのような経験を持つ同氏は、このe SKYをどう捉えていたのでしょう。

 杉山さんはe SKYの開発コンセプトである“Easy to Switch!”を挙げ、「ガソリン車から乗り換えるのに、最も乗り換えハードルが低い、乗り換えやすいクルマを目指して開発しており、そのコンセプトをしっかりと具現化するクルマだと思いました」と述べます。

 そこで杉山さんとしても、「ガソリン車から乗り換えるときに違和感を覚えないようにするには、どうすればいいかを考えました」といいに次のように続けます。

「BEVはアクセルをグッと踏んだら力強くパッと出ていくというようなイメージを持たれる方が大半だと思うんです。ですからそのBEVの良さ、加速の力強さは感じつつ、あまり過剰にしすぎないようにしています。

 アクセルを踏んで一気にバッと出てしまうと、BEVに乗ったことのないお客様、特にスズキのお客様にはご年配の方も多くいらっしゃいますので、そういった方が怖さを感じてしまってはいけませんので、そういった走行に関する乗り味は、気をつけて作っていかなければいけません」

スズキ 商品企画本部 四輪軽自動車商品統括部 アシスタントCE主任の杉山達樹さん

 また、ガソリン車からの乗り換え時に「操作面の違和感もなくすようにしています」とのこと。それはシフトに表れています。多くのBEVがトグルやダイヤルなどのスイッチを採用していますが、e SKYはシフトレバーなのです。

 これについて「誰が見てもすぐに分かるように、ガソリン車で長らく使われてきたストレートレバータイプを採用し、操作にも迷わないことに気をつけました」と話します。

 また杉山さんは、開発にあたり多くのBEVなども試したそうですが、「最初に乗った時にスタートスイッチがないとか、シフトは一体どこで変えるんだなど、発進するまでに5分くらい悩むようなこともありました」とし、「ですのでガソリン車からの乗り換えやすさを考えると、確かに先進感みたいな演出はいるとは思いますが、軽自動車としてお使いいただく上で、そこは違うと方向を定めていきました」と語りました。

「ワゴンR」や「アルト」からの乗り換えも想定して

 こういった開発思想を踏まえ、e SKYのターゲットユーザーはどういう人たちなのか聞いてみました。

 杉山さんは、「具体的にこのぐらいの年代や性別はあまり明確に決めていません」といい、「スズキが最初に出す軽乗用BEVですので、お客様を広く選ばずに乗っていただけるクルマに仕上げたい、そして仕上がっていると自負しています。老若男女問わず色々な方にそれぞれの生活に合わせてお使いいただけるのではないかなと思います」とコメント。

 また、「『スペーシア』や『ハスラー』はそれぞれ使い方がしっかりと明確になっているクルマですから目的がはっきりしているので、そちら方向ではなく、『アルト』や『ワゴンR』などの普遍的な軽自動車からのお乗り換えがメインになるでしょう」といいます。

 しかし、この辺りの軽自動車を購入するユーザーはコストには厳しい層です。杉山さんはそこも認めるところで、「軽自動車の使われ方を考えると一人で乗る、多くても二人が多いので、このクルマの後席はある程度割り切りコストを抑える取り組みをしています」と説明。

 ただし、実車を見る限り、コストダウンしたという安っぽさは感じられなかったことは付け加えておきます。

 この層は同銘柄代替比率が非常に高くなります。そこに食い込むのは並大抵ではありません。

「ディーラーでワゴンRとe SKYが並んでいたとしても、見ただけだと多分BEVかどうかはわからないでしょう。ですので、どちらが自分の好みに合うかどうかで選んでもらいたいですね。

 ですから、販売現場にもしっかりと協力をしてもらう必要があります。1度乗ってもらうことで、ワゴンRとは違うBEVとしての良さ、e SKYの良さを感じてもらいたいんです。

スズキ e SKY

 そして「BEVらしさは前面に押し出してはいませんが、ガソリンの軽自動車に比べるとスムーズにもたつき感なく発進しますので、日々の運転の中でのストレスは減るでしょう。また当然発進加速もガソリン車よりも良いのは間違いありません」とBEVの良さにも言及。

 そこに加えて、e SKYの魅力である「Easy to Switch!、違和感なくガソリン車から乗り換えられますので、そこがお客様にどれだけ共感していただけるか、伝わるかです」と語ります。

 つまり、まずは見て触れて乗ってもらう必要があるのです。杉山さんは、「そこは考えていかないといけないところ」としたうえで、ある他メーカーのディーラーを例に、こう語りました。

「新型車が出ると乗ってみませんかという連絡をするそうです。また、点検時もただ飲み物を飲みながら待っていただくのではなく、時間があるので、せっかくですから乗ってみませんかとか、あるいは代車として乗っていただくとか。

 確かに手間と時間はかかるかもしれませんが、お客様にクルマの良さを感じていただくためには、お店の協力もいただきながらやっていかないといけない」

e SKY 開発責任者の津幡和幸さん

 その点は開発責任者の津幡和幸さんも同意見で、下記のように述べています。

「まずはいままでのガソリン車に乗っていた方が同じように使えるBEVですというところをアピールしてていきたいですね。もちろん高額な商品ですからすぐに乗り換えてもらえるようなクルマではないでしょう。

 ただいずれ、どこかの買い替えるタイミングで次のクルマをイメージしたときに、ショッピングリストに入れてほしいんです。

 ですから整備とかの待ち時間で、買うか買わないは関係なくまず乗ってみませんかと。そして乗ってみたら、普通に使えるじゃないか、これ良いね、次の車検の時にちょっと考えてみようかなとなればいいんです。

 もちろんスペーシアを買っているお客様がこれに乗ってこれを買うということはないのも分かっています。ただこれのスペーシアだったら買うかなとか、これのハスラーだったら買いたいとなれば、スズキとしては大成功なんです。

 そういう声を聞けば次の車種は何しようと決まってきますが、触ってもらわない限りその声は届かないわけです。ですからぜひ本当に見て触って運転してほしい。そしてできれば、予算の都合が合えば購入していただきたいですね」

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 ガソリン車から自然に乗り換えられること。これがe SKYの大命題です。

 そこであえてコストに厳しく、かつ、同銘柄代替比率の高いセグメントに投入し、そこから市場の声を受けながら、次はメインボリュームに打って出ようという戦略を打ち立てています。

 先ずは市場がどう反応するか、特にアルトやワゴンRユーザーがe SKYをどう評価するかがポイントとなりそうです。